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親友ポジションに憧れる俺は彼女達に狙われている  作者: 瑞柿けろ
第一章 ここから始まる親友ポジション
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第27話 嘘をつく結勇気と東鐘妹


 雌豚先輩とのやり取りを終えて、俺はようやく屋上近くまで進んでいた。

 やり取りといっても俺が一方的に蹴り飛ばしていただけなのだが、まあ良いとりあえずそれは置いとくとしてだ。

 こんな日に限ってやたらと皆と会うな、と思わずため息が漏れてしまう。

 

 そう、今こうして起こっている状況に____


「先輩どこ行くんですか?」

「……ひ、景ちゃん? どうしてここに?」

「どうして? 面白いことを聞くんですね先輩は」


 屋上に向かう階段の少し高い位置から笑顔の景ちゃんが一歩、また一歩と階段を下りて近づいてくる。

 窓硝子から注がれる陽の光により景ちゃんのシルクの様に美しい白髪がより綺麗に輝いていて、その美しさからまるでこの世のものではないような、そんな気さえしてしまう。


 俺は自身の顔が赤くなるのを感じていると、


「ラブレター」

「ッ!?」


 景ちゃんの口からふと零れた言葉を聞き、熱を帯びた俺の身体から一気に血の気が引いた。

 

「私告白されたこと結構ありますけどラブレター貰ったことないんですよね。貰ったらどんな気持ちになるんでしょうか? 相手が心を込めて書いた手紙どんなものなんでしょうか? ____ねぇ先輩どうなんですか?」

「え……」


 そう言ってこちらに聞いてくる景ちゃんからは明らかな圧を感じるが、ここで本当の事を言ったらどうなるのだろう。心に言うのも怖いが景ちゃんに言うのも怖いわ。

 考えた結果俺が導き出した答えは優しい嘘であった。


 ここだけの話だが言葉の最後に『勇気』と付けるだけでポジティブに置換できるのだ。


 ってアニメで誰かが言ってた。


「な、なんのことか分から____」


 瞬間、目にも止まらぬ速さで何かが顔を通過し、横の壁に放射状の亀裂が入っている。そしてその中心にあったのは”景ちゃんの右手”であった。

 恐ろしい速さで反応することが出来なかったが、ようやく状況を把握することができた。


 答えは実にシンプルだ。“景ちゃんが壁を殴った”のある。


「先輩……私に嘘をつくんですか?」

「あ……えっと」


 景ちゃんの眼光に気圧され語ろうとした言葉を詰まらせてしまったが、ここでの沈黙は悪手だろう。


「あ、いや景ちゃんに“嘘をつく勇気”と言いましょうか……。本当は嫌なんだけど仕方なかったと言うか……」

「それなにかで見たことありますけど、それってあれですよね? いくら”勇気”って言っても私に嘘つこうとしてることには変わりないですからね? 最低ですよ先輩」


 ぐ……何も言い返せない。

 駄目じゃないか。相手が怒っていたら通用しないじゃないか……。


「大体こんな状況で私に嘘つこうとしてる先輩の神経が最低過ぎます」

「す、すいません……」

「ハッキリ言いますけど私は昨日の時点で先輩がラブレターを貰ったの知ってますよ」

「マジで!?」

「はいマジですよ。というかさっきの私の話聞いてて気付いてなかったんですか? 気付いてないと聞きませんよ普通」

「そ、そうですよね」


 ご、ごもっともで……、でもまさか景ちゃんに”普通”なんて言われるとは……


「私は先輩が何時に起きて、何時に朝ご飯を食べて、何時に学校に行って、何時に帰ってきて、何時に夕ご飯を食べて、何時に寝るって全部知っているんですからね」

「そうだよな……え、待って今驚愕の事実を聞かされたんだけど気のせいかな?」

「それに寝てる時の寝相や寝言の頻度」

「え、待って俺のプライバシーっていうか景ちゃんいつ寝てんの?」

「週何回“運動”するのかその頻度____」

「ちょっと待って景ちゃん!! 話し合おう! 俺のプライバシーの保護の為に真剣に話し合わないか!?」


 ビックリした! まさかここまでの高レベルストーカーだったとは! 甘く見ていた!


「先輩……私は待ってたんですよ? 先輩がラブレター貰ったって報告してくれるのを……」

「え……ご、ごめんな景ちゃん」

「当たり前ですよね。それは自分の将来の妻に報告しないといけないことですよね?」

「将来の妻って……」


 そういえば景ちゃんの中では俺らは付き合ってる感じだったわ。忘れていた。

 大体先輩は重要なことを忘れてますよ、と景ちゃんは言葉を続ける。


「あの生徒会長が嘘付く程脳みそがあるとは思えませんが油断できませんよ? それこそあのナイフ女とか生徒会長が待ち伏せしてるかもしれませんしね。扉開けた瞬間グサリかもしれませんよ」


 た、確かに……景ちゃんの言う通りだ。

 珍しくまともなことを言ってる姿に驚いてしまう。そうだこのラブレターが純粋な男子高校生を騙す恐ろしい罠な可能性も拭い切れないのだが、それと同時に本物のラブレターである可能性も捨てきれないのだ。つまりは、


「嘘でも本当でもとりあえず行ってみるわ」

「……私が嫌だって言ってもですか?」

「景ちゃんには悪いけどな。それに返答は決まってるからそれを伝えるだけだ」

「……ふーん、そうですか」


 しばらくの沈黙が続き、屋上に向かう階段では部活動中の生徒の声が静かに響き渡る。そんな時間が流れ、いい加減屋上に向かわないとな、と思った時景ちゃんは口を開いた。


「分かりました先輩がそういうなら邪魔しないで待ってますね。後で一緒に帰りましょうよ先輩」

「あー悪いな心と帰る約束しちゃってるんだ」

「へーそうですか。チッ……あの男女(おとこおんな)私の邪魔ばっかりしやがって……」


  ちょ、聞こえてるからな? あまり俺の親友のことを悪く言うのは勘弁してくれ。


「じゃあ俺は行くからまたな景ちゃん」

「はい! じゃあ待ってますね先輩!」

「心と帰るって言ったはずだけど聞いてなかった系かな?」

「はい! じゃあ待ってますね先輩!」


 あ、駄目だ。この後輩話聞いてないわ。







 色々なアクシデントの末に俺はようやく屋上の扉の前へと立っていた。

 ここまで心や真白、昼の癒し杏理、そして雌豚生徒会長ときて最後の景ちゃん。なんだこれ既に物凄く疲れた。

 だがこれも今日この時、この為に頑張った事だ後悔はない。誰かの罠であったとしてもその時はその時で対応するだけだ。

 

 俺は呼吸を整え、更に気を引き締めて屋上の扉に手をかけ____扉を開けた。


「____え?」


 夕日に照らされ輝く屋上に佇む一人の影、その“女子生徒”は俺に気付くと優しく声をかけた。


「……雨上先輩遅かったですね。待っていたんですよ?」


 その明るい若葉色の短いポニーテール姿の“後輩”は俺のよく知る人物でもあった。


「東鐘妹……?」

「嫌だな~そんなじゃなくて親しみを込めて”乱華”って呼んでくださいよ」


 我が親友ヒロインズにして俺達の後輩


 ”東鐘 乱華(とうがね らんか)


 俺のことを最も嫌っていると思っていた奴が、どうなっているのかラブレターの待ち合わせ場所にいた。


「なんでお前がここに?」

「……決まっているじゃないですか____」




「私! 雨上先輩のことが好きです! 付き合ってください!」


 


 東鐘妹の大きな告白が屋上の周りに響き渡った。



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