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親友ポジションに憧れる俺は彼女達に狙われている  作者: 瑞柿けろ
第二章 デート&乱華編

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第56話 露音姫=駄神&二人からのお誘い




「ただいまぁ……つ、疲れた」


 天との夜散歩が終わり、やっと解放された俺は家へとなんとか帰宅した。

 なんか今日は色々あった気がする。真白と水族館に行って、心と景ちゃんから抜け駆け禁止宣言をされ、そして最後に天と散歩だ。なんだこれ? 一日のスケジュールとしては詰め込み過ぎじゃない? 実際には一日だけど気のせいか一ヶ月くらいの長さに感じるような……。


 とりあえず今日はもう寝よう、と疲労で心身ともに疲れ切った身体を動かし、靴を脱いでリビングと台所を仕切る引き戸を開けた。


「おーおかえりなのじゃ透。何処に行っておった? また儂を放って面白いことでもしておったのか?」

「……んー?」


 なんかいる。てか見知った奴がいた。

 綺麗な赤い髪に、宝石のように輝く真紅の瞳でコチラを見上げる姿は、着崩した和服を着ているのにも関わらず全く魅力が感じられない。

 

 そんなクソガキがいた。


「え、姫?」

「おーそうじゃ露音姫(つゆねひめ)様なのじゃ。遅くなってすまんかったの透」


 謝ってはいるが到底謝罪している奴の態度じゃない。だって人のゲーム寝っ転がりながら勝手にやってるし、ムッチャ寛いでるじゃん。


「ニェルナの伝説って面白いのぉ! 最近の娯楽は全部こんな凄いのか!? 自由度が高くて凄まじいぞ! おはじきとかとは全く違うのじゃな!」

「比べる物のジャンルが違い過ぎるだろ。まあでも個人的にはムニュラの仮面が最高だけどな____」


 って、そうじゃなくて!


「姫お前今までどこ行ってたんだよ。帰ってくるって言ってから二ヶ月半は経ってるし」

「ん、そんなにか? 三日くらいしか経ってないはずだが?」

「何言ってんだよお前そんなわけが……あれ? そうかそのぐらいか?」

「どうしたのじゃ透? 疲れておるのか?」


 いやまあ疲れているのは事実だけど、そうかそんな時間経ってるわけないか。感覚でそんな気がしただけか……。


「なんじゃー? そんなふうに考えてしまうくらいに儂がいなくて寂しかったのかぁー?」

「んなわけねぇだろ」

「本当かぁ? 恥ずかしがらんで良いのじゃぞ? あれじゃろ? 透はメンタルざぁこ♡ ってやつなのじゃろう?」


 イラッ、イラッ


「全く最近の子供は正直者じゃなくていかんなー? ここは久方ぶりに逢えた儂に頬擦りして喜びを露わにするところであろう?」


 イラッ、イラッ、イラッ

 

 俺の中で何かが弾けた。


「この駄神がぁ! 言いたい放題言いやがってぇぇ!!」

「痛い痛い痛い!! アイアンクローは止めろ!! あ、頭が軋む! 止めろ止めるのじゃぁぁぁ!!! 今ダンジョン攻略中なんじゃぞ!!?」


 姫の顔面を掴み持ち上げると、悲鳴と共になんだかんだ余裕があるのか抗議してくる。

 知らんわ、そんなのどこかの勇者にやらせとけ! ……あ、コイツが操作してるのがその勇者だったわ。


「ときに透よ。この主人公が”ニェルナ”という名前なのか?」

「あ、いやコイツの名前は違うぞ」

「ぬ? 題名が『ニェルナの伝説』なのにか? 主人公の名前ではないのか?」

「……それは触れないでいいところだから」


 以上、アイアンクロー中での会話である。

 

 なんだお前余裕あんじゃねぇか。俺も素で答えちゃったわ。

 そんな時、テーブルに置いていたスマホからメッセージを知らせる通知音が鳴った。俺は冷静に姫をアイアンクローしたままスマホを取って操作し始める。相手は景ちゃんのようだ。

 あー今儂宙に浮いてるのじゃぁー、と緩い反応をしている姫をとりあえず無視してメッセージ確認した。




【その子供誰ですか】




「え?」


 悪寒の様なものがした。ゾワリと背中に嫌な感覚が走り、咄嗟に姫を下ろし窓の方へ近付く。

 観える風景はいつも通りだが、そのいつも通りの風景に感じる違和感らしきものがあった。


「景ちゃんのマンション……」


 そう。このアパート、特に俺の住む角部屋の窓からは景ちゃんの住むタワーマンションが見えるのだ。こちらから見えるということは彼方からも見えるということ。


「何かで言っていたな……”深淵を覗く時、深淵もまたコチラを覗いている”と」

「なーに格好つけておるのじゃお主?」

「五月蝿いぞ駄神」


 何の確証はない。ただなんだか分からないが絶対の確信が俺にはあった。


 恐る恐るタワーマンションに向けて手を振ってみる。

 

 ____ポロンッ


 スマホから響く通知音。そこには手を振る可愛いパンダのスタンプが添えられていた____って、


【景ちゃん! お前さては《《見ているなぁぁぁぁ!!?》》】


 俺は急いでカーテンを閉めた。すると続いてメッセージが送られる。


【あぁーもっと先輩のこと見ていたかったのに♡】


 嘘やんコイツ怖……、下手なホラー映画より十分ホラーしてるわ……。

 そういえば今思うと景ちゃんの家に望遠鏡らしき物があった気がする。アイツまさかこの為に買ったのか? 怖すぎるわマジで……。


 いやちょっと待って?


「……なぁ姫一つ聞いて良いか?」

「なんじゃぁー? 儂はダンジョン攻略を再開しようとしとるのに」


 五月蝿い今そんなこと重要じゃないんだよ。どちらかというと今この状況が一番重要なんだよ。

 俺は今この場で最も気になった事を姫へ問い掛けた。




「お前なんで他の人に見えてんだよ」




 そして帰ってきた答えはシンプルなものであった。


「おーそれの、透の側で愉快な事を見るために実体化しただけなのじゃ」

「マジかよ」

「それとこれでお主と同じ学舎に通うことに決めたのじゃ」

「……は?」

「最初は透お主の周りで摩訶不思議なことを見てるだけで良かったんじゃが……」

「”じゃが……”なんだよ」

「見ておるだけでは面白くないのじゃ」


 この駄神ハッキリ言いやがった。


「これからは神の力を使って面白くなるように稀に介入するぞ! そしてそれを儂はお主の側で見る。これぞうぃんうぃん? ってやつじゃな」

「どこがウィンウィンだよ! 俺にはデメリットしかねぇだろうが!! ……じゃあこの状況を神の力で解決してくれよ」

「駄目じゃ。儂の力を大きく超えておる。それは叶えられないのじゃ」


 お前は何処ぞの願いを叶える龍かよ。


「てか面白くないからそれはやらないのじゃ」

「いやそれが本音じゃねぇか」

「ともかくじゃ! この数日でお主の両親と学舎には話を通したぞ!」

「親父達にもあったのかよ……」


 休み明けからはよろしく頼むの、と言いたいことを言い終わるとゲームに戻ってしまった。久々に会ったというのにこれだ。自由過ぎるだろ……。

 でもなんだろうか。色々あり過ぎて若干姫のことを忘れていたが、いくら五月蝿い奴とはいえなんだかんだ家に誰かいるというのは悪い気はしないな。


「なんか腹減ってないか? 何か簡単なのでも作ろうか?」

「おー、頼むのじゃ」

「はいはい」


 困った神様だ。

 冷蔵庫を確認しているとまたしてもスマホからメッセージを知らせる通知音が鳴った。相手は心と景ちゃんだ。


【透! 明日一緒にデートしようよ!! あの憎たらしくて生意気な後輩には内緒で!】

【先輩! 明日デートしたいです! 男女先輩には内緒ですよ!!】


「……」


 ……この二人はこんな時だけある意味息ぴったりなんだな。とりあえず二人に伝えておくか。


【|景ちゃんが抜け駆けしてるぞ《心が抜け駆けしてるぞ》】


 それだけ教えて俺はソッとスマホを閉じた。


 ……今日は長い一日だったなぁー(現実逃避




        ~おまけ~




【で、あの子供はなんですか?】

【し……親戚だよ】


 この状況をなんとかしてくれませんか神様??



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