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親友ポジションに憧れる俺は彼女達に狙われている  作者: 瑞柿けろ
第二章 デート&乱華編

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第60話 私の三千円で育てたお猿さん可愛いです




「先輩♡」

「どうした?」

「呼んだだけです♡」

「そっすか」

「透先輩♡」

「……なんですか?」

「呼んだだけです♡」

「あ、はい」


 次は心と入れ替わり後攻、景ちゃんのターン。俺が心にラッキースケベを行ったせいで景ちゃんストップが入り強制終了となった。

 普段なら文句を言いそうな心なのだが、さっきは何かが満たされていたようで満面の笑みでこれを了承したというわけだ。

 だが心は良くても服屋であった二人、乱華と天はそういうわけにはいかない。色々言いたそうにしていた二人だったのだが、


 次は私の番なんで邪魔しないでください、と鋭い眼光で強制的に二人を黙らせた景ちゃんとのデートが始まったのだった。因みに場所はここ、


「本当にゲームセンターで良いのか?」

「はい、私先輩とここに来たかったんです」

「そうなのか」


 広いフードコートの隣にそれなりに大きく配置されたゲームセンターだ。

 デパートのゲームセンターだからといっても安っぽくなく、定番のゲームのみならず色々な機体が置かれている。


「懐かしいな、子供の頃来たことあるわ」

「……そうなんですか? 友達とか?」

「あぁ心……その頃はまだ心太郎だけどな。あと真白な」

「定番の幼馴染ーズですね」


 幼馴染ーズって、斬新な言い方だな。


「他には一緒に来たりしてないんですか?」

「来たぞ」

「……誰とですか?」

「昔好きだった初恋の人」

「ふーんそうですか」


 あ、これはあれだ。あまり良くないやつだわこれ。

 仮にも女子とデート中だというのにこの話題はストーカーを刺激してしまう行為だ。

 恐る恐る景ちゃんの方に目を向けてみるが、


「先輩早く行きましょ! 置いてきますよ!」

「え、あ、あぁ分かった。行こうか」


 景ちゃんとのゲーセンデートが始まった。







 賑やかな空間、というより様々な喧騒の中、色々なゲームで遊んだ後、俺と景ちゃんはある機体の前にいた。

 それはアームを操作して限られた動きのみで絶妙に取りずらい配置がされている景品を受け取り口へと落とすというもの。

 一回ワンコインで出来ることや手軽さから子供から大人まで色々な人がやっているが、これにもプロと呼ばれる者達がおり、かなり奥が深いゲーム。


 それがクレーンゲームなのである。


 ここに一人、このゲームの洗礼を受ける者がいた。


「……」

「景ちゃん?」

「……」

「おーい景ちゃん?」

「話しかけないでください」


 ガチトーンじゃねぇか。力入れ過ぎてアームを操作するスティックがミシミシと軋んでいる。辞めなさいって壊れるだろ……じゃなくて、


「ムキィィィ! また取れないもう一回!」

「ちょっと待て景ちゃん」


 再びお金を入れようとする景ちゃんを制して聞いてみる。


「なんですか先輩」

「景ちゃんそのぬいぐるみを取るためにいくら使った?」

「なんでそんなこと聞くんですか」


 いいから教えてくれ、と言い返すと口を尖らせ拗ねながら静かに応えた。


「……三千円」

「だよなやっぱりそうだよなぁ!? 景ちゃん悪いことは言わないもう辞めよう! これなら三千円のぬいぐるみを普通に買った方がいいって!」

「でも……」

「言っちゃ悪いと思ってたから我慢してたけど景ちゃん壊滅的に下手くそだぞ」

「……」

「な? 辞めようって」


 俺の言葉を聞くも反応はせず、無言でクレーンゲームの機体に手を添える景ちゃんは何か力み始めており……ってちょっと待って!?


「景ちゃん待て待て! 揺らすな揺らすな店員さん来るから!」

「……チッ」


 まさかの舌打ち!? 全く景ちゃんはとんでもない腕力を利用して恐ろしいことを考えてるわ。すぐに気付いて止めた俺を褒めてやりたい。

 かといって、いつまでも景ちゃんをこのままにしておくことは出来ない。今だにクレーンゲームの景品をジッと眺めてるし……仕方ない。


「景ちゃん試しに俺やってみて良いか? 一回だけ」

「良いですけど……これ絶対取れないですよ?」


 一回だけ一回、とコインを投入してゲームを開始する。


 そして……


「あ、取れた」

「嘘ぉ!?」


 すぐ取れた。もはや文章にすることなく簡単に取れてしまった。


「あーえっと」

「……」

「んーと」

「……」


 ヤバい景ちゃんの目が怖い。全然瞬きをしないで手に入れた景品を眺めてるわ。


「景ちゃん?」

「なんですか」

「この猿のぬいぐるみ景ちゃんにプレゼントしたいなぁーって」

「良いんですか?」

「もちろん。初めから取れたとしても景ちゃんにあげるつもりだったし、だからほら」


 ありがとうございます、と素直に受け取ってくれた景ちゃんはぬいぐるみを抱きしめて笑みを溢す。


「私の三千円で育てたお猿さん可愛いです」

「な、生々しいな……、まぁでも喜んでくれて良かったわ」

「この子の名前はコペルニクスにします」

「何故に偉人の名前なの?」

「家にいるチャイコフスキーも喜びます」

「あ、そういうネーミングセンスなのか景ちゃんは……ちなみにそれはなんのぬいぐるみなんだ?」

「ウサギです」


 お、そうか。

 なんでその名前なのか分からないが、まあ良いだろう。嬉しそうにぬいぐるみを抱き締める景ちゃんを見れただけで良かったというものだ。

 微笑ましい光景の中、突如スマホの震えに気付き覗いてみるとそこには【後三十分】と書かれていた。


「ヤバいぞ景ちゃん、心からカウントダウンのメッセージが来た」

「チッ……私アイツ本当に嫌いです」


 そう言うなって、と心の肩を持とうと思ったが辞めた。ここで何かを言ったら今度は逆に景ちゃんの機嫌が悪くなる。それは面倒だ。

 

「そろそろ戻ろうか。心を怒らすと後が大変だし、主に俺が」


 心と姫が待つ所へと帰ろうとした時、服の袖を景ちゃんによって引っ張られ俺の歩みが止まり、景ちゃんが口を開く。


「待ってください最後にアレがやりたいです」

「え、あれ?」


 景ちゃんに手を引かれ着いて行ってみると、一昔前に流行った女子に大人気の密室に入り写真を撮影する機械がそこにあった。


「先輩最後に写真撮りましょう!」

「ッ!!」

 

 女の子と一緒にゲーセンで写真を撮る、この状況に俺は内心昂っていた。



 こ、これは! ギャルゲー(進●ゼミ)で見たことある展開だ!!



 雰囲気台無しである。



「先輩もっとこっちに寄ってくださいよ」

「こ、こうか?」

「いやまだ遠いですよ! 私にもっと近づいてください!」

「こ、こうか??」

「あーもう! まだ遠いですよ!」


 景ちゃんに肩を掴まれ抱き寄せられる。

 やだ景ちゃん男前格好良い! 俺が女なら惚れてる!


「なにしょうもないこと言ってんですか、はい撮りますよ」


 アナウンスが流れ、しばらくするとフラッシュが焚かれて一枚目が撮り終わる。ポーズは特になく景ちゃんが俺の腕にくっついている様子、至って普通の写真だ。

 しばらくしてまたアナウンスが流れ、二回目の撮影準備に入った。そんな時景ちゃんが、


「先輩……ギュッってしてください」


 顔を赤く染め恥ずかしそうに告げてきた。

 なるほど了解だ。


 景ちゃんの手を寄せて____


「はいギュッ」


 優しく握手、そして撮影される。


「ちゃうわぁーー!!」

「へぶっ!! ちょ! 景ちゃん平手打ちは待って待って!! 力強過ぎだって____へぶっ!?」

「先輩鈍感にも程がありますよ!! なんで握手なんですか!! ここは普通抱きしめてギュッでしょう!!」


 あ、そっちか。なんでこのタイミングで? とは思ったけどそっちね? なるほどなるほど……


「なんで抱きしめないといけないんだよ。やる必要性が感じられないんだけど? そもそも____」

男女先輩アイツにはやって私にはやらないと? へーそういうことですか。分かりました今ここで先輩を絞め落として家に連れ帰って監禁します」

「是非抱きしめさせてください! 俺景ちゃんのことギュッってするのが夢だったんだよ!」

「も〜先輩も素直じゃないんですから♡ そんな夢いつでも叶えてあげたのに♡」

「うっわ……」


 怖いこの人……、なにが怖いって目が怖いわ。絶対にやるという強い意志が感じられたわ。恐ろしい後輩だ。


「……じゃあ失礼します」

「はいどうぞ!!」


 なんで女子の方がそんなやる気満々なんだよ。

 もうしょうがない早いとこ終わらせよう。


 少し躊躇いながらもソッと抱きしめると、三回目の撮影となりフラッシュが焚かれる。

 へ、嘘やん。この写真撮られたのか、絶対他の人に見られないようにしないと……、






「ねぇなにやってんのよ雨上」

「とー君どういう事なのこれ」





 背後には撮影機の外から覗く杏理と真白。


 どうしよう……今日が俺の命日かもしれない……。


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