451.アベル君と性と告。
451.アベル君と性と告。
結局また襲われたオスカーは娼館行きがなくなった。
当たり前だ、近衛騎士の命だって俺の命だって只ではないのだ。
人の命は物理的、経済的に重いのである。
「アベル!何故行ってはいけないのだ?」
おバカちゃん(王太子殿下)がブーたれる。
「小隊規模の襲撃を受けたその足で娼館に行けば、やれ王太子殿下は豪胆だと褒められるだろうな。」
「ならば!」
「ならばじゃねぇんだ!てめぇで済ませ!」
「嫌だ。」
「何故だ。俺たちの年頃の男子は、相手が居なければ間違いなく自分でことをなしてすましているんだぞ。」
「しかし私はその立場ではない。」
「そのとおりだ。だから今まで付き合っても来たんだが、もうその頃の状況とは違う。わかるだろう?」
「分かっているんだ、しかし、どうしようも無いのだ。」
そうだよな。
ハイティーンの性欲はホントどうしようもない。
わかる。
「仕方ないなぁ。」
俺は伸びをしてオスカー(おバカちゃん)を見据える。
「何か策があるのか?」
オスカーが食い気味に言ってくるので、
「お前の両親に、お前に妾をあてがえと言ってくる。」
「なっ!」
俺の言葉を聞いてオスカーはしばし硬直した。
「ジェームズさん、これしかないと僕は思う。だから城の方へいずれこの話をしに行くと、先触れをお願いできますか?」
俺は王族用寄宿舎の豪華なリビングの入り口で控えていたジェームズさんに声を掛けた。
「アベル様はこう言っておられますが、殿下の御意向は如何でしょうか?」
ジェームズさんがオスカーに問い質す。
「いや、待て。父上はともかく、母上の耳にまで入れねば駄目な話か?」
オスカーの言葉を聞いて、俺とジェームズさんは目を合わせ、同時にため息をついた。
「なんだ!当然の疑問であろう!」
そう言ってオスカーは不快感をあらわにする。
「王太子殿下?」
俺はオスカーを呼んだ。
「なんだ、今更余所余所しい。」
「じゃ、いいや。オスカーの妾いや、側室の話は王族全体のことなんだ。わかるだろう?正室を娶ったとして、その方が男子を産まなければ、側室の男子が次期王太子になる。ちょっと考えれば簡単な話だろ?そんな話を、王妃陛下抜きで出来るとでも?」
「さっきまでの話はそこまで突っ込んだ話ではなかったであろう?私の欲求消化を如何にするか、それだけであったはずだ。それがなぜそこまで話が大きくなる?」
「オスカーがそういう立場だからだよ。僕のように、平民を妾でもらえない。率直に言って、俺は今オスカーが可哀そうに思う。」
「うっ!」
俺が可哀そうなどと言ってしまったら、オスカーの美しい顔がクシャリと歪み、ガックリと項垂れてしまった。
「母親に自分の性的な問題を知られるのは恥ずかしいけど、開き直るしかない。僕は母さんにリラとローズを妾として貰うことを事前に知られていたけど。母親って、そういうものかもしれない。諦めろ。その先に悩みは無くなるはずだ。」
などとオスカーに声を掛けてみたものの、オスカーは顔を上げることなく、最後に出た言葉が、
「一人にしてくれ。」
だったので、俺はジェームズさんに後をお願いし、オスカーの部屋を出た。
あんなに性欲で苦しむものとは知らなかった。
いや、確かに俺はローズが居たり、カレンのところに遊びに行ったりできるお気楽野郎なんだけどさ。
さて、しかしこれは本来時間がどうにかするべきことなのだ。
俺が無理くりオスカーを制御するべきことではない。
と、思うのよ。
などと、校庭をぶらぶら歩いていたわけだ。
「ア・ベ・ル!」
そんな風に呼ばれ、ふと足を止めた途端にドンと衝撃があった。
衝撃を受けた左腕には痛みなどはなく、むしろ柔らかい物に覆われ、えも言われぬ心地よさを感じていたんで、そっちを見たら、
「ジーナ先輩。お元気そうで。」
一学年上で騎士学団幹部会の先輩、ジーナ・サンタグレースその人だった。
「久しぶりなのにつれないわね。最近どこで何をしているのよ。ローズさん泣かせると承知しないわよ。」
そう言いながら、ノーブラの胸を押し当ててくる。
何度か言っているがこの世界にブラジャーという発明品はない。
基本ノーブラか、運動するとか邪魔とか思う場合は、サラシのような物をグルグル巻きにしている。
この人はそのような事をしていないようだ。
「王城に住まう方々の用事ばかりなので、口に出して言えないのです。」
「では筆談で。」
彼女は肩に下げていたポーチから何故か紙束を取り出した。
こんな乗りの良い人だっけ?
いや、悪くはなかったが。
「証拠の残るようなことも無理ですね。ゴメンなさい。」
「相変わらず私にはつれないのね。最初が最初だったから、仕方ないけど、いい加減傷つくわ。」
「もう出会った頃の因縁とか、北がどうとか、南もこうとかそんなんは関係ないんですよ。ただ、今抱えている問題がちょっと大きくてですね、構っていられないなって感じなんです。」
「何?その問題って。解決できないかもだけど、聞いてあげるわ。話してごらんなさい。」
そう言って、ジーナは俺を抱き寄せた。
まだ身長百五十センチそこそこの俺は、容易に成長の良い上級生に抱き寄せられる。
なんだか、濡れた唇が迫って来るなぁ、などとボーと思っていたその時、
「そんなところに居たか!アベル!!」
と、今度は男子の声で俺が呼ばれた。
またも騎士学団、幹部会の先輩、テオドール・エルゼンだった。
こっちに向かって走ってきたテオの手には、何かチラシが握られていた。
「ジーナ、まだアベルを口説こうとしていたのか?」
「そうよ!悪い!」
ジーナは俺を離してテオにソッポを向く。
「もうそんなことはやれないかもしれないぞ。アベル、こんな事、いつ決まったんだ!?」
テオの手に握られていたチラシを広げると、こう書かれていた。
「告 ・ ノヴァリス王国王女・オリビア・ノヴァリス、ヴァレンタイン辺境伯嫡男アベル・ヴァレンタイン、両名の婚約を布告する。」
ちょ!はえーよ!!!
読んでいただき、有難うございます。
本作は長編となっています。
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作者がんばれ!
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