第65話 なんなんだこのクソゲー!?
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ゴールデンウィーク最終日。
長く険しい修羅場を乗り越えた翌日、今までの数々の疲労を癒す為に俺はパソコンを起動して通話アプリを立ち上げていた。
「あーあー聞こえるか?」
ヘッドホンを付けてマイクに向けて問いかけると通話グループに入っていた奴から、
『聞こえているですぞ透殿』
「その呼び方相変わらずだな銀ちゃん」
聞こえてくる地味にイケボの正体は”銀ちゃん”という俺の数少ない男友達である。
これからコイツとゲームをする為に通話を始めたというわけだ。それにしても、
「久しぶりにゲームするな、銀ちゃんが転校してから全然会えないからこうして遊べるのが本当に貴重だぞマジで」
『そうですな、拙者も転校先で友が出来なかった故に透殿と遊べるのが嬉しいですぞ』
相変わらずのよく分からない口調に笑みが溢れる。嬉しいことを言ってくれるなおい。
やはり男友達というのはこういう気楽さがとても楽しいし、大事にしたいと思える。
特に銀ちゃんは中学入学から仲良くなり、二年前に転校してしまってからもこうして定期的に遊ぶ仲なのだ。本当に友達の少ない俺にはありがたい。
ただ昔から銀ちゃんと仲良くしてると心が良い顔をしなかった。今考えると嫉妬していたのかとようやく分かる。怖いな心ちゃんは、
「それで? ゴールデンウィーク最終日だけど今日は何して遊ぶんだ?」
『ふふふ……聞いて驚かないでくれ透殿! 遂にあのゲームが完成したのだ!!』
「あのゲーム? ____まさか!?」
『そうそのまさかですぞ』
驚く俺と不敵に笑う銀ちゃん、芝居っぽくなってしまったが、俺は本気で驚いていた。
すると銀ちゃんからあるデータが俺のパソコンに送られ、恐る恐るそれを開くと少しのロード画面の後にそのタイトルが露わになる。
”トゥルーラブ・オンライン”
複数の可愛らしい女性の声でタイトルコールが流れ、俺は思わず生唾を飲み込んだ。
「拙者が長年かけて作ったギャルゲー型MMOなんですぞ!!」
「凄いな良い感じのクオリティじゃんかよ!」
『でも実際はベータ版ですし、オープニングも用意してないのでまだまだですぞ』
いやでも凄いわ本当に、素直に驚くし尊敬もする。
実は俺がギャルゲーにハマるきっかけを作ってくれたのがこの銀ちゃんなのだ。しかも銀ちゃんはギャルゲーが好きなあまり自分で作ってしまった。
それがこの”トゥルーラブ・オンライン”というわけなのである。
「いやちょっと待って? これギャルゲーなんだよな?」
『そうですぞ』
「MMOって言った?」
『言いましたぞ』
「複数人が同時プレイするギャルゲーってこと?」
『そうですぞ』
いや待って斬新過ぎない? 本来一人用のギャルゲーをオンラインゲームにしたというわけ? え、待って既にクソゲーの予感がしてるのだが?
『意外と人気なんですぞ?』
「嘘だろマジか」
『まあまあとりあえず始めてみてくだされ、あ、画面共有は忘れずにですぞ』
了解、と銀ちゃんにゲームの進行が視認出来るように画面共有をしたのち、いよいよゲームを始めた。
●
『では透殿まずはタイトルから次に行きますぞ』
「分かった」
言われた通りタイトル画面から進む。すると、
「____え、キャラメイク?」
平凡な男性のアバターが現れると、眉毛や目、輪郭など様々なパーツを選ぶ選択画面へと変わった。
ギャルゲーでキャラメイクとかどうなってんだよ……。
『さあ! 透殿の分身を作るのですぞ!! カスタマイズの幅はベータ版とは思えない濃さとなっていてですな! それと____』
「いやいや怠い怠い怠い!! こんなのやりたくないわ! てか俺キャラメイクは凝っちゃうんだよ!」
ゲーム始めるまでとんでもなく時間掛かるわ。勘弁してくれよ。
『そう言われると思って既に拙者が透殿に似せたキャラを作っておきました』
「お、そうかありがと____待って俺に似たキャラって言った? 自分そっくりなキャラでギャルゲーやるとかどんな罰ゲームだよ」
『自分がギャルゲーの世界に入ったような気になれる! それがこのトゥルーラブ・オンラインのコンセプトですぞ!』
「現実の自分に似せた偽物のキャラを使って恋愛(偽)をするのに”真実の愛”ってか? ブラックジョークが過ぎるぞおい!?」
まあまあそこは置いといてだって? 全然置いとけねぇわ、コンセプトがトチ狂ってんだろうが、
『さてここで色々操作キャラの細かい設定を記入するのですが』
「ですが?」
『今回はこの世界の説明をしたいのでこのまま進みますぞ』
「分かった分かった」
最初の好奇心は何処へやら、クソゲー臭しかしないゲームにかなり興味が失せてしまったが、とりあえず言われた通り進むと選択可能なアイコンが複数あるマップが突如表示された。
見た感じこのアイコンのところに移動出来る感じなのが分かる。
「なんかここはギャルゲーっぽいなこれはあれだろ? この”学校”や”商店街”とか書かれた場所を選択するとヒロインと話せる的なやつだろ?」
『そうですぞ』
正直拍子抜けだ。ここまで頭のおかしいゲーム設定をしているのに、ここだけまともにギャルゲーになってるのが逆に怖い。
だがここで銀ちゃんは不敵に笑って言った。
『……透殿マップの隅にあるアイコンを押してみてくだされ』
「ん? ここか」
銀ちゃんの言葉に従って押してみると、今度は画面いっぱいにいきなり世界地図が現れた。しかもそこには無数の選択可能アイコンが表示されている。もしかしてこれは、
『その通り! このトゥルーラブ・オンラインは会話の出来る場所が世界から選ぶことが出来るのですぞ!! その数は今の時点でなんと一万以上!! これからも増やしていきますぞ!』
「頭おかしいのかな?」(震え声)
『北は北極、南は南極と色々なシチュエーションで会話を楽しむことが出来るのですぞ!』
規模も発想も頭おかし過ぎて常人じゃ理解できないレベルだわ!! ……え、いやちょっと待って?
「これってオンラインゲームって言ったよな?」
『うむ、そう言いましたな』
「このゲームの攻略対象……ヒロインって誰なんだよ?」
俺は気付いてしまった恐ろしい事実を受け入れることが出来ず、銀ちゃんに聞いてみた。
すると彼は、決まっていますぞ、とちょっと格好をつけてイケボで応えた。
『同じくゲームをプレイしている現実の女性ですぞ』
「だよなぁ!? そうだよなぁ!?」
それ以外あり得ないよな! だってオンラインゲームって言っていたし、ギャルゲーは当たり前だが男キャラだけじゃ成立しないのだから!
「いやいやこれは無理だろ。こんなのギャルゲーじゃないわ。俺は辞めるよ」
『いやいやいや待ってくれですぞ! このゲームはベータ版にしては結構人気なんですぞ!』
なんでこんなゲームが人気なんだよ。このゲームをしてるプレイヤーはあれか? 誰もギャルゲーをプレイしたことがない人しかいないのか?
『ほら透殿! そんなこと言わずに試しにこの学校エリアにいるあのキャラを選んでみて欲しいですぞ』
「気が進まねえ……」
諦めて銀ちゃんに言われた通り適当にいた女性キャラを選択してみる。
『気になる人を見つけると会話を始める前にお互いのキャラ設定が両方に公開されるのですぞ! これを見てストーリーを考えて二人でまだ見ぬイベントを協力して歩んでいく! これがトゥルーラブ・オンラインなんですぞ!』
いや要するにこれって、プレイヤーに後の事を色々丸投げしてるだけだよね?
……ていうかこれさぁ、
表示された相手側のキャラ設定を見て俺は絶句した。
キャラ名『グレープ侍』
・年齢 二十八歳
・趣味 酒
・職業 公務員
・相手に求める年収 三千万以上
「これただのマッチングアプリじゃん……」
真実の愛……、何処行ったんだよ……。
~おまけ~
今日の姫ちゃん。
「ムフフ……もう食べられないのじゃ……」
自堕落に寝ていただけであった。




