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親友ポジションに憧れる俺は彼女達に狙われている  作者: 瑞柿けろ
第二章 デート&乱華編

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第47話 再会を求むL




「さあ入ってちょうだい」

「お邪魔します」


 杏理に誘われて家へと入る。

 デパートから大体十五分くらいの場所にある一軒家、どうやらそこが杏理の家らしい。

 正直なところ、俺の実家に割と近かったが、これはわざわざ言わなくて良いだろう。


「じゃあご飯作っちゃうから、テレビでも見て待っていてもらって良いかしら?」

「え? あーいや俺も手伝うよ」

「良いのよ。実は朝にある程度準備してたの。だから大人しく待ってなさい」

「そこまで言うなら分かったよ」


 荷物は適当に置いといて、と言われたので高級感のあるソファの上へ、邪魔にならないよう隅に置くと、


「杏理これもしかして”アイランドキッチン”ってやつか!? 凄い俺無茶苦茶憧れてんだよ!」

「え、なによそれなんか凄いものなの? ごめんなさい分からないわ。そういうの気にせず買ったから」

「買った? 何を?」

「家をよ」

「誰が」

「私が」


 目の前の光景、さらには杏理の発言に驚いてしまう。


 マ、マジですか……。なかなか立派で良い家に見えますけどいくらなんですかねぇ?

 心の中ですら震え声になってしまうが、杏理はそんな俺の引き攣った表情から何かを理解したのか、


「まあそれもこれから話すことに関係してるのよ」


 少し悲しげな表情で言うと、俺の返事を聞くことなくキッチンへと行きゆっくり語り出した。


「私ね”殺し屋”だったのよ。その界隈ならかなり名の知れたね。こう見えてかなり稼いでんのよ」

「そうなんだ」


 話しながらだが案外手際よく調理を始める杏理。料理を始めてまだそんな経ってないなんて驚き程に凄い手際の良さだ。

 というかもう殺し屋程度じゃ動じないな。さすが俺……。


「驚かないわね」

「え、まぁ色々あんだよ」

「日本だと実はメジャーな仕事とかなの? 殺し屋って」

「メジャーであってたまるか」


 俺が慣れ過ぎただけで一般人が聞いたら精神科を紹介されるパターンだからな? 


「でも驚かなくて当然かも、あの反応から見て真白の正体も知ってたのよね」

「あ、それさっきも思ったんだけどさ、杏理は真白の正体知ってんだな」

「そりゃ知ってるわよ。初め会った時に色々調べたの」


 同業者みたいだったからね、とテキパキ手を動かしながら応える。


「何作ってるか聞いていいか?」

「ふふっ! 内緒よ内緒! 楽しみに待ってなさい!」


 悪戯っ子みたいに笑みを溢す杏理はそのまま話を続けた。因みに可愛い。


「昔、事故で私だけ生き残ってね。その後に引き取られた所で殺し屋として育てられたの。小さい頃の私には生きる事で精一杯でそれしか出来ることが分からなかったのよ」

「なるほど……そういえばさっき『殺し屋だった』って過去形だったけど辞めたのか?」

「よく聞いてたわね。辞めたって言うより逃げて来たってところかしら? 隙を見てね。昔の知り合いは私のコードネームしか知らないから意外と簡単だったわよ逃げるの」

「コードネーム?」


 一体どんな? と聞き返す。


「名前から来てるんだけどね? 私の本当の名前は”杏理・L・フィーリス”って言うの」

「L?」

Light(ライト)の”L”。だからコードネームも”L”にしてたの。それしか覚えてないフリしてね」

「おー……杏理も色々あったんだな……お疲れ」


 ありがと、と言葉を返す杏理に疑問を聞いてみる。


「てかなんで日本に来たんだ? 他にも来る場所あったんじゃないか?」


 そんな俺の問いに杏理は普通に応えた。


「小さい頃に国で会って仲良くなった男の子にまた会いたくて来たの」

「へーその子がつまり日本人だったから日本に来た訳か。会えたのか?」

「いいえ。考えてみれば名前も知らないし、住んでる場所も知らないから会えてないわ」

「あら、それは残念だな」


 子供の頃の知り合いに再会したいという気持ちは痛い程分かる。杏理は結構あっさり話しているが寂しさは絶対あるだろう。

 

「早く会えると良いな」

「……そうね、早く再開したいわね」

「なんで睨まれてんの俺?」

「気のせいよ。ほら出来たから食べましょ」


 待ってました、と睨まれたのもあっさり忘れて、杏理の手作り料理を食べることにした。



「待たせたわね」

「いや杏理の話も聞けたし有意義な時間だったぞ」

「……別に嬉しくないし」

「お、そうか」


 とにかく食べましょ、とテーブルに料理が置かれる。俺はそれを見て目を見開いた。


 味の染み込んだ茶色い姿、中に包まれたお米でふっくら丸みを持ったフォルムは食欲をとても刺激してくる。俺の大好きな食べ物____


「これ……いなり寿司か?」

「そ、そうだけど」

「作ってくれたのか? 俺の好物」

「別に偶々食べたい気分だったから用意しただけなんだから! アンタのためじゃないんだから!」

「そ、そうなのか。でも確か杏理に俺がいなり寿司好きって話したの今日が初めてだしな。そんな都合良く準備出来る訳ないしな」

「……さ、早く食べましょう」


 冷めちゃうわよ、とさり気なく話を逸らされたが、確かに冷めたら困るから早いとこ食べることにした。


「いただきます」


 箸を取りいなり寿司を持ち上げる。持っただけで分かる程の柔らかさについ顔がニヤけてしまう。


「これは流石に気分が高揚します」

「いいからさっさと食べなさい」

「あ、はい」


 言われた通り口へと運ぶ。

 最初に感じたのは味の染み込んだ揚げの旨味だ。ジューシーで程良い濃さに目を閉じ感覚を研ぎ澄ませる。中の酢飯は胡麻が含まれ、香ばしさと酢飯の酸味が見事な状態へとこのいなり寿司を昇華していた。


 そして静かに一雫の涙を溢す。


「美味い……」

「なんで泣いてんのよ……」

「悪い……あまりにも美味し過ぎてな」

「そ、そう? な、なら良かったわ」

「一生俺にいなり寿司を作って欲しい」

「な、な、な!? 何言ってんのよアンタ!?」


 なんでそんな動揺しているのだろう? おかしな事でも言っただろうか?


「あ、あ、ああ、アンタぁぁぁ!!!」


 杏理が真っ赤になって目を回し何やら叫んでいる。

 何故そこまで? と思ったが後で自分が言ったことを考えて頭を抱えることになった。




 これ……まるでプロポーズみたいじゃん……!!




 あまりにも美味し過ぎるいなり寿司のせいで、俺はとんでもない事を口走ってしまったようだ。


 まぁなんとかなるだろ。知らんけど



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