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親友ポジションに憧れる俺は彼女達に狙われている  作者: 瑞柿けろ
第一章 ここから始まる親友ポジション
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第28話 乱華様ーー!




「え、は? 好き? 誰が?」

「”私”が”先輩”をです……」


 あまりのことに戸惑った俺はつい当たり前のことを聞き返してしまう。今この屋上に俺達以外居ないというのにだ。人生初の告白だからとはいえ実に情けない反応である。だがそれ程までに驚く状況なのだ。

 

「こう言っちゃ悪いけど東鐘妹って俺の事嫌いだろ?」

「え……先輩はそんな風に思ってたんですか……? 私はこんなにも先輩が好きなのに……」


 俺から発せられた言葉に心を痛めたのか両手で顔を覆い震えている。泣いているのを隠しているのか、もしこの現場を目撃する者がいれば『後輩の女の子を泣かせた俺』と誰もが認識してしまう可能性がある状況で、どうしてなのか俺は全く動じていなかった。というか寧ろ一つの考えに至っていた。


「嘘くさ」

「え?」

「あ、やべ」


 つい漏れ出た言葉に思わず口を塞いだがもう遅い。零れた言葉はもう飲み込むことはできないのだ。

 

「……どういう意味ですか先輩?」


 東鐘妹は覆った手を退けず表情は見えないがコチラに問い掛ける。俺はそれに素直に答えることにした。


「えーとなんだろうな。……理由は言うけどその前にまず言っておきたいんだけど」

「……なにをですか?」

「とりあえずこれを言うためにここまできたんだよ」




「ごめん。俺好きな人がいるんだ」




 突如屋上に強い突風が吹き荒れる。それはまるで俺の言葉をかき消したかのような、そんな絶妙なタイミングだったがもう止まることが出来ない。そして俺は風が止むのを待って口を開いた。


「……好きな人ですか」

「おうそれとあれだよ。色々考えてみたけどさ」

「なんですか?」

「東鐘妹が俺を好きな理由が分からない。好きな意味が分からない」

「……」

「何度も言うけど俺の事嫌いだろ」

「……」

「……」


 再び流れる長い沈黙に耐えられなくなり、これはもう帰って良いのだろうか? そう思った俺は一声かけて立ち去ろうとした。その時だ。


「……まぁ待てよテメェ」

「え、あ、はい!」


 出入り口の前に立ちドアノブに手を掛けた瞬間、いきなり聞こえたドスの効いた声に身体がまるで電気でも走ったかのように反応し、俺は即座に振り返った。のだが背後にいるのは東鐘後輩のみ。

 そしてその後輩はいつの間にやら俺のすぐ側まで来ており、微笑みながら言った。


「先輩せっかくだからせめて私からの贈り物を貰ってくれませんか?」

「贈り物? ……まぁそれぐらいなら」

「ありがとうございます! じゃあ先輩少ししゃがんで目を瞑ってもらっても良いですか? 私背が低いですから」

「? おう分かった」


 返事をして東鐘後輩の指示を聞き、何故目を閉じるのか疑問に思いながらも指示に従う。

 なんだろう? もしかしてキスだろうか?

 僅かにそんなことを思ってしまったがどうやら違うらしい。その贈り物とやらは俺の首に付けようとしてるらしく何かを首に宛てがっているのを感じる。

 なんだろうネックレスだろうか? そう思った瞬間に俺の考えは否定され、


 ガチャン


 唐突に自身の首の方から金属的で決して人体からなるはずのない音が聞こえ、そしてネックレスとは思えない圧迫感が首に感じられた。

 恐る恐る目を開けるとそこには先程と同じ東鐘後輩がいたのだが、その口元は不気味に弧を描いている。直後後輩は大声を出して笑い出した。


「ぷっ! アハハハハハハハハ!!!」

「ッ!」


 その笑い方は一言で言うとしたらとても不気味そのものであった。いや、少し違う。

 ただ”不気味”なんて言葉で終わらせるにはあまりにも語彙力がなってないだろう。

 細かく言うならばそれは狂った様に笑っており、先ほどまで話していた女子とは思えない下品な笑い方だ。生理的に受け付けられない、こう言うのが正解だろう。


「あー傑作だわその間抜け面」


 散々笑って満足したのかようやく後輩は口を開き出したが、明らかにさっきと態度どころか声のトーンまで違う。

 俺はどうしてもそれが目の前の小さくて可愛らしい女子から聞こえてると思えず、


「ど、どうしたんだ東鐘妹____」

「その”東鐘妹”ってウゼェから辞めろよ。乱華で良い。いや寧ろ呼べ”様”を付けて呼べ」

「……えっと……どうやらマジらしいな。東鐘妹それが素なのか? 猫被ってたわけか?」

「あ? 分かってねぇなぁ。私は今なんて言った?」

「え……」

「乱華って呼べって言ってんだよ聞こえなかったか? あと様だ。様を付けろ」

「……」


 いきなりの豹変っぷりに驚き言葉を失っていると、東鐘後輩はそのまま言葉を続けた。


「大体何私のことなに振ってくれてんだよ。身の程って知ってるか? あんま舐めてるとぶっ殺すぞ」

「いや口悪……」


 あと俺は美少女から何回”殺す”と言われないといけないのだろうか。世の性癖拗らせた奴ならご褒美かもしれないけど、俺は普通に嬉しくない。


「なんで私がお前に告ったか分かるか?」

「いや分からないけど……」

「……お前私のお姉様と随分仲良いじゃねぇかよ」

「お姉様……? あ、雌ぶ……天先輩のことか。ってお前確か先輩のことお姉ちゃんって言ってなかったか?」

「うるせぇ黙ってろ」


 もうなんだろう。言葉の暴力フルコースである。


「お姉様が鍵咲先輩の事を好きだったのは嫌だったが、けれどお姉様の新しい表情が見れたからそれはそれでなかなか楽しかったんだよ。私はお姉様さえいればそれで良かったから」

「そ、そうなのか……あれちょっと待てじゃあお前は心のことはなんとも思ってなかったのか?」

「あ? 私が男の事好きになるわけねぇだろ」

「まさかのガチめのシスコンかよ」


 マジか、じゃあこの東鐘後輩ははなっからヒロインでも何でもなかったのかよ……。

 俺があまりの衝撃を受けても彼女の言葉は止まらない。


「だがそのお姉様が今度はお前の事を話すことが増えてきたわけだ。それはよろしくねぇよな、それは本当に許せない。なんだか分かるか?」

「い、いや……」

「決まってんだろ____私がお前のことを大嫌いだからだよ」


 逆に知りたいのだけれどなんでそんなに俺のこと嫌いなの??

 そしてそこまでハッキリ言われると流石に凹むな。

 後輩からの言葉に傷ついていると彼女は自身のスマホをこちらに向ける。それはインカメになっており画面には俺が映っていたのだが、


「なんだこれ? チョーカー?」


 画面には少しゴツくて小さな南京錠の付いたチョーカーが首に装着されていた。

 何故こんなものが? そんな事を考えていると東鐘後輩が懐から俺の首に付いたのと同じチョーカーを取り出し言った。

 

 とても良い笑顔で、


「なあ……よく見てろよ?」


 そう言うと彼女はチョーカーを勢いよく上投げで宙へ放り投げ、またしても懐から今度はなんらかの機械を出してスイッチを入れた。次の瞬間____


 ドッカーーン!!!


 チョーカーが爆散した。輝く光の中何が起きたのか分からないでいると、これまた満面の笑みで言い放った。


「私手作りの爆弾だ、同じの首に付いているからな? 私の機嫌損ねたらどうなるか分かるよな? さあ”返事”私の名前はー?」


 もう俺の行動……いや判断は光の様に早かった。


「乱華様ー!! 何卒命だけはお助けくださいーーー!!!」


 あの姉にしてこの妹あり、まさに悪魔の様な姉妹だ。

 

 そして俺のこの光速で行った土下座は自分で言うのもなんだが、見る人が見れば分かるとてもフォームの完璧かつ芸術点の高い土下座であった。……と少しでもポジティブに思っていたい。


 もう泣きそう……助けて景ちゃん……



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