第38話 待ち合わせとか恋人らしい
翌日、俺は昨日という長く険しい一日を無事に生き延びる事に成功した訳だが、本当に疲れた……普通の人間じゃ到底経験出来ないほどに濃厚な一日だった気がするし、いや間違いなくそう言い切れる。
そんな色々大変なことがあった翌日だというのに今日はバリバリ登校日なわけだ。本当に笑えない話過ぎるぞおい。さて、
「で? お前はいつまで一緒にいる気なんだよ」
目の前を歩く姫に声をかける。
「んー? じゃから言うたじゃろうが儂は暇なのじゃ。しばらくは透の側でお主のことを見守ることになるのじゃ」
「うーわ……邪魔過ぎる」
「……いい加減神罰でもくれてやろうかのう……」
何が神罰だ。只今絶賛神罰発動中みたいなもんだろうが。
「何を言うのじゃこんなにラブリーチャーミーな儂とおるというのに」
「ラブリーチャーミーとか死語過ぎて今時モケモンでも聞かねーわ」
「モケモン? なんじゃそれ?」
「”モケットモンスターズ”縮めて”モケモン”ってやつでな。無茶苦茶種類豊富なモケモンってモンスターを育成して戦わせるアニメ化やゲームにもなってるんだよ」
「ほぇー面白そうじゃの」
「因みに俺は”ビャクフーン”と”ビャンギラス”永遠推しだ」
「え、え? なんじゃそれは?」
あ、いやなんでもないこっちの話。
つい熱い想いが暴走しそうになってしまった。落ち着け俺ステイステイ。
「気になるなら家にゲームがあるからやってみるか? 暇つぶしになると思うぞ」
「むむむ!? 良いのう面白そうじゃ是非やってみる事としようかの」
「おうオススメのゲームだぞ」
そう応えお互いに歩き出す。向かう場所はもちろん学校……ではない。
濃厚な一日で忘れそうになってしまうが、昨日ついた嘘の結果乱華と登下校をする事になった俺は現在神社へ向かっていた。
____って! そうじゃない!
「話が脱線したけど俺が聞きたいのはそこじゃないんだよ。姫に聞きたいことがあるんだが」
「どうしたのじゃいったい?」
「いや姫が神様なのも良くわかったし、心の性別を変えたのも姫なんだよな?」
「そうじゃの。儂が願いを叶えたからの」
「なるほど……じゃあ俺の願いを叶えてもらう事はできるか?」
「因みになんと願う気じゃ?」
「”姫邪魔だから帰って欲しい”って」
「あー駄目じゃな。その願いは叶えられぬのじゃ」
即答かよ。
「儂だって何でもかんでも願いを叶えるわけではない。強い想いや、助けを求める声、そして儂の気分で叶えるのじゃ」
「あれ気のせいかな? 今なんか最終的に個人的な理由があったような?」
「気のせいじゃろ」
「気のせいなわけあるかい」
聞き逃すわけないだろう。バッチリ聞こえたぞおい。
「まぁあれじゃ、透お主の願いをしばらく無理なのじゃ」
何故? そうやって聞き返そうとした時、姫は俺の言葉を予測したかのように続けた。
「願いは既に叶えておるからの」
一瞬思考が止まる。何を言われたのか分からず反応が遅れてしまったが慌てて聞き返す。
「え、どう言うことだよ」
「ん? 言ってる意味が分からぬのか?」
ならばもっと分かりやすく教えてやるのじゃ、とハッキリと言い放った。
「透は昔神社にやってきた。その時儂はお主の願いを叶えたのじゃよ」
「はぁ? それ本当か?」
「お主は覚えておらぬようじゃが一度儂とも会っておるよ。昨日は驚いたぞ昔会った時より立派に成長しておったから気付かなかったのじゃ」
なんでもお前はそういう大事なことを小出しにすんだよ。
◆
「おはよう乱華」
「おう、おはよ透」
神社に向かう石階段の下までやって来ると既に乱華はその場にいた。その姿にこう嘘ではあるが彼女と待ち合わせをするという事に喜びを覚えてしまう。
「あれ、そういえば俺何時頃迎えに行くか言ってたっけ?」
「いいや言ってねぇぞ」
「じゃああれか? たまたま丁度良いタイミングでここで今あった的な感じ?」
「そんな偶然あるわけねぇだろ」
呆れ顔で応える乱華。そりゃそうだそんな都合の良い事がそうそう起こってたまるか。俺の好きなギャルゲーじゃあるまえしな。
じゃあいつから待ってくれてたんだろうか? 軽く聞いてみると、
「三十分くらい……」
「ま、マジか……悪かった乱華待たせちゃって」
「いいんだよ。私が好きで待ってただけだ」
「ん? 好きで待ってくれてたのか?」
「……うっせぇ死ね」
どうして罵倒されたのやら……。
何が何だか分からないがとりあえずスマホを内ポケットから取り出して乱華の方に近付ける。
「こういう事が無いように連絡先交換しないか? 一応付き合ってるんだしさ」
「一応ってなんだよ一応って、透お前もしかしてそのチョーカー外せるとでも思ってんじゃねぇだろうな?」
「あー言い方が悪かっただけだよ気にしないでくれ。それよりどうなんだ? 連絡先。嫌ならいいけど」
咄嗟に出た言葉を誤魔化すように話を変えてスマホを見せ再度確認をとる。
すると乱華はそっぽを向きながら頬を赤く染めて制服のポケットからスマホを取り出した。
「別に嫌なんて言ってねぇだろ。ほらよ」
スマホに表示されたコードを読み取り連絡用アプリ内の友達項目に乱華が追加される。
連絡相手が少なかった俺のアプリに少しずつ友達が増えていく。その感じがたまらなく嬉しい。
ふと気付いたことを聞いてみる事にした。
「天先輩はいないのか?」
「あ? お姉様は今日は部活の朝練と生徒会の仕事で先に行ってんだよ」
「部活? そうかそういえば剣道部の主将だっけか」
果たしてあの変態に主将が務まるのだろうか。いや今まで上手くやっていただろうし杞憂だろう。
「ん?」
視線を感じその方向に目を向けると、
「……」
物凄い眼光で乱華が俺を睨んでいた。
「お前まさか私に託けて本当はお姉様に会いたいだけとかじゃねぇだろうなぁ?」
「違う違う。単純にいつも二人でセットだと思ってたから不思議に思っただけだよ」
「……ふん。どうだか」
疑いの眼差しがキツいけれど、伝えておきたいことを言うとしよう。
「そういえば乱華に伝えておきたい事があったんだよ」
奇遇だな実は私もなんだ、と乱華は言葉を返す。そしてお互いに譲る気のない俺達は同時に発し声を重ねることとなった。
「実は私、ストーカー被害に遭っているんだよ」
「ストーカー被害に遭ってることにしておいてくれ!」
静かに流れる静寂、二人共言っていることが少しの間理解出来ずに沈黙が続き結果ようやく出たのが、
「「はぁ?」」
こんな情けない言葉だった。
~おまけ~
「あれ、儂なんか空気な気がするのじゃ、寂しいのぉ……寂しくて死ぬかもしれぬ____あ、儂不滅じゃったわ」
めんどくさいなこの神様……。




