449.アベル君と走る影。
449.アベル君と走る影。
ジェームスさんが御者との連絡用の窓を開ける。
「どうなさいました?」
「岩が転がっていまして。」
岩ねぇ。
俺とジェームスさんとアンディはそれぞれ顔を見合わせ、頷き、
「オスカー、自分の剣を持ってここで待機。ジェームスさんはオスカーの護衛を。アンディさんは僕と外へ。よろしい?」
俺がそう言うと、全員が頷いた。
馬車から降りると近衛の騎馬が馬車を囲み厳戒態勢を敷いていた。
馬から降りて、岩を退かすなんてことはしない。
その間に襲われる可能性が大きいからだ。
だからね、岩を退かすのはのこのこ馬車から降りてきた間抜けな俺たちの仕事。
「アンディさん、警戒はアレクさんたちに任せて、僕らは岩を退かしましょう。」
そう言って二人は岩に近づく。
しかし、ふと思うことがあり、片手を上げてアンディを制止させた。
「見るからに僕の胴の半分くらいの大きさがありますね。ちょっと小さくしちゃいましょう。」
「出来るのですか?」
怪訝そうにアンディが聞いてくる。
「消し去るのは時間が必要ですけど、もろくしたりするのはたぶんすぐ出来るかと。少々お待ちを。」
そう言って俺は、右手を伸ばす。
はじめは魔法操作で岩を酸素でくるんで、一発ファイアーボールって考えたんだけどさ、爆発するから危ないしうるさいし、また城に呼び出されるだろうし、結局はこれよ。
右の人差し指と中指の先から、青白い炎が伸びていく。
魔力操作によって俺のイメージが昇華された炎は、空気の抵抗を加味することなく真っ直ぐ鉄を焼き切る温度を保ち岩に伸びていった。
子供の頃、殺された時にこいつを思いついたんだけど、生き返った後はライ〇セーバーとかビー〇サーベルとか言って遊んでいたな。
「シャウ!」
とかって言いながら、背負ったランドセルに差していた定規を取り出して切りつけるようなアクションを、このガストーチで真似していたんだ。
見ていたローズが変な顔していたっけ。
で、その青い炎が岩に届き、瞬時に赤く明るく焼いていく。
「この分なら、すぐ半分になりそうですね。」
俺がアンディにそう言うと、アンディは不思議そうな顔で、
「これはアベル様オリジナルの魔法ですか?いや、剣士なのに魔法も使えるのは聞いていましたが、本当なんですね。」
「そーなんですよ。はっはっは。ちなみに、これは姉も母も使えます。」
そんな話をしていたら、どうやら岩が半分に切れたらしく、ごとりと音がして切れた部分から割れて動いた。
「シュッ!」
岩の方からそんな音がした。
俺は怪訝な顔でそちらを見ていたら、程無くしてアーモンド臭がしてきた。
「アンディさん!退避!!」
俺は俺の若干後ろに居たアンディの手をつかみ、更に後方で待機している馬車の方に逃げた。
「どうしたのです!?」
アンディがビックリして聞いてくる。
「おそらく毒ガスです!!」
俺はそう言って、出来るだけ現場から下がった。
下がった俺たちにアレクさんが馬上から話し掛けてくる。
「いったい何があった?」
「岩に罠が仕掛けてあったんです。退かすか何かしようとすると、毒ガスが出るように。」
「なんだと?」
「皆さん警戒してください。次は来ますよ!」
言った傍からその影の集団はやってきた。
そう、馬車の後方からね。
何故って、自分たちがガスに巻かれるわけにいかないじゃない。
でもうちの近衛騎士副団長さんも優秀だからね。
そのくらいはお見通しよ。
馬車後方を守るように騎馬を配置。
でも、止まった騎士って実は怖くないんだよね。
そこで俺の出番なわけだ。
すでに周りは帳が落ちて、黒装束が走ってくるのは分かるがはっきりしない。
こんな時には奥さん、魔改造ファイアーボールXなど如何でしょう!
二千度超の明るく燃える炎が、周りを程よく照らしてくれます。
そして並んで向かってくる馬鹿どもには、五連装射のノーマルファイアーボールがとってもお似合い。
広げた五本指から伸びる魔力操作でファイアーボールを連射できるなんて、まあ、素敵。
背も伸びて、魔素タンクも大きくなったので、途切れることなく連射が出来ます。
右手から魔改造ファイアーボールXを、左手からノーマルファイアーボールを連射で相手めがけて撃っていく。
ほら、馬上のアレクさんが呆れているよ!
うん、仕方ないね。
読んでいただき、有難うございます。
本作は長編となっています。
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