第75話 朝帰りの後……
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俺は納豆が嫌いである。
味が? あの粘り気が? それとも香り?
否、全てである。
味も無理だし、粘り気も無理、臭いももちろん無理、大まかに言えばこの三つが嫌いなら納豆が大嫌いと言えるだろう。さらに細かく聞かれれば俺はそれに応じた理由を全て言うことができる。
好きな人からしたら大変失礼かもしれないが、これも人それぞれ、十人十色、個性として目を瞑って欲しい。
だからこれだけは言わせて欲しい。
「姫が納豆食べてんだけど俺の家には納豆は置いてない筈……あれはどうしたんだ?」
「僕が家から持って来たんだよ」
マジか心……お前本当にマジか……。
「どんなことされても許せてたけど、頭きたわ……これだけは許さない」
「え、そ、そんなこと言わないでよ透……」
「割と本当に嫌いになりそう」
「そ、そんなぁ……」
低音で言ったことでより俺の怒りが伝わったのか心が涙目になっている。
でも仕方ないとこだ、だって嫌いなんだもん。いや間違えた。
死ぬほど大嫌いなんだもん。
とりあえず気を取り直して学校に行くとしよう。いくら先生に早めに送ってもらったとはいえ時間も時間なのだから、
「いや何話をすり替えて逃げようとしてるんですか先輩」
よっこいしょ、と立膝に体重を掛けて立ち上がろうとした俺に景ちゃんは見下ろしながら言葉を発した。
なるほど、どうやらこの状況で逃げることは不可能のようだ。
学校へ行こうと準備しようと思ったが、諦めて再度正座すると、景ちゃんが凹みいじけている心に目を向ける。
「男女先輩もなにやってるんですか、今は先輩が朝帰りしてる事についての話ですよ。そういううざいの辞めてください」
「うぅぅ……本当お前僕にだけ辛辣過ぎるよ……」
「勘違いしないでください。私は先輩以外の生き物にはこんな感じです。貴女だけが特別なわけじゃないですから」
「……本当にムカつくお前」
「でも私の知ってる男女先輩はその程度で凹むメンタルじゃないと思ってたんですけど? 所詮はそんなもんなんですね。ならなおさら先輩は私のです」
「……うっざマジで」
犬猿の仲だが景ちゃんから言われたことで心が回復して持ち直した。君達実は仲良いんじゃないの? 認め合えてる仲的な? 実は心の親友枠は景ちゃんなのではないの?
まあ今はそんな事は置いておこう。
今はこの状況を切り抜けるところから始めるとしようか、と考えを巡らせていると真白と杏理からの質問がやってきた。
「ねぇとー君? さっき言った話したいことなんだけど」
「そう私もそれを知りたいのよね」
その前にナイフと銃を下ろしてもらっていいですか? あ、心は包丁ね? マジでお願いね?
……よしこれで最低限の知的生命体としての形をとれたな。よしよしやはり知能のある生き物は話し合わなきゃね。
「で……な、何をですか?」
恐る恐る聞き返す俺に二人はハッキリと言い放つ。
「「朝帰りって何?」」
「……」
二人の質問に皆の視線が鋭くなる。皆の機嫌が明らかに悪い、それはもう物凄く悪い。
やっぱりそれか、どう答えるのが良いものか。嘘はまずつかない、ならどうするか。
答えは分かりきっている。
「人助けをした結果この時間になってしまいました」
上手く誤魔化しながら本音で話すしかない。
早速その言ったことに聞き返して来たのは昨日デートをして告白までしてくれた乱華だった。
「おい透」
「な、なんですか」
「今お前が言ったことは本当か?」
「本当です」
「そうか……」
「……」
「……」
暫しの沈黙、乱華は俺の目をジッと見つめた後に皆に告げる。
「大丈夫だ嘘ついてねぇ」
「なんで分かるのよ」
「私はコイツを信じてるからな、嘘つくような奴じゃねぇから」
「なにそれ? 意味分からない」
「じゃあ分からなくていいんだよ。私だけが透の事分かってるしな」
「はぁ? 何言ってんのよアンタ」
睨み合う乱華と杏理。
し、しょうがない俺が止めるとしよう。
「け、喧嘩は辞めるっピ!」
「「あ?」」
「すいませんなんでもないっピ……」
駄目でした。俺には無理でした(諦め)
「ちょっと変態先輩さっきなんか言ってましたよね?」
心の次に凹んでいる俺を慰めることなく景ちゃんは天に問いかける。
む、とそれを聞いて天は渋い顔をして、
「海野君? わ、私はあの……あくまでご主人様に雑に扱われるのが好きなだけであって……誰でも良いわけじゃ……」
「早くしてください変態」
「ブヒィ……」
うわこの変態見境なしかよ。でも確か天がさっき言ったことって、
「……ご主人様から女の子臭いがする。シャンプーもいつもと違うブヒィ」
「へぇー? どういうことですか先輩?」
最悪だ。天の嗅覚は化け物か? もはや人間辞めてる的なあれか?
だがここで正直に言ったらおそらく先生に迷惑が掛かるかもしれない。普通に考えたら酔っ払いを介抱してマーライオンされたとか俺何一つも悪くないが、
あれ? 俺が紫先生こと隠す必要なくね?
真実に気付いたが、どのみちバレたら怖いからしょうがない。
「実は助けた人を家に送ったんだけど、そこに女性が住んでいてな?」
嘘は言っていない。先生(女性)の住む家に運んだだけだしな。
「服が汚れてたのもあって風呂入って良いって言われたんだ。シャンプーも多分女性用のシャンプーを使ってしまったのかもしれない」
嘘は言っていない。性別を詳しく言っていないが言ってることは間違えてないだろう。二度言うが決して嘘は言ってない。
「嘘はついてないみてぇだな」
「はい! 自分嘘つけない男なんで!」
「お、おう……なんだよそんな元気良くなりやがって」
「なんでもないっす!!」
やった乗り越えた! どうやら嘘ではなければ呪いは発動しないらしいようだ! マジで嬉しい大発見だ!
皆の影から学校の準備をしている姫と目が合い『おのれ悪知恵を働かせおって』と睨んでくる。さすが神様そんなことも分かるのか。
「分かりました。でも外泊は駄目ですよ先輩!」
「そうだよ透心配したんだから!」
「ここちゃんの言う通りだよ。連絡来た時ビックリしたんだから」
「あ、私は別に雨上のことなんてそんな気にかけてなかったわよ!? ただ皆が心配そうにしてたから……」
「私は初めから透のこと信じてたけどな、でもお前のその誰にだって優しいのはあまり好きじゃないな」
「ご主人様次はまた私と散歩して欲しいのだが」
一斉に話さないでくれ、何言ってんのか分からないわ。でもなんとかやり過ごせたようなら良かったな本当に。
「あれ、そういえばとー君チョーカー外せたんだね」
「ん? あれ本当だ!! 透やっと僕のお願い聞いてくれたんだね! あのチョーカー見るの凄く不愉快だったんだよね!」
「え、いやこれは」
「私が外したんだよ」
真白と心からの言葉に応えようとした時、乱華が割り込むと、
「私と透別れたから、でも迂闊に近寄るなよ。透には脅す形じゃなくて私のことをちゃんと好きになってもらうから」
「はぁ? すいません言ってる意味が分からないんですけど?」
突然の発言を聞き、イマイチ理解の出来てない景ちゃんが聞き返すと「いや私さぁ」と乱華はさらに続けた。
「透こと大好きだから告白したんだよ。でも私だけじゃなくて、透にはもっと私のこと好きになって透から告白して欲しい。乙女心ってやつだ」
「はぁ? 何言ってるんですか?」
「だからお前らもう私の透に関わんな、邪魔だから」
「だからさっきから何言ってんですか? ぶっ殺しますよ?」
あ、景ちゃんがキレた。
景ちゃんあの……怒ってるからって壁殴らないでもらえませんか? 凹んでる凹んでるから……
「のうお主ら? そろそろ学校へ行った方が良い時間なのじゃが……早く行かねば遅刻するぞ?」
~おまけ~
「因みになんで皆俺が朝帰りしたの知ってるんだ?」
「私達グループ作って先輩の情報共有してるんですよ」
お前らさては仲良しか??




