第72話 乱華とのデート! ワンッ! デート後編②
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公園からの帰り道、ゆっくり歩いている俺達は無言で乱華の家へと向かっていた。理由はもちろん、暗くなったので乱華を家まで送るためだ。
チラチラ、と乱華の方を見てみるが俯いたまま口を開かない。
痺れを切らしたのもあるが、この沈黙に耐えられなくなった俺は最初に話を切り出した。
「いやぁまさか銀ちゃんがストーカーだったとはな」
「……」
「じ、実際には違ったけど良かったじゃないか乱華! 本当のストーカーに狙われてなくてさ!」
「……」
「え、あのう……」
全く話す気のない乱華に頑張って話しかけるも、一方通行の会話に気まずくなる。
どうしたもんか、さすがに乱華の家までまだ時間が掛かるからずっと会話がないのは流石に堪える。
なんとか返事を引き出すために俺は動いた。
「ストーカー被害も解決したなら皆に早く別れろって言われるかもな、心とかこのチョーカー見るたびに機嫌悪くなるんだぞ? 困ったもんだよ」
普通に言ったつもりだった。
なんでもいいからこの空気感を脱しないと、そんな軽い気持ちで言った一言が乱華の足を止めた。
「……だろ」
「え?」
何かを言ったがよく聞き取れなかった俺が再度聞き返そうとした時、
「そんなに別れたきゃ別れればいいだろ」
乱華の小さな声が暗くなった夜道に静かに響く。俺はその様子を見てから自分が安易な考えで言った失言に気付いてしまった。
「あ、いやそういう意味じゃなくてな? 皆色々最近変で何故かやたらと機嫌が悪いときがあるってのを言いたかっただけなわけで」
「帰る」
「ちょ、ちょっと待てって乱華!」
そのまま先を歩いて行きそうになる乱華の手を掴むが乱華は相変わらず下を向いている。
「離せよ」
「いや送るって、なんで先行っちゃうんだよ」
「うっせぇ離せ」
「なんで怒ってんだよ。理由言ってくれなきゃ分かんないだろ? さっきから無言だし俺なんかしたなら謝りたいんだ」
「……」
掴んでいた腕を振り解こうとしていた乱華だが、俺の言葉に反応し先へ行こうとしていた足を止め、静かに話し始めた。
「ストーカーが勘違いだったのはそれはそれでいいさ、でもそれだけだ。なんだったら嫌でも怖くてもストーカーがいてくれた方が私はそっちの方が良かった……」
「え、なんでだよ困ってたんだろ?」
「……だってそのほうが」
乱華が振り返ると顔が街頭に照らされ、
「透は私と一緒にいてくれただろ……?」
その瞳は大粒の涙で満ちていた。
「……へ?」
思いもよらなかった言葉に俺の頭は真っ白になり、口から溢れたのは情けない声だけで、そんな俺を気にする様子もなく乱華は更に続ける。
「お前は優しいから私が困ってるって分かれば絶対ストーカーの問題が解決するまでは私の事を気にかけてくれると思ってたんだよ……」
「お、俺は別に優しくないぞ?」
「……そうだな。お前は私に優しいわけじゃないもんな」
”お前は皆に優しいんだもんな”
その言葉を聞いて、俺は生唾を飲み込んだ。
どうして突然そんなことを言うのだろう。何故に今……
「な、何が言いたいのか分からないぞ? なんの話がしたいんだよ?」
「……言わなきゃ分かんねぇか?」
その言葉と共に乱華は涙を流すと静かに、けれどハッキリと気持ちを込めて笑顔で言った。
「私はお前が大好きだよ……透」
「……え?」
「驚いてるな」
「そ、そりゃもうかなり」
「だろうな。あれだけ嫌いだって言ってたしな」
そうだ、乱華は俺のことを嫌いだった筈だ。いくらある程度話せるようになったといってもこんなすぐに好かれるものなのか……?
「理由があるけど聞きたいか?」
そりゃもちろん、と言うと乱華はバッグから小さなものを取り出した。それは前に乱華の部屋で見た兎のぬいぐるみだ。
「あ、それ」
「私のお気に入りの大切なぬいぐるみだ。これ見覚えないか?」
「いやなんとなく見覚えはあるんだけど思い出せなくて……どこで見たんだろう……」
「……そっか覚えてねぇのか」
ぬいぐるみを大事そうに眺めながら乱華は言葉を続ける。
「これさ、お前に貰ったんだぞ?」
「俺が?」
マジか、俺覚えて無さすぎるだろ……。
「小さい頃家のことが色々嫌でさ、あの公園で泣いてたら男の子が話を聞いてくれてな」
「……」
「その時男の子がこのぬいぐるみをくれたんだ『頑張ってる君にプレゼントだ』ってな」
「それが俺ってわけか?」
「おう」
「そ、そうなんですね」
悲報、全く覚えてないでござる。あと昔の自分の格好つけてる感じが恥ずかしくて死にたい。
「最初はなんだコイツって思ったけどな」
「ですよね?」
「でもしばらくその男の子に話を聞いてもらっていたら、一緒にいるのが楽しくなってな」
「スー……なるほど」
「唐突にその男の子は来なくなったんだけどな、でもそれからはこのぬいぐるみが一緒にいてくれたんだよ」
身に覚えはないが、俺ならやりそうだ。でもなんでいきなり会いに行かなくなったんだろうか? まあ今考えたところでしょうがないな。
「最初は確証はなかったけどお前とこうして色々話してみて間違いないと思ったわ。あの時の男の子だって」
「な、なんでだよ」
「面影があるのもそうだけど」
それより一番は、
「前にも同じこと言われたからな」
「同じこと?」
「さっき言ってただろ『自分否定するようなことは俺が絶対許さないぞ』って」
言ったけど、恥ずかしいから一言一句間違えないで言わないで?
「マジかよ……え、てか子供の頃俺に言われたこと覚えてんのかよ怖……」
「他にもあるぞ」
まだあんのかよ……。流石にこれ以上に昔の自分との共通点ないだろ。いやないと思いたい。
「子供の頃の透にも頭にチョップされた」
「小さい頃から俺ってそんな感じだったのかよ……」
嫌だ嘘……昔から私なんも変わってないじゃない……
「格好つけてダセェよな、透お前子供の頃からそうなのかよ?」
「う……」
「しかも女の子にプレゼントあげたことも忘れてるしよぉ?」
「うぅ……」
「いきなり会えなくなるしなぁ?」
「ぐはっ!!」
こ、これ以上は辞めてくれませんか? 俺の精神が保たないわ。言葉の暴力って知ってますかおい?
「じゃあ言葉の警察でも呼んでこいよ」
よ、容赦なさ過ぎるだろ(号泣)
「やっぱ楽しいな、透と話すの……」
笑顔を見せて気がつけば涙も止まっていた乱華は寂しそうな表情でぬいぐるみを見つめて呟いた。
「別れたくねぇなぁ」
「乱華……」
「もっと一緒にいてぇなぁ……」
「……」
せっかく泣き止んだというのにまた乱華の瞳に薄っすらとだが涙が見える。
……あー駄目だ。
「別れなくてもいいだろ」
「え」
俺が発した言葉を聞き乱華は目を見開いてコチラを向いた。
「いいのかよ?」
「いいだろ別に」
「他の奴らはどうすんだよ?」
「好き勝手に言わせとけばいいだろ。これは俺と乱華の問題なんだ」
「嘘だろ透?」
お? 乱華さん聞いちゃいますか? そこ聞いちゃいますか?
なら言わせていただきましょう。今の俺にしか言えない決め台詞ってやつを、
「いや本当だぞ?」
なんせ俺は……、
「残念ながら俺には嘘つけない呪いがあるからな」
その言葉を聞き乱華は最後に小さな一雫の涙を流して笑顔で言った。
「……そうだったな。透は嘘つかない良い子だもんな……♡」
~おまけ①~
「それじゃ乱華手を繋いでも良いかな」
「な、なんだよいきなり……」
「忘れてるのか? まだ家まで送ってないんだぞ?」
それがどうしたんだよ、と言う乱華に俺は差し出された手を優しく握り告げた。
「家に帰るまでがデートだろ? 可愛い彼女を家までエスコートをさせて欲しいんだよ」
「透……♡」
これを見ていた通行人は皆が皆すぐにブラックコーヒーを買いに行ったという……。
~おまけ②~
好感度が100%に達しました。
これ以上、上がることはできません(嘘)




