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親友ポジションに憧れる俺は彼女達に狙われている  作者: 瑞柿けろ
第三章 体育祭&杏理編

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第76話 拙者は杉田銀十郎ですぞ!




「おーい、お前ら朝のホームルーム始めるぞー」


 気怠そうに教室に入って来た紫先生と一瞬目が合った気がする。だが気のせいだろう。

 背が小さくて子供みたいな人ではあるが、彼女とて大人の女性だ。今朝も余裕そうだったしこれが大人の余裕というやつだろう。


「さ、サッサと席座れー」


 紫先生の言葉を聞いて皆自分の席に大人しく座ってゆく。すると俺の前の奴が隣の奴に話しかけ始める。


「なぁ……なんかゆかりちゃん顔赤くないか?」

「え、そうか? 気のせいじゃないか?」

「そうかなぁ……」

「おーい、そこ五月蝿いぞ」


 なんか小声で話していたが、聞き取れないまま紫先生から注意を受けて皆が静かになった。

 それを確認すると紫先生は、


「休み明けに転校生来たからな喜べ男子共一人は女の子だぞー」


 周りの男共の露骨に嬉しそうな声が上がる。いやまあ分かるぞ? その気持ちは、でもなぁ……。

 クラスの扉が開き、まず先に男子生徒が入ってくる。


「初めましてですぞ! 拙者は杉田銀十郎(すぎたぎんじゅうろう)ですぞ! よろしく頼みますぞ!」


 やはり男子生徒の方は銀ちゃんだったようだ。さすが銀ちゃん立派な自己紹介だぞ!


「え、あれ声良くね?」

「なんか顔のパーツ顔の真ん中に寄ってるけど格好良いかも……痩せれば。あと声が凄く良い」


 おぉどうやら銀ちゃんが良い印象を得ている。そうだろうとも銀ちゃんは尋常じゃないレベルのイケボだからな。

 友達が皆から好印象とは良いなこれ。


「じゃあなんか一言あるかしら杉田?」

「ふむ。そうですなぁ」


 では一言、と銀ちゃんは続けた。


「拙者二次元にしか興味がないですぞ! 将来はギャルゲーの世界に行く事ですぞ!」

「「「「「コイツやべぇ奴だ」」」」」


 あ、皆引いてる。


「あ、あはは……まぁ頑張りなさいよ。それじゃあ次の子入って来なさい」


 反応に困り静かになってしまったクラス全体の気持ちを切り替えるように紫先生は手を叩くと、再度扉の方へ声をかけた。

 分かったのじゃ、と声が聞こえた瞬間俺は全てを察し頭を抱える。


 やっぱりか……わざわざ同じクラスにしたのかアイツ……


 クラスに入ってくる真っ赤な髪をツインテールにしている可愛らしい女の子、本人のこだわりらしいがカントリー・スタイル? というツインテールの種類らしい。俺にはよく分からないが、


 そして彼女の挨拶が始まった。


「儂は露音ひ____間違えたのじゃ」


 おい。


「ん? 大丈夫かしら?」

「だ、大丈夫なのじゃありがとな紫」


 間違えるな駄神、あと先生を呼び捨てとか辞めなさい。


「コホン……儂は雨上姫じゃ、よろしく頼む」

「何か一言あるかしら?」

「ん、特にないぞ」

「え、あ、そうなの?」


 そうじゃ、と腕を組んで満足そうにしている姫に皆ポカンとほうけている。あの馬鹿は本当に全く、


「じゃあ細かいことは皆質問でもしなさい。それか雨上……二人いると紛らわしいわね」


 何か紫先生が悩み唸っている。そして少し悩んだ後に、


「……あ、雨上?」

「あ、俺ですか? はいなんですか?」

「アンタら紛らわしいから仕方なくこれからは透って呼ぶから」

「え」

「い、良いかしら?」

「へ? え、えぇまあ同じ苗字で分かりづらいですしね」

「そ、そうよね。ま、全く困ったものね全く」


 ゆかりちゃん大丈夫ですか? なんか顔赤い気がするけど?


「う、五月蝿いわね。ともかく姫のことで分からないことは透に皆聞きなさい。そいつ姫の兄貴だから」

「え、ゆかりちゃん丸投げかよ!?」

「兄貴なんだから妹の面倒見なさい。はい報告は以上ホームルーム終わり」


 それだけ言うと紫先生は教室から出て行ってしまった。あの先生俺に丸投げして行きやがったぞおい。

 黒板前で後ろの席にいる俺へ向かって手を振る銀ちゃんと姫、アイツらさては同類か?


「あ、心覚えてるか? 中学の頃一緒だった銀ちゃん」


 ふと思い出し心に覚えているか聞いてみると、


「僕アイツ嫌い」

「あ、そっすか」


 驚く事にあの誰にでも優しい心(景ちゃんを除く)がハッキリと嫌いだと言い放ったのだ。

 でも心さんそれ陰口だからね? 良くないわよ?


「じゃあ本人に言ってくる」


 いやそうじゃなくてね?

 

「真白さんや心のやつ止めてやってくださいよ。この子露骨に態度変わり過ぎなんすよ」


 そうだ、こんな時は真白パイセンに頼むことにしよう。

 真白なら銀ちゃんのことも覚えているだろうし、心の事が大好きな真白なら心を落ち着かせてくれるはずだ。


「私もアイツ嫌い……」

「えぇぇ……」


 二人とも珍しく嫌そうな表情をしている。どうしたんだよなんでそんな銀ちゃんのこと嫌いなんだよ。

 なんかあれだ。友達が友達のことを嫌いと言ってるのを聞くのは地味に傷つくな……。


 すると、


「ねぇねぇなんの話よ?」


 何も知らない杏理が不思議そうに何か気になるのか俺の背中を突いて質問してきたのだ。

 あぁ杏理よお前はそのままでいてくれ。最近皆の空気が悪過ぎて正直しんどいから頼む。


「とりあえず杏理」

「なによ」

「後で飲み物奢るよ」

「え、あ、ありがと雨上?」


 良いんじゃよ。







「よお杏理」

「雨上遅かったわね」

「ちょっと姫のことを色々聞かれたんだけど逃げてきた」

「それアンタの妹が大変なんじゃない?」


 大丈夫だろうあれでも一応神様だし、さて、


「じゃあ杏理何が飲みたい?」

「ミルクティーが良いわ」


 杏理ならそう言うと思ったよ、とボタンを押してミルクティーを杏理に渡す。

 さて、俺はどうするか。まあいつもと同じでココアを選ぶわけだが、


「あれココア無いのか」


 なんと残念なことにココアが売り切れになっていた。


「マジかどうしよう……てかよく見たら殆ど売り切れかよ」

「あれでしょ多分今日補充なんじゃないかしら? 他の所も補充してるから上の階にあるこの自販機まで時間掛かってるのよ」

「嘘やん」


 なら仕方ないか下まで行って買いに行くことにしよう。めんどくさいけど、と諦めていると隣の杏理が顔を真っ赤にしてモジモジしながら小声で、


「こ、これ飲みなさいよ……」


 渡したミルクティーを俺に無理やり渡して来た。先程まで飲んでいたのか買った時よりも僅かに減っている感じだ。


「良いのか?」

「うっさいわね……良いのよ。下まで行って買いに行ったら次の授業になっちゃうわよ」


 確かにそれもそうだ。


「でもせっかく杏理にと思ったんだけど」

「私が良いって言ってんだから早く受け取りなさいよ。それとも何? わ、私の飲みかけじゃ嫌ってわけ……?」

「いや別にそういうわけじゃないけど」

「じゃ、じゃあ良いじゃない」


 ほら早く、と杏理が強引にミルクティーを渡してきた。これも杏理の善意によるものだし大人しく頂くか。

 そうしてミルクティーを一口飲む。


「……どう?」

「美味いな」

「そう」

「お、おう」

「……」

「……」


 何故か杏理の反応が悪い。顔も赤いし大丈夫か?


「う、うっさいわね。ほら早く返しなさいよ」

「あぁそうだな。ありがとうな」


 良いわよ別に……、とモジモジしてる杏理だが、チャイムが鳴ったことで二人で教室へ戻った。




        ~おまけ~




「儂も飲みたかったのじゃ」

「後で買ってやるから」

「やっぱり透お兄ちゃんは優しいのじゃ!」

「あーうっさいうっさい」

「な、なんじゃ!? 反応悪過ぎじゃろ!! 美少女からお兄ちゃん呼びなんてご褒美じゃろが!!」


 いや知らんがな。



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