第73話 私と別れてくれないか?
ギリギリセーフ更新!!!
「ようやく着いたぞ乱華」
「ん? そうかもう家か」
手を繋ぎ夜の道を進む俺達はようやく神社前の階段までやって来た。前回もここまでの送りだったけれど、本人がここでと言うのだからここで良いのだろう。
いっても家まで階段を上がればいいだけだしな、と考えている時に乱華が少し寂しそうな表情を見せた。
「楽しい時間はあっという間だな……」
「本当だな」
「本当にそう思ってんのか透?」
思ってるって言っただろ? 俺はなんと言ったんだっけ?
「嘘がつけないんだったよな」
「そうそれ、神様からの呪いでな」
「神様からの呪いって……お前一体何したんだよ……」
「ちょっと神様を罵倒した結果だ」
罰当たりな奴だな、と笑う乱華は、でも、と言葉を続ける。
「私は信じるからよ透」
「え、あ、うんありがとうね?」
「おう」
なんだろう。乱華さん急に態度が軟化した気がする。
え、これはもしかしてモテ期ってやつか?
……いや自惚れるなよ俺、きっとさっきの好きは”ラブ”じゃなくて”ライク”の方だろう。まさかあの乱華様がそんなチョロい訳がないだろういい加減にしろ。
うんうん、と自己解決して頷いていると、
「……透あのよぉ」
「どうした乱華?」
「……ちょっと屈めよお前地味に背あるんだからよ」
「ん? 分かった」
言われた通り少し屈むと乱華と目が合う。えっとこれでどうしろと?
「おい」
「は、はい」
「目瞑れ」
「え」
「早くしろ」
「わ、分かった」
指示通り目を閉じてみたが何をするのだろ……あ、いや待って? ギャルゲーでやったわ! これキスではないだろうか!?
これギャルゲーでよく見る感じのやつだ。間違いないこれはゲームならCGが見れるパターンだろう。
ヤバいそう考えると動悸がヤバいぞこれ。いくらなんでもあの心であってもキスされたことはないからな。
「じゃあ行くぞ」
言葉と共に乱華の動きを感じた。
「____っ!!」
いよいよ来るのか!?
「うっしょ……うっしょ……」
なんだろう乱華が何かしている。
何かしているのか? そう考えていると唐突に首から重みがなくなった。
「あれ」
「もう良いぞ目開けて」
え、そうなの? 全然唇に柔らかな感じ無かったけど? まあいいか、とりあえず目を開けることにしよう。
目を開くとそこには相変わらず可愛らしい乱華がいた。だが俺の視線はすぐに乱華が持っていた物に行ったのだ。それは、
「え、それ俺が着けてたチョーカーじゃん! 外したのか!?」
そう、目の前にいる奴に着けられた爆弾型チョーカーをその当の本人が持っていた。
あ、キスじゃなくてチョーカーを外すだけだったんですね……。
「なんだよ爆弾外してやったのに嬉しくねぇのかよ」
「……いや嬉しいですはい」
「嬉しくなさそうなんだが?」
「あ、はいキスされると思ってましたはい」
「え、い、いや流石にそれは早過ぎるだろ阿呆……」
いや気にしないで下さい。本当に気にしないで下さい……。
「……それと透に言いたいことがあんだよ」
「な、なんだよ?」
あのさ、と言って続けた。
「私と別れてくれないか?」
……
…………
………………
「え?」
どういうことだってばよ?
◆
「……」
乱華を家まで送った帰り道、俺は乱華からの突然の発言を思い出していた。
「まさかデートした最後に振られるとは思わなかった」
でも嫌な気持ちはない。なぜなら、
『透別に私のこと好きじゃねぇだろ?』
『いや好きだけど』
『”ライク”だろそれ』
『あー、まー、……はい』
『正直で良い子だな。まあだからさお前にもっと私のことを好きになってもらいたいなって』
『乱華……』
『だからな? 私のこと好きになったらよ。今度は透から告白してくれよ♡』
そう言って小走りで去って行った乱華の顔は真っ赤になっていた。本当喋り方は男らしいがやはり乱華は可愛らしい女の子だな。
これはかなり好感度が上がっているんじゃないのだろうか。よし景ちゃんに報告しておこう。
「そういえばスマホ電源切ってたじゃん」
俺自身スマホに依存しているわけじゃないからスマホの存在を忘れていた。
とりあえず起動しとかないと、そう考え電源を入れると恐ろしい程に連続的な通知音、見てみればメッセージアプリの通知数が三百を超えていた。あ、ヤバいこれ。
「ひぇ……」
ほとんどが心からのメッセージだ。そして何より文章が、
【コロスコロスコロスコロスコロスコロス】
呪いが綴られていた。
「これはアカン。家帰れないやつだ」
他にも乱華から、
【私以外とイチャついたら殺すからな?】
……と、とりあえず景ちゃんに報告しないと、そう思ったが景ちゃんからもメッセージがある。
【あーあー先輩が浮気してるーあーあー】
嘘やん。景ちゃんさては何処かで見てたのか? あ、いやあの真のストーカーならやりかねないな。
一先ず景ちゃんへのメッセージはやめよう。明日学校で報告すれば良いだろう。
そんなことを考えていた時だった。
「おらぁ〜もっと酒持ってこぉい〜」
突如聞こえる女性の声、台詞からして酔っ払いだろう。
「お客さん困ります。酔い過ぎですよ……」
「うるさいなぁ〜酔ってないわよぉ〜良いから酒持ってきなさいよぉ〜!」
明らかに店員さんが困っている。なかなか厄介な客だな俺はあんな大人にならないようにしよう。
そういえば母親からも『煙草、ギャンブル、バイクは駄目』と言われていた気がする。二つは分かるがバイクは危ないからという理由らしいけれど、
「あれぇ〜? もしかして雨上かぁ〜?」
酔っ払いがなんか言ってる。
なるほど、どうやら俺と同じ苗字のあまがみさんがいるらしい。大変だな酔っ払いに絡まれるとは、頑張ってくれあまがみさん。
「おいぃ〜無視すんなよ雨上ぃ〜!」
「ぐへっ!!」
いきなり背中に衝撃が走った。首に腕が見えることからどうやら誰かが俺の背に乗っかっているらしい。
何が起きたんだ、と背後を見てみると、
「え、ゆかりちゃん!?」
「違うだろぉ〜? 紫先生だろぉ〜?」
まさかのあの酔っ払いは担任の紫先生だったのか____てか!!?
「酒臭っ!!」
「ぐへへぇ〜ハァァ〜」
「息を吐くな吐くな! 酒臭いわ!!」
「なんだよぉ〜? 女の子に臭いは禁句だろぉ〜? ぶっ飛ばすぞ雨上ぇ〜」
いやアンタ女の子って年齢じゃないだろう!
呆れあまりの酒臭さに苦しんでいると、突然先程まで酔ってニコニコしていた紫先生の動きが止まった。そして、
「ぎもちわるい……」
……嘘やん(絶望)
「ゆかりちゃん分かってるよな? 今俺がおんぶしてるんだぞ? 分かってるよな?」
「……どうしよう雨上」
「あ? どうしました?」
「雨上を想う気持ちが溢れちゃいそう……口から……」
「いや言ってることは良くてもな!? もはや絵面は最悪なんよ!!」
でその結果、
「オロロロロロロロロロロロロ」
「ギャァアァァァァアァァァ!!!!」
俺の上から汚い滝が流れていった……。




