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親友ポジションに憧れる俺は彼女達に狙われている  作者: 瑞柿けろ
第一章 ここから始まる親友ポジション

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第31話 いきなりお家デート!? ベッドの下からハイジョージ




 乱華との放課後デートで立ち寄った商店街を離れ、雑談をしながら帰っていたのだが、乱華の反応は少しずつ空返事になって行き、彼女はいつの間にやら下を向いて俯きながら歩いていた。

 少し気まずくはあったが、とりあえずまずは乱華を家まで送ろうと、しばらく道を進んで神社前の階段まで辿り着いた。


「おい乱華」

「……んだよ」

「もう着いたぞ」

「え、あぁ、そうかもう着いたんだな」

「おう」

「……」

「帰らないのか?」


 声を掛けたのだが何故か反応が悪い。目的の場所に着いたというのに、乱華は動こうとしなかった。

 仕方がない、俺は自分もいい加減帰るとしようと乱華に背を向けた。そんな時、


「ま、待てよ……透」

「ん?」


 立ち去ろうとする俺の背後から声が掛かり振り返る。その正体はもちろんのこと背後の乱華しかいない。

 どうしたのか、と待っていると乱華はいまにも消えそうな程の小さな声で後に続く言葉を言い放った。


「よ、良かったら……(うち)寄っていけよ……。お、お茶くらい出してやるから……」


 勇気を振り絞って言ったのか小さな身体がプルプル震えている。家まで送ったお礼というやつだろう。とりあえずとはいえ彼女に気を遣わせてしまうとは情けないな。

 ここは俺もハッキリ言った方が良いなと丁寧にそれでいて簡潔に応えた。


「ごめんな。これから家の近くのスーパーで卵と豆腐と牛乳のセールなんだ。また今度誘ってくれ」

「え、た、卵? 豆腐? ぎゅ、牛乳……?」

「じゃあ乱華また明日学校でな」

「え……」


 乱華が呆けているが今はそんなの気にしていられない。俺にはセール品が待っている。

 最近色々なものが値上がりしていく中、家事をやる者としては安い物は逃さず買っておきたいのだ。

 

 待っててくれよ!! “サイズ色々卵 百二十八円 お一人様二点まで”!!!


 今日の晩御飯はオムライスかな! そうしてテンション爆上がり状況の俺に向かって殺意の籠った低い声が響く。


「おい」


 あまりの威圧感に身体の動きが止まり、首だけをゆっくりと声の発生源である背後に動かした。

 そこには先程の可愛らしい態度は何処へ行ったのか鬼の様に怒り、鋭い眼光でこちらを睨みつける乱華様が立っている。あ、ヤバいこれは本当に怒ってるわ……。


「ど、どうしたのかな乱華様……」

「なあ透……私は今機嫌が悪い。途轍もなく悪い。間違って起爆装置(スイッチ)を押されたくなかったら言いたいこと分かるよな?」

「な、何をすれば良いのでしょうか……?」


 決まってんだろ、と俺の質問に乱華様はハッキリと答えた。


うちに来い。拒否権はねぇからな」

「……分かりました」


 さようなら卵……次のセールまで俺を待っていてくれ……。







「広っ!!?」

「そんな驚く程か?」

「いやいや驚くわ!」


 階段を上がり神社が目の前に現れる。大きな神社ではないが鳥居が立ち綺麗に敷かれた石畳に砂利、そして一際目立つ立派な神社が建っていた。

 正直神社の事は詳しくは分からないが綺麗な状態から見て、とても手入れが行き届いているのが分かる。


「綺麗な場所だな」

「そうか? 私はいつも見てるからよく分からないけど、まあでもいつも掃除してる身としてはそう言われるのは悪い気はしないな」

「いやほんとキレイだよ。俺この町に住んでても遠かったからあまりこの神社来たことなかったんだよ。でも良いなここ雰囲気良くて」

「……じゃあいつでも来いよ。お茶くらいなら出してやる」

「おうそれは嬉しい! ありがとな乱華!」


 ったく、と乱華はため息を漏らすと俺の手を引き言った。


「私の家は神社から少し離れた場所にあんだよ。着いてこい」

「いやわざわざ手を繋がなくても良いのに、お前俺のこと嫌いだろうに」

「……死ね」

「えぇ……唐突過ぎないか……」


 いいから来い、と連れられて神社の敷地内を少し歩くとこれもまた立派な家が建っていた。玄関の扉を開け乱華から一声、


「まあ入れ」

「お、お邪魔します」


 景ちゃんの住むタワーマンションも立派なものだったが、東鐘家もかなり立派な建物だ。

 家に入り広い玄関で靴を脱ぐと乱華の部屋へ案内され、長い廊下を二人で乱華が先行し歩く。


「ご両親はいないのか?」


 俺は思った素朴な疑問をそのまま問いかけ、乱華はそれに応えた。


「父様と母様はこの時間神社の方にいんだよ。あっちも色々忙しいからな」

「なるほど」

「あぁ、お、ほらここが私の部屋だ。まあ入れ」


 乱華が襖を開ける。そこに広がる景色を見て俺は素直に思ったのだ。


「なにこの可愛らしい部屋……」

「う、うるせぇよ! ジロジロ見てねぇで黙って座れ。座布団出してやっから」


 部屋は和室で六〜七畳くらいの広めの部屋なのだが、何が可愛いって周りにいっぱい飾られているぬいぐるみから一際女子っぽさが伝わってきて思わず笑みが溢れる。


「……なに笑ってんだよ」

「え、いや!? 笑ってない! 断じて笑ってないぞ!?」

「どうだかな……ほらよ座布団出したからここに座って待ってろ。ステイだステイ」

「ステイって犬じゃないんだから……」

「私が犬って言ったら犬になれ。ほら首がまだあって欲しいなら分かるよな? お茶入れてくるから待ってろよ? ほら返事」

「……ワン」


 よし良い子だ、そう言って微笑むと乱華は自身の部屋を後にし、俺一人が後輩の女の子の部屋に残された。いやそれにしても、


「……落ち着かない」


 散々心や真白、景ちゃんなど色々な女子と過ごしたりしてきたが何故か妙な緊張感がある。

 待ってろと言われたが暇を紛わす為に俺は立ち上がり部屋のぬいぐるみを眺めことにした。

 熊や兎、犬や猫と他にも様々なぬいぐるみが飾られており、そこまで興味がない俺でも可愛いと思える。


「ほんと種類豊富だな____ってあれ?」


 ぬいぐるみを眺めているとなにやら気になる物、それは古びた小さな兎のぬいぐるみであった。


「なんだろうこの兎……」


 見覚えがあるような? 微かな既視感を感じるが全く思い出せない。どこかで見た記憶があるのだが……


「駄目だ。全く分からん」

「それが気になるのかい?」

「ん? え、えぇなんか見覚えがあるようなないような? って感じなんですけど」

「そのぬいぐるみは乱華が一番大事にしてるやつなんだよ。……そういえば小さい頃に気が付いたら乱華が待ってた気がするような? いつ買ったやつなのか知らないなぁ」

「へーそうなんで____へ?」


 突如聞こえ声と気にもせず会話をしていたが、よくよく考えたらおかしい。ここは乱華の部屋なのだがさっきの声は明らかに違うし、辺りを見渡すが何処にもいない。


「え……もしかして気のせいか……?」


 そう思った時だった。


「どこを見ているんだ! 気のせいなわけないだろう!」


 またしても突如聞こえる声だが、今度はさっきと違いしっかり場所の把握に成功した。そう、それは俺の足元____


「やあご主人様!! まさか家に来てくれるとは私に逢いに来てくれたのかい!!? ご主人様は飴と鞭の使い方が上手いなぁ!!」


 乱華の部屋のベッドの下から顔だけ出して俺を見上げる変態雌豚先輩。


「お前がなにしてんだボケェェーーー!! 心臓に悪いだろうがぁぁぁーーー!!!」

「ハーイ……ジョージ……」

「喧しいわ!」


 俺は容赦もなく顔を踏んづけた。それは思い切りである。


 ……夜じゃなくてよかったわ。夜だったらガチめのホラーじゃねぇか……。



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