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親友ポジションに憧れる俺は彼女達に狙われている  作者: 瑞柿けろ
第一章 ここから始まる親友ポジション

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第37話 チョーカー=首輪




「どうしたの透なんかあったの?」

「いや別に!? 気にせんといて!?」

「なんで関西弁?」


 そりゃ取り乱すだろう。なんていったって目の前の重度のメンヘラが包丁を隠し持っているんだ。冷静じゃいられない。

 何をしているのかと姫の様子を見てみるが、


「良いのぉ良いのぉ! やはり儂の目に狂いはなかった! 透と一緒に居れば退屈せずにすみそうじゃ!」


 この危機的状況でお前は何を言っているんだ? 心がいなければ文句の一つを言ってやったものを、こんな場面でいきなり姫に話しかけたら何もない虚空に向かって話しかけた変な奴みたいになるじゃないか……。

 嬉しそうに笑う姫に呆れため息を溢すと心はそれに対して反応した。


「なに? まだ何も聞いてないのになんでため息つくの? めんどくさいのかな僕と話すの」

「いやそういうわけじゃないぞ!? ただちょっと考え事しててな?」

「ふーん僕と話してるのに他のこと考えてるんだ? ……面白いね透って」

「あ、いや……これは言葉の絢ってやつでな?」


 即座に訂正するが心の機嫌はみるみる悪くなっていく。

 というか姫さん? 声を殺して腹抱えて笑うの辞めてくれない?


「まぁ良いよとりあえずは……それで僕が聞きたい事なんだけどさ____」


 そして心は真っ黒な瞳でこちらを見つめ、瞬きもせず言い放った。


「乱華ちゃんと付き合い始めたって本当なの?」

「____ッ!」

「嘘とかじゃなくて?」

「……」

「怒ってないから何か言ってくれないかな? ねぇなんで黙ってるの?」


 後ろにナイフ隠してる時点で怒ってないとか嘘だろ。選択肢間違えたら即終了じゃないか。

 反応に悩んでいると姫は俺に後ろから抱きつき耳元でソッと囁いた。


「どうするのじゃ? 間違えたら死ぞ♡ ほーれがんばれ♡ がんばれ♡」

「……」


 もうなんか姫自身は楽しそうにしているから言わないようにしようと思うが、いくら子供とはいえ耳元で優しくしかも色っぽく言われると何やら性癖が歪みそうである。

 

「ねぇ透聞いてるの?」


 あぁ聞いてるよ? と苛立つ心の問いに応えた。


「というかずっと言いたかったんだけど透“それ”ってなんなの? ……その“チョーカー”」

「これか? これは爆……」

「バク?」

「……あーいやえーと……」


 どうしたものか、正直に言う選択肢は存在しない。正直に言ったら乱華に対して心が何をするか分かったもんじゃないし、バレて乱華に起爆ボタンを押されたら洒落にならないからだ。

 天先輩に嘘をついた以上他の誰かに本当のことを言ってバレた時が恐ろし過ぎる。だから俺は嘘を突き通す。


「これは乱華から貰ったんだよ。プレゼントにって」

「ふーんそうなんだ……ねぇそれ外してよ」

「え、どうしてだよ」

「気にいらないから」


 そ、即答っすか……、更に心は続ける。


「何チョーカーってまるで首輪じゃない。乱華ちゃん(アイツ)透のこと飼ってるつもりなのかよ……虫唾が走るわ。大体透も透だぞ! なんで満更でもない感じなんだよ!! 目障りなんだよ今すぐ外せよぉぉぉ!!!」

「落ち着け心包丁を向けるな!!? あと口調口調!」

「透を殺して僕も死ぬ!!!」

「待て待て待て待て!!?」

「おーーー!? さっきまでの笑みは何処に行ったのじゃ! 無茶苦茶怒っておるではないか! 良いぞーもっとやるのじゃー!!」


 こんの糞神様が!! いつかしばく絶対しばく!! だけれど今優先するのはこっちだ!!

 

「心まずは話を聞いてくれ!! 俺達実は付き合ってないんだ! 付き合ってるフリをしてるだけなんだよ!」

「何を今更そんな嘘を!!」

「嘘じゃない嘘じゃない!! 俺の話を聞いてくれ!!」


 と言いつつも嘘しかついてないのだが、一先ず怒りを少しでも抑える為にも天先輩に話した嘘の内容を俺はそのまま心に伝えるのだった。

 そんな様子を見て露骨に態度の悪くなる姫、


「なんじゃぁつまらんの……。もっとドロドロした展開を待っておったのに……ちぇ」


 昼ドラでも見てろボケ。

 てか姫さん? 一年以内に死ぬことになるって言ってたけど一日も経たずに死にそうになったぞおい!? 勘弁してくれませんかね!?







「んー……なるほどねぇ? つまり透はそのストーカー対策に乱華ちゃんと付き合うフリをしてるってことなんだ?」

「そういう事だ。事情を知ったからには無視できないしな」

「……透って本当に優しいよね」

「別に優しくないぞ? もし知り合いの後輩に何かあったら知ってた側として目覚めが悪いだけだよ」


 そっか、と静かに応える心に俺は刺激しないよう丁寧に告げる。


「ところで心さんや」

「なに?」

「いやさ、そろそろ包丁を下ろしてくれないか?」

「……」

 

 今もなお包丁を向け続ける心に提案したのだが、一瞬だけ考える素振りを見せて即座に呟いた。


「駄目」

「なぜに!?」

「だって理由は分かるけど、今そのチョーカー着けてる必要ないよね。僕そのチョーカーが透を”自分の物”みたいに表現してる感じがあって嫌いなんだよね」

「あーまぁそうだよな」

「うん。だって透は僕のだもん」

「おい心さん? 今”自分の物”みたいな表現どころか明言したよね? ね?」


 なんか文句あるの? と瞬きもせずに包丁をコチラに向ける心に『あ、無いっす』と俺は呆気なく敗北を認める。

 駄目だ今の心に言葉じゃ勝てない。とはいえチョーカーを外すわけにはいかないし……なら、


「このチョーカー気に入っててさカッコいいなってさ、意外と似合うだろ?」

「全然似合わないよ? ダサいしキモいしカッコ悪いよ?」

「あー待って? それ全部男子高校生には”死”の言葉だからね? 死にそうになるから勘弁して? メンタルやられて不登校になりそうだから」

「そうなったら透の事は僕が養うね♡」

「そういう問題じゃねぇよ」


 この親友愛が重いわ。知ってたけど……。


「とりあえず乱華の事は任せてくれ。アイツも心や皆に言わないであまり仲良くない俺に言ったんだ。心配かけたくなかったんだろ」

「……そんなの気にしなくて良いのに」

「良くない」


 唇を尖らせ拗ねる心だが俺はハッキリ告げる。


「お前も今はただの可愛い女子なんだからな? 周りの心配も気にしてやれ」

「え、あ、うん。そっか僕可愛いのか……。そっかそっか……」


 ゆっくりと包丁をテーブルに置き、『ちょっと顔洗ってくる』と言って顔を真っ赤にして去って行く心を見て俺は確信した。


「あの小僧とんでもなくチョロいの」


 あ、おい俺の言おうとした台詞なのに……あれちょっと待って?


「姫お前そういえばさっきから心のことを”小僧”って言ってるけどお前もしかして……」

「おぉようやく気付いたようじゃな!! お主の思っておる通り小僧の性別を変えたのは儂じゃからの! 知ってて当然というわけじゃ____」

「お前が元凶かぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!? 儂の頭がぁぁぁぁ!!! 頭が割れるのじゃぁぁぁぁ!!!」


 今までの恨みも含めて俺のアイアンクローが露音姫の頭をガッチリ掴む。

 

 もうこれで終わってもいい。だからありったけを……心が戻って来るまでに終わらせてやる。今までの恨みを込めて俺の本気をぶつけてやるわこら。


 神様だからってやって良い事と悪いことがあるわ。



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