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親友ポジションに憧れる俺は彼女達に狙われている  作者: 瑞柿けろ
第一章 ここから始まる親友ポジション

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第29話 ワイルド乱華様はみんなの逆鱗に触れる




「はぁ……」


 思わずため息が溢れた。

 乱華様と別れ昇降口を出て、もうかれこれかなりの回数ため息が出ている気がする。いや今は様を付けなくていいのか……。

 首のチョーカーに触れてみると、別れる前に乱華ちゃんに言われた事が思い出される。


『これで私の命令には絶対服従だから、爆破の条件はさっきも言ったけど私の機嫌を損ねたら起爆するからな? お姉様に十秒以上触れても爆破するぞ。それに当たり前だけど無理矢理外そうとしてもアウトだ。言ってる意味分かるよな? じゃあ早速の命令だけど____』


 そして乱華ちゃんは満面の笑みで俺に言い放ったのだ。


『私と付き合えよな先輩♡』

『は、はい……』


 こうして俺に強制的に恋人ができたわけだ。


「はぁ……」


 再び溢れるため息。一体何回目だろうだろう情けない限りである。

 思えばあのシスコン後輩は尋常じゃない程あの雌豚先輩のことが好きなのは分かったが、俺の事をどうしてここまで嫌いなのかその理由が分からない。

 だが恐らく付き合うことになったのは俺を自分の姉に近寄らせないようにしたいからだろう。本当にあのシスコンには頭を抱えてしまう。


 これからどうしよう、そんなことを考えているといつの間にやら校門前まで来ており、俺はその場の光景に再度頭を抱えることとなった。


「なんでアンタがいるわけ?」


 俺を待っていたのか校門右側の柱の前に立って心が立っていた。そしてその反対側の柱には、


「なにか? 私は別に先輩を待ってるだけですよ。貴女こそなんですか? 目障りなんでさっさと帰ってくれませんか?」

「僕も透を待ってんだよ。帰る約束してんだよアンタこそ帰れよ」

「あ?」

「あ?」


 ちょっとやだこの二人どんだけ仲悪いの?

 決して近づくことはないが二人は校門の左右の柱から睨み合い罵倒し合っていた。

 やばい。この間に入るのは精神衛生上本当によろしくない。正直気付かれずに帰りたいのだが、


「「あ、透!!(あ、先輩!!)」」


 悲報、一瞬でバレました。


「透ー! もー待ってたんだからね! さ、早く帰ろ!」

「先輩予定は終わったんですか? 一緒に帰るために待ってたんですよ! 私は先輩のこと大好きですから!」

「あ? 俺の方が好きだから、余計なこと言ってんじゃねえよ。嘘臭いんだよ」

「あ? 口調戻ってますよ男女先輩? あ、ごめんなさいそっちが素でしたよね?」


 睨み合う二人は変わらず罵倒し続けている。俺はため息を溢しそれを止めようとした。のだが、


「もー透さんなんで先に帰っちゃうんですかー?」

「げっ……」


 突然背後から聞こえてくる声に俺は目を見開いた。その声の主は先程別れたばかりのあの爆弾系女子……。


「乱華さ……」

「おい」


 咄嗟に名前を呼ぼうとした時、乱華様は俺の耳元に顔を寄せて二人に聞こえない様に喋り出した。


「今二人がいる状態で様呼びすんじゃねぇよ。良いか? 私達は付き合ってんだからな? 頭が着脱可能になりたくなかったら私の話に合わせろ。分かったら返事」

「か、畏まりました乱華様……」

「あ?」

「ら、乱華ちゃん……」

「もー! 透さん二人の前で”乱華ちゃん”なんて恥ずかしいじゃないですかー! でも私透さんのそんなところが好きなんですけどね!」

「あははーそーすねー」


 もうアンタのその猫被り天才的だろ。逆に尊敬するわ。

 ただ乱華ちゃんこのタイミングでこんな事したら____


「……ねぇ透? なんか乱ちゃんと距離近くない? 仲良過ぎじゃない? どういうことなの?」


 ほら心がヤンデレモードになっちゃった。もう目が黒よりもより黒いよ。心瞬きしよ? ドライアイになっちゃうぞ?


「先輩どういうことですか? なんで用事済ませただけでそんな事になっているんですか? 答えてください」


 まあ待て落ち着け景ちゃん。無意識に力入れ過ぎてその握ってる校門の柱がひび割れてるぞ? どんだけ腕力あんの? 指が岩にめり込んでるけどゴリラか?

 あ、絶対これあれだ。”ゴリラ”はNGワードな気がする言わないようにしよう。


 そんな変な決意をしていると心が珍しく景ちゃんに問いかけた。


「用事って……アンタは透の用事が何だったのか知ってるの?」

「え、知ってますけど? 幼馴染なのに貴女は知らないんですか?」

「ッ!!」


 景ちゃん待ってそれ言っちゃ!? 止めようとしたがもう遅かった。景ちゃんはそのまま言葉を続ける。


「先輩ラブレター貰ってその返事をしに行ってたんですよ」

「はぁ??」


 神は死んだ。ついでに俺も死ぬかもしれない。そしてさらに追い打ちをかける様に悲劇は続く。


「あれー? みんなどうしたのこんなところに集まって」

「雨上もいるんだ珍しいじゃない」

「ん? このメンバーで集まるのは久しぶりだね。本当だ海野君にご主……雨上君もいるとは滅多にある事じゃないね」


 真白に続いて杏理、雌豚先輩達が続々と校舎を離れ校門へとやって来る。

 そのせいで後ろに下がることも出来ず、かといって前を突っ切り強行突破する事もできない。怪力景ちゃんに勝てるとは到底思えないのだ。


「ねぇラブレターってどういう事なの透」

「あーいやその……」


 心は声を荒げ俺を問い詰める。その声は背後にいる三人にもハッキリと聞き取れる声量だ。

 やめてくれ心そんな大きな声で言わないでくれ。

 するとその心の言葉に景ちゃんが答えた。


「まあまあ落ち着いてください。それに先輩は断りに行ったんですよ? そんな攻めたら先輩が可哀想ですよ」

「そ、そうなんだ。ごめんね透……」

「あーいや……」


 心と景ちゃんの顔を直視できずに俺は目を逸らし言葉が詰まってしまった。情けない。

 いつも助けてくれた景ちゃんに説明できない自分に腹が立ち下唇を噛み締める。そして自分の口から言えない俺を見兼ねて、乱華ちゃんは面白そうに笑いながら俺の前に立ち言い放った。


「初めましてかな海野さん。私がそのラブレターを送った東鐘 乱華です。どうも」

「……どうも、ていうか振られた貴女がなんでここに……」

「そして____」




「本日から透さんと付き合うことになりましたので、私の彼氏に気安く近寄らないで貰って良いですか?」




 乱華ちゃんの言葉に誰も応えない。校庭が夕陽に照らされ何処か切ない気持ちが押し寄せる中でとても静かな時間が流れる。

 俺はというとチョーカーの恐怖もあるが、誰の表情も見る事が出来ずに俯いてしまい、


『ごめん景ちゃん……』


 口に出さず声を押し殺して謝ることしか出来なかった。言葉で発することが出来ないのが本当に悔しくてしょうがなかった。


「じゃあ透さん帰りましょう! あ、もう暗くなっちゃうから家まで送って下さい!」

「あ、あぁ分かった。……行こうか」


 そして俺と乱華ちゃんは歩きだし、乱華ちゃんは追い打ちをかけるように俺の腕に抱きついてきた。もう勘弁してほしい。

 俺にはもう乱華ちゃんが何をしたいのか分からなかった。


「言うこと聞いて偉いな透さん」

「あ、ありがとう乱華様……」


 皆から離れ校門から出た直後乱華ちゃんは語り出す。そうだ散々言われたじゃないかなんで忘れていたのだろう。何をしたいか分からないとかじゃなかった。


「これでお前の味方はいなくなったなぁ! あぁ最高の気分だよ本当にさぁ!! これからは私がお前の相手をしてやるから喜べよ透さん♡」


 そうだ、彼女は俺のことが大嫌いなんだった。




        ~おまけ~




 そこから数分後に固まっていた彼女達は声を揃えて発し、


「「「「「殺す……」」」」」


 この場、この時初めて彼女達の意見が揃った瞬間であった。



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