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親友ポジションに憧れる俺は彼女達に狙われている  作者: 瑞柿けろ
第二章 デート&乱華編

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おまけ② 過去話




 廃バスで出逢った綺麗な栗色の髪をした女の子を家に住まわせることになってから一週間が経った。

 初めこそ全く話してくれなかった子だったけれど、少しずつコミュニケーションをとった結果かなり話してくれるようになったのだ。


「なあなあご飯食べるか?」

「……ん」

「なあなあ先に風呂入るか?」

「……ん」

「今日何して遊ぶ? 何したい?」

「……ん」


 ……まあうん、話してくれなかった時よりは大きな進歩である。


「ごめんな? 本当は俺の親友にも会わせたいんだけど心太郎季節外れのインフルになっちゃってな」

「……」


 興味なさげに俺の話を聞く彼女は気まぐれにつけているテレビアニメをソファーの隅に体操座りでただジッと見ている。

 特に目立った反応も無いし面白くないのかな? 

 そう思いチャンネルを変えようとリモコンに手を伸ばした。すると女の子は俺の手に収まる前にリモコンを素早く取り大事そうに抱える。


「な、なんだ見たかったのか。ごめんな?」

「……」


 謝りはしたけれど相変わらず薄い反応でテレビを眺める女の子。

 しかし小学生の俺からしたら夏休みにただ家で大人しくしているというのは拷問に等しく、耐えられなかった俺は女の子に高らかに提案したのだ。


「なあ! プール行こうぜプール!!」


 


「いや本当は市民プールとか行こうと思ったんだぞ?」

「……」

「そしたらそれは嫌だって首振るからどうするのかと思ってさ」

「……」


 現在ムスッとしたまま相槌すらしてくれない女の子、そんな子に連れられてやって来たのは、


「なんで俺の小学校のプールなんだよ。しかも夜に」

「……ふっ」


 なにそのドヤ顔? どういう感情なわけ?

 俺としては心臓バクバクだ。なんていったって夜の学校に忍び込んでプールに入るという、親に知られたらとんでもなく怒られてしまうことに内心ガクブルなのだ。

 といってもうちの親は仕事の関係で基本家にいないから良いか。


 まあでも面白そうだから入るけど、


「じゃあ入ろうぜ!」


 結局、怒られる恐怖より好奇心が勝った俺はプールに飛び込む。

 勢い良く飛んだことで辺りに水が飛び散り、女の子は半歩下がった。


「プッハー気持ちいぃー! どうしたんだ早く入れよ!」

「……」

「え、本当どうしたんだよ? 入らないのか?」

「……」


 プールの水面を眺めるだけで一向に入る気配のない女の子を見てしばらく反応に困っていたけれど、あることに気付く。

 そういえばこの子ずっと俺が貸してる服を着ているだけじゃん。あれもしかして、


「なあ、そういえばお前水着どうしたんだよ」

「……ちっ」

「あ、てか持ってるわけないか、ごめん気づかなかった」

「……」


 すっかり忘れてた。プールに入るんだから水着がないと困るな。

 どうする? 真白から水着でも借りてくるか?


 いや駄目だ夜だし寝てるだろう。というかいくら幼馴染とはいえ同い歳の女子に水着を貸してもらうのは流石にハードルが高過ぎる。間違いなく夏休み明けの俺のあだ名は『変態』になるだろう。

 それではどうすれば良いのか、とりあえず提案してみる。


「俺の水着で良ければ着るか? 最悪俺なくても大丈夫だし」

「死ね」

「すいません冗談です」

「……」


 水面に頭部だけ出していた俺の頭に足を乗せ、まるでゴミを見る様に見下ろしている女の子。

 すいません重たいです許してください。


「……一回死ね」

「ご、ごめんなさい」


 考えてみればこれはセクハラか、最近は心太郎や真白からもちょっとした発言を注意されることがある。……本当に気をつけよう。


「……このまま入るから良い」

「あ、はい」


 今更だけれど、こう考えると初めてちゃんと声を聞いた気がする。見た目はあんまり笑わないから大人っぽく思っていたが意外と可愛らしい声をしているんだな。


「……気持ち良い」

「そりゃ良かった」


 服を着たままプールに入ってきた女の子はとても気持ちよさそうにしている。

 そんな彼女の姿を見て俺は今まで聞きたかった質問をしてみた。


「なあ聞きたいことがあるんだけどいいか?」

「……ん?」




「君の名前を教えて欲しいなって」




 そんな言葉を聞いて彼女は相変わらず無愛想な表情のまま素直に応えてくれる。

 ただいつもと違い綺麗な髪が水に濡れ、星の光に照らされていて、とても可愛らしく思えた。




「……私の名前は____」




 これは短い夏休みの初恋の記憶。



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