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親友ポジションに憧れる俺は彼女達に狙われている  作者: 瑞柿けろ
第三章 体育祭&杏理編

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第74話 朝はパン? ご飯? いいえ鯖缶です




「知らない天井だ」


 目が覚めた俺は視界いっぱいに広がる天井と、見覚えのない形の照明に僅かな違和感を抱き、寝起きだというのに確実に意識が覚醒した。

 飛び起きて周りを見てもやはり知らない部屋がそこに広がる。


「何処だここ」


 時計の時間を確認すると、秒針が五時を示していた。状況をイマイチ理解できない俺だったが、突如部屋の扉が開く。


「おー起きたのか雨上」

「え、ゆかりちゃん?」

「紫先生だ。おはよ雨上」

「……おはようございます」

「コーヒー淹れたけど飲むか?」

「あ、欲しい」


 ほい、とマグカップを受け取ると良い香りのコーヒーがよりハッキリと思考をまとめてくれてようやく理解できた。でもとりあえず一口、


「あ、コーヒー美味し」

「だろ? 結構こだわってるんだぞ」

「へーそうなんですか? 豆とか淹れ方とか?」

「いやマグカップにこだわってんの」


 いやマグカップかよ。てか待って?


「この家ってやっぱり……」

「うんそうだぞ。私の家」

「マジっすか____あ、いや、そうか」


 そういえば、だんだん思い出して来た。

 昨日、乱華と別れた後に酔っ払った紫先生と遭遇し、マーライオンを浴びてしまった俺は、先生を家に送ったついでに風呂に入れさせてもらったんだわ。


 で、


「そうじゃん。帰ろうとした時に酔ったゆかりちゃんに捕まって抱きつかれて寝ちゃったんだ」

「あ〜その〜あれだ」


 ようやく理解できた俺に紫先生は申し訳なさそうに頬を掻きながら呟く。


「あれは本当すまんかったな……」

「ん? ゆかりちゃん覚えてんですか? 酔ってる姿初めて見た俺でも無茶苦茶酔ってると思ったんだけど」

「私酔っても記憶は残ってる系だから」


 いやそれはそれでタチ悪いな。


「とりあえず朝ご飯でも食べるか雨上? 一応作ったんだけど」

「本当ですか、じゃあいただきます」


 紫先生の善意を喜んで受け取りマグカップを持ったままリビングに移動すると、テーブルに置かれた状況に目を丸くした。


「先生これって……」

「ん? 雨上は朝はパンよりご飯派だったか?」


 いやどっちでも大丈夫派ですけどね? それよりも、


「何故に鯖缶があるんですか?」

「私が鯖好きだから」

「いやといっても鯖缶と食パンって……」

「見るか? 私の鯖缶コレクションを」


 そう言った紫先生に着いて行きキッチンに入ると、先生はドヤ顔で戸棚を開けた。

 そこには様々な銘柄の鯖缶が置いてある。


 この人はあれか? 鯖以外食べてないのか?


「因みに冷凍庫には鯖の身を保存してあるわよ」


 この人ガチか、主食は鯖か。

 西京焼きや塩焼き、さらにはシメサバまで冷凍されてるわ。凄まじいな。

 かといって朝飯にパンと鯖缶は質素過ぎる。


「先生」

「ん? なによ雨上?」

「キッチン貸して使わせてもらっても良いですか?」



「はいできましたよ先生」

「なにこれ!? 凄く美味しそうじゃない!」


 キッチンを使わせてもらった俺は鯖缶を使って手早く料理を作った。と言っても至ってシンプルだ。

 水煮鯖缶を耐熱皿に入れて軽くほぐし、その上からチーズをかけてトースターで焼いただけの物だが、手早く作れる割に美味しく、それを見て先生は目を輝かせている。


「食べてみても良いかしら!?」

「どうぞ。あ、パンはちゃんと焼いときましたよ」


 ありがとう、と礼を言い先生はフォークで鯖とチーズを絡めて息を吹きかけ少し冷ました後に口へと運ぶ。


「ん〜なによこれ雨上!! 凄く美味しいじゃない!!」

「そりゃ良かったです」

「これは酒にも合うわね!」

「今日から学校ですよ? 絶対飲むなよ?」


 分かってるわよ、と適当に流してそのまま鯖を食べている先生は、


「そういえば言い忘れてたわ」


 と何かを思い出したようだ。


「スマホが凄い鳴ってたけど大丈夫なの? 流石に見るのは悪いなって思ったから見なかったんだけど」

「え」


 スマホの電源ボタンを押してみるとロック画面が開き、時計と通知が表示された。

 メッセージアプリの通知数がえげつないとこになっている。相手は心に景ちゃん、真白や杏理、そして天と乱華、もう皆からの通知で俺のスマホは溢れていた。


「……」


 俺はソッとスマホの電源を切りポケットへと戻す。


「なんでもないよゆかりちゃん、気にしないで」

「え、雨上? 全然大丈夫そうじゃないんだけど?」

「大丈夫です。あ、ゆかりちゃん俺が行方不明になったら今から言う奴らのこと怪しんで」

「それ大丈夫じゃないでしょ絶対!!?」


 大丈夫ですよ紫先生……。あ、ただ奴らは何をやらかすか俺にもちゃんとは想定できないけどね。


「と、とりあえず朝ご飯食べましょ。その後に車で家まで送ってあげるわよ」


 ありがとう紫先生……、女性にこんなに優しくされたのは久しぶりだ。危うく告白して振られるところだった。気をつけないとな。


 それにしても帰りたくない……。







 朝食の後、紫先生に送ってもらい学校近くのアパートに着いてしまった。


「じゃあ雨上ここで」

「ゆかりちゃんありがとうございます。送ってもらって」

「良いわよ昨日迷惑かけたの私だしね、朝ご飯も美味しかったわよ。こちらこそありがと雨上」


 相変わらず少し気怠そうな話し方ではあるが、やはり先生は優しい。なんだかんだ面倒見の良い人だ。


「私はこのまま学校行くわね。雨上も遅刻しないで来なさいよ?」


 じゃあね、と車を発進させて学校の方向へと向かう先生に手を振り、見えなくなったのを確認してからアパートの階段を上り自分の部屋に進む。

 前々から思っていたがあの先生は女子としての自覚がないのだろうか? いくらなんでも男と一緒のベッドで寝て全く動じないとは、いやこれは俺を信じてのことなのか。それとも生徒と教師の関係をしっかり割り切っているからなのか。

 どっちにしてもあの先生にはもう少し危機感を持って欲しいものだ。


「ただいまー」


 玄関を開けて姫に伝えるために声をかけた。のだが、


「あ、浮気性の先輩お帰りなさい」

「透良い度胸だね。朝帰りとか」

「とー君おかえり話したいことあるんだけど?」

「雨上アンタ本当にバッカじゃないの?」

「ご主人様から女の臭いがする……」

「透……昨日の今日でお前どういうことだよ」

「と、透……おかえりなのじゃ」


 あ、そうだー俺も今の状況について全く危機感なかったわー(絶望)



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