447.アベル君と初出勤。
447.アベル君と初出勤。
「ヒュ~。」
不意に俺の前から口笛が聞こえた。
「アベル様、十五歳かそこらでしょ?なかなか今のは言えないですよ。」
近衛騎士が、大真面目な顔で言ってきた。
「え?何のことですか?」
「は?自然体で今のお別れの挨拶ができるので?一閃の剣もモテたと聞いていたけど、やはり血筋ですね。」
ああ、さっきの愛しているか。
「言わないと通じないこともありますからね。あとで言っておけばなんてこともありますから。特に命の駆け引きの前は。」
「そのとおりです。そちらの心構えも出来ておいでか。流石武人のお家出身だ。」
「祖父と両親は二つ名が指すとおりですが、僕は彼らには遠く及ばない凡人ですよ。」
「アベル様、行き過ぎた謙遜は反感を買うのでお止めなさい。あなたは血筋も実力も、そしてこれからの繋がりも強く太くあるのですから。」
あら、叱られちゃった。
ちょっと卑屈だったかな。
けどさ、この人は間近で父さんや爺ちゃんの剣技、母さんの才能を見てないから言えんだよな。
まあ、初対面なのに、きっちり注意してくるのも近衛の騎士らしくて嫌いじゃないね。
「それは失礼。しかし周りが化け物揃いだと、委縮してしまうのも事実なんですよ。それで、警護対象の王太子殿下は今日は何処へお出かけで?」
「あ、ああ。繁華街の裏手だそうです。」
「あのバカ!!」
「不敬ではないのですか!?」
近衛騎士が驚いて俺に言った。
「いちおう両陛下、それと本人から王太子殿下への言葉遣いに対してのお許しは頂いております。もちろん無制限ではありませんが、一般的な友達としてといった形の上ならばという事です。」
「なるほど。しかしビックリしました。」
「そりゃ失礼。しかし、昨日城で打ち合わせをした時、もう娼館は禁止って話をしたんですけどね。」
「既にそのような話をなさっておいでだったのですね。」
「もう襲われていますから。でも、オスカーがこの調子なら、ノヴァリス王国も安泰かな。」
「なぜです?」
「分かりませんか?下世話な話ですけど、どうやら我が王太子殿下は種の生産が旺盛らしいので。」
「ぷっ!」
と、近衛騎士が噴き出したところで、校門前へ到着した。
そこにはいつもの王族用の馬車と、ジェームスさんが待っていた。
「アベル様、お世話になります。」
「ジェームスさんお疲れさま。ジェームスさんのお世話はしないよ。」
「ええ、勿論ですとも。王太子殿下のお世話をして下されば、転じて私もお世話になるということです。」
「なるほど、ジェームスさんの勤務評定は僕が握っているということですね。」
「ああ、これは参りましたな。」
はっはっは、と、二人は笑った。
そこへ3騎の騎兵が現れた。
「アベル君。」
先頭で馬を駆っていたのはアレクさんだった。
「ああ、アレクさん、お疲れさまです。」
「あ、いや、もう君とか呼んではいけないな。アベル様、此度はお疲れさまでございます。」
「やめてくださいよ。それを続けるのなら、何が来ても何が起こっても、剣も魔法も使いませんからね。」
俺はそこで一息ついて、
「それに、僕はアレクさんの配下に入るんでしょ?様呼びしなければならない人間を怒鳴り付けられないじゃないですか。」
「ああ、それもそうか。アベル君、今日は頼む。おい、アンディ!」
アレクさんが俺を連れてきた騎士を呼んだ。
「アベル君、今日君と組んでもらうアンディだ。」
「アベル様、アンディ・ガルバルディ騎士爵でございます。東部、ガルバルディ伯爵家出身となります。此度はよろしくお願いします。」
アンディは俺に手を差しだしてきた。
「アンディさん、よろしくお願いします。ご長男ではないので?」
俺は握手をしながら、アンディに聞いた。
「二人いる、予備です。」
そう言うとアンディは笑った。
「なるほど、ではお兄様がおいでで。」
「ええ、兄はどちらかと言えば文官向きでして。嫡男としてはそれが最良でしょう。あと、弟が内と外で数人おります。」
おお、言い難そうな事をさらりと言うなぁ。
ますますいい人じゃん。
悪いフラグを建てさせないようにしないと。
「それが貴族としては普通ですからね。うちは心配になるなぁ。僕と姉しか居ないから。今のうちに弟を作って頂きたいんですけどね。」
俺がまじめな顔でそう言うと、
その俺を見てアンディが、
「アベル様は死なないでしょ。」
そして呼応するようにアレクさんが、
「死なないよな。」
などと言い、ジェームスさんはそれを聞いて大きく頷く。
「僕、不死身じゃないですけど!」
俺の叫びは、夕方の校門周辺に消えるのだった。
読んでいただき、有難うございます。
本作は長編となっています。
続きを間違いなく読みたい場合はブックマークを。
作者がんばれ!
面白いよ!
と、思っていただけたなら、それに見合うだけの☆を付けて頂けると幸いです。
それでは、また続きでお会いしましょう。




