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親友ポジションに憧れる俺は彼女達に狙われている  作者: 瑞柿けろ
第二章 デート&乱華編

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第54話 天と夜散歩……?中編




「俺と真白はただの幼馴染だ。それ以上でもそれ以下でもないし、そもそものところ真白は俺のこと嫌いだしな」

「……本当かい?」

「こんな斬られるかもしれない状況で嘘を言えるほど俺の肝は座ってないって」

「……それもそうだね」


 珍しく凛々しい先輩は俺の言葉に納得すると刀から手を離し、今度は顎に手を添えて考え始めた。

 ま、どんな時でもきっとサラサラ嘘がつけると思うけどね?


「うーむ……それにしては距離が近かったと思うんだがね」

「それは正直俺も思ったけど、最近仲直り? をして久々で真白も距離感が掴めていないのかなと」

「幼馴染とはそういうものなのかね? ま、良いだろう」


 それよりも、


「ご主人様! 夜の楽しい散歩を続けようじゃないか!」


 急に態度変えるなよ。


「というかこの固定された俺の手はどうなるんだおい!?」

「あぁそれなら二時間くらいしたら粘着力が弱まるから待っていれば大丈夫だよ」

「……まあそれなら____って待って? それまで俺はこの変態と散歩をしてないといけないって訳か?」

「しっかり私をリードしてくれご主人様♡ リードだけに♡」


 喧しいわ。



「ところでもう一つ質問を良いだろうかご主人様?」


 夜の公園にて変態の散歩中、変態は不思議そうな面持ちでコチラを伺ってきた。


「なんですか? あと外でその呼び方マジで勘弁してください」

「すまないそれは不可能だ。私の中でご主人様はご主人様でインプットされてしまっていてね」


 お前はロボットかなんかかおい。これ以上余計な属性を付け足すな。

 ただでさえ変態で、マゾで、先輩で、さらには常に刀を携帯しているような奴なんだ。もう既にキャラが濃いんだから勘弁してくれ。


 呆れてため息を溢す俺だが、先輩は気にせずに話を続ける。


「ご主人様は私と話す時に口調が安定しないようだけど、どうしてなのかなと気になってね」

「え? あーそれはですねー」

「うん」

「先輩は変態で俺のこと殺そうとして来たしどうしようもない人ですけど」

「んッ♡ そ、それで?」


 いや本当にそういうところが救いようないですけどね? 全くこの雌豚は……


「良いですか? 俺はこれでも先輩を尊敬しているんですよ。なんでもできる完璧な先輩で心とも仲良くて良い人だなって」


 それに、


「一応先輩ですしね。イマイチ敬語が抜けないだけです」


 なるほどねそんな理由か、と先輩は俺の言葉に返すと、


「なら悪いけれどハッキリ言わせてもらおうか。私を尊敬することも敬語も必要ないから、即刻辞めてくれないか?」

「え、何故に……」


 眉を顰め明らかに嫌そうな、というか機嫌が悪くなった先輩。

 珍しいことだ。いつも皆の見本になる完璧なこの人のこんな姿は見たことがない。


「私はいつもの自分が好きではないんだよ。……いや言い方が悪かったね。好きじゃないんじゃなくて嫌いなんだ」

「……」

「私は母様に子供の頃からこう言われてきたんだよ『東鐘家の巫女として完璧であれ』と」

「巫女として? じゃあ乱華も?」

「いいや乱華は違うよ。それに乱華は厳密には____これは私が言うことじゃないか」


 歯切れの悪い言い方をされ聞き返すが、


「ご主人様が乱華から直接聞いてみれば良いよ。きっと答えてくれるよ」

「……分かりました」

「まーともかくあれだ。私は昔から自由がなかったからね。生徒会も剣道も自分の意思ではないさ、だから今こうしてご主人様といる時は本当にしたい事をしたいんだよ」

「……それが“コレ”ですか?」

「うむ。だから私に敬語は不要だ」


 大切なことを言っているのかもしれないが、いかんせん結果が変態行動“コレ”だ。イマイチ緊張感がない。


 ふーむ……。


「先輩は先輩が嫌いですか?」

「あぁ嫌いだね」

「生徒会の仕事とかも嫌いですか?」

「正直やりたくはなかったかな。でも生徒会の皆とは仲良くできて嬉しいよ」

「剣道も嫌いですか?」

「……」

 

 その質問に先輩は散歩中だったが、一時停止して立ち止まり考え始める。


「どうだろうか。勿論最初は嫌だったよ? ちゃんとやらないと母様に怒られるからね。でも今は……よく分からないな」


 困った様子の先輩はしばらく考えて答えが見つからずに黙ってしまった。


「俺先輩の素振りしてる姿好きですよ」

「そ、そうかい?」

「はい。なんか様になってるなって思いますし、一つの道を極めようとしてる人ってやっぱり凄いなって思います」

「そういうものかね……」

「先輩の剣技を受けた俺が言っているんですよ? 自信を持ってください」


 ……だから先輩に言いますけど、


「先輩はきっと剣道が好きなんですよ」

「……どうだろうか」

「洗練された動きや、迷いのない太刀筋、かなり極めないとあんな芸当できませんよ。それに知ってます先輩?」




「嫌いなことなんてそんな続けること出来ませんよ」

「……と言うと?」

「この世で最も難しいことは俺は”継続すること”だと俺は思うんですよ」

「継続することかい?」

「はいそうです」


 誰だって始めるのは簡単、辞めるのはもっと簡単だ。

 そりゃ始めるのを先延ばしにすればいつまで経っても始められないが、逆を言えば何かのきっかけがあれば、一歩を踏み出すことができれば誰にだって何かを始めることはできるんだ。

 辞めるのも同じ理由ですぐ行動に移せる。


 だけど『継続する』というのはそんな簡単なもんじゃない。


「継続するにはモチベーションだったり、体調だったり色んな事情がある中で、自分の気持ちと毎日相談しながら続けないといけないんです」


 嫌なことがあるかもしれない。

 気に入らないことがあるかもしれない。

 何処かで限界が来てしまうかもしれない。


「”継続”は“自分の身体と気持ちを擦り減らして続けていくこと”なんです」

「……」

「どんなに自分が好きなことでも毎日繰り返したせいで嫌いになってしまう人もいます。好きなことは仕事にするなとも言いますしね」


 でも、


「先輩は違うじゃないですか」

「え……」

「そりゃ最初は剣道が嫌いだったかもしれない。……でも、もし今も嫌いならそんなに先輩の剣が綺麗なわけないですよ」

「私の剣が綺麗……」

「はい」


 それに、と俺はハッキリ言い放つ。


「人は嫌いだったりやりたくない事を継続するのは難しいですし、興味のないことは上達しないそうですよ?」

「____ッ!!」

「先輩は剣道が好きですよ。さっきも言いましたけど斬られた俺が言うんですよ? これ程説得力のある言葉ありますか?」

「……あぁそうだね。これ程までに頼もしい言葉はないよ」


 先程までの悲しそうな顔を見せていた先輩は嬉しそうに笑うと、俺から視線を離して空に浮かぶ月を眺め始める。


「先輩が自分を嫌いでも、俺は結構先輩のこと好きですよ」

「そ、そうか……ありがとう。ちなみにさっきのは誰かの受け売りかい?」

「いえ、俺の持論です」


 そうかい、と先輩は静かに笑みを溢すと、


「ご主人様?」

「またその呼び方……なんですか?」

「私のことはもう先輩なんて言わないでくれ」

「それまたなんで?」

「私は他の生徒からもそう言われているだろう? ……だから君には特別な呼び方をして欲しいんだよ」


 いつにも増して真剣な表情をしている先輩。

 じゃあ雌豚で、と一瞬悪ノリしようと思ったが、ギャルゲー脳が言っている。これはふざけちゃいけないヤツだと。


「……天」

「ん……ありがとう透」


 ゆっくりと天が俺に近づいてくると、俺の目の前で止まる。

 お互いの顔がすぐ側にある状況で天はソッと目を閉じて唇を____




「あれ雨上じゃない? こんな時間にこんな場所で何してんのよ?」




 声をかけられた瞬間、それは瞬きをして再度視界を確認して脳が状況を把握するまでの僅かな時に俺の身体は動いた。


「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」


 大声を上げ目の前にいた天の胸に両手を置き____勢いよく茂みへと吹っ飛ばした。


 その間、僅か一秒にも満たない。


「おおおおおお、おう杏理どうしたこんな時間に!?」

「アンタこそどうしたのよ? そんな奇声あげて」

「へ!? お、あ、あぁ……発声練習かなぁ?」

「こんな夜に? 頭おかしいんじゃない?」



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