第25話 ラブレターとココア
朝。
【貴方のことが好きです。明日の放課後、屋上で待っています】
「……」
綺麗で可愛らしい丸文字で書かれた文章、小さなハートのイラストとプリントされた便箋には何やら花? の香りがしている気がする。再度手紙に目を向けてみる。
『貴方のことが好きです』
「……」
『貴方のことが好きです』
「……むふ」
「透どうしたの? そんな急ににやけてさ」
「え!? あ、いや別にぃ? ちょっと思い出し笑いしちゃってな?」
「そう? ……ところで何か今隠さなかった?」
思わぬ問いに戸惑ってしまい挙動不審になるが、なんとか冷静に訂正すると心は疑いの目を向けてきたが、
「……まあいっか、透が僕に嘘つくなんてありえないもんね」
「え? お、おうそうだな」
「ん? なんか反応悪くない?」
「そ、そんなことないでござるよ?」
「ござる?」
慌てて訂正していると他のクラスメイトが心のことを呼んだ。コチラを不思議そうに見つめる心だったが、確信を得られなかったからか諦めてクラスメイトの下へ向かっていった。良かったバレなくて……。
まあでも……
「俺多分七割くらい心に嘘ついてる気がするが……」
なんなのだろう心の俺への信用って……
そんなことを呟いた時、突如顔に影が差し横から声が響いた。
「あー手が滑ったぁー」
「ちょぉぉぉぉ!?」
唐突に表れた真白はナイフを振り下ろした。机に突っ伏していた俺はそれを何とか回避する。思えば俺の身体能力はこの数日の間で攻撃を避けることに特化してきているような……反射神経がかなり良くなってきた。
ってそれよりも!!
「ちょっと真白さん君隠す気あんの!? 見てこのナイフ思いっ切り俺の机に突き刺さってるけど!?」
「本当だね。例えるなら机という台座に刺さった伝説の退魔の剣みたいだね」
あぁ隠す気はあるよ、と真白は言葉を足す。
いや喧しいわ!!
「見てみろ真白、さっきまで俺の頭があった場所に深々と刺さってるぞ!? 机の下まで完璧貫通してるし!」
「私の特製ナイフを甘く見ないでくれるかなとー君? 貧弱な木や金属なんて私のナイフの前では無力なんだよ。八回斬っただけで折れる残念なナイフと一緒にしないでね」
どこの巨人のナイフだよ。しかもそれ折れてなければ退魔の剣の二倍の威力だからな? てかそんなことよりもそのナイフを人に向けるのやめてくれない?
「私特製のナイフ……つまりあれだね。これを”私が生み出したナイフ”って言うとなんか急に格好良く聞こえるよね」
お前さては具現化けぃ____ッ!?
「ってやめやめこれ以上俺の厨二心を突っつくな……それよりもだよ。お前正気か? 俺じゃなきゃ刺さってたぞ?」
「えーバリバリ刺すつもりだったけど、あれだよね。とー君の反射神経ゴキブリじみて来たよね」
「言うに事欠いてゴキブリ? え、待って言葉選ぶ努力してくれない?」
「……努力してコレなんだけど駄目かな♡」
「あー痛い、真白さんから言葉の暴力を受けたわ」
真白はあれなのだろうか、俺には何言っても良いと思ってるのか?
「でもとー君が悪いよ?」
「なんでだよ」
「さっき心に八割くらい嘘ついてるって言ってたよね? 聞こえてたよ? ねぇねぇねぇ」
「え、ちょっと盛ってない?」
あ、うん。とりあえず俺が悪かったわ。だから指で突く感覚でナイフ向けないでくれませんか?
●
あっという間に昼休み。
着実に放課後が近づいてきている訳だが、ここで色々と考えた事がある。貰った手紙が誰から渡されたかという事だ。
まず心と景ちゃんは無い。あの二人なら手紙を渡すなんて回りくどいことしないで直接伝えに来るだろう。そんな奴らだ。
その他に今の所考えられる奴だと真白と東鐘先輩しかいないがどちらもない。
まず真白だが朝の会話で思ったがアイツは俺に対して別に好意を抱いてないだろう。抱いていたら攻撃しないだろうし、そして東鐘先輩も違う。理由はシンプルに昨日果たし状以外に送ってないと言っていたからだ。
東鐘先輩は嘘をつくような人ではないし、昨日勝った後に改めて尻を踏んづけて聞いてみたから間違い無いだろう。
景ちゃんと真白の目は冷たかったけど……、
「ねぇ雨上どうしたのよ?」
色々考え事をしていると隣から声が掛かる。そこは自販機のある廊下端の階段前そんな場所で何をしているかというと、
「おう杏理悪いな。ちょっとぼーっとしてたわ」
「そうなんだ。……ごめんもしかして用事とかあったかしら? お弁当食べてって言ったの私な訳じゃない? 迷惑だったらって……」
「本当にちょっと考え事してただけだから迷惑じゃないぞ。寧ろ昼飯食べさせて貰えるなら凄くありがたいわ」
「……ほんと?」
「本当だよ」
そう言うと杏理は頬を赤く染め嬉しそうにしている。ふと思ったけれど杏理の寂しそうな表情を見ているとこっちまで寂しくなってしまう。今思うといつも明るい杏理の表情が暗かった。多分それが杏理に話しかけた理由だったかもしれない。
「あれ?」
そこで俺は一つの疑問に気付く。
「杏理どうしたその指の絆創膏……」
「あ、これ? ちょっと転んじゃってね」
「そんな何箇所も?」
そ、そうよ? と答える杏理の両手の指には複数の絆創膏が付いている。
どうしたのだろうと思っていると、ポケットの中のスマホが震えた。見てみると景ちゃんからのメッセージが一つ。
【同級生の愛情いっぱいのお弁当美味しいですかー? 私は寂しく一人で食べてまーす。あー寂しいー】
平常運転の景ちゃんからのメッセージを俺は笑みを溢す。おっと女子と一緒にいるのに他のことを考えていたらいけないな。景ちゃんには悪いがここはソッとスマホを閉じさせてもらおうか。
そして俺は杏理に聞いてみる。
「杏理飲み物何がいい?」
「え、いいわよここ最近いつもじゃない。悪いわよ」
「いいんだよお弁当のお礼だよ」
「……お礼って言うかお弁当のお金は貰ったわよ? 断ったのに」
「じゃあこれは俺が杏理に買いたいだけだよ。ほらほら何飲む? 選ばないなら俺が選ぶぞ? 煮豆サイダーとか押すぞ」
「ちょ! それ一番人気ない奴じゃないの! 嫌よそんなの! ミルクティーにしてミルクティー!」
分かったよ、と告げ俺はいつも通りミルクティーを選びボタンを押して出てきた飲み物を杏理に渡す。
「ありがとアンタは何にしたの?」
「俺はココア」
アンタいつもそれね、杏理はそう微笑むとミルクティーを一口飲んでお弁当箱を出し言った。
「じゃあご飯にしましょ! 私の美味しいお弁当食べられるんだから感謝しなさいよねっ!」
「おう、ありがとな楽しみだ」
こうして杏理と昼を過ごした。お弁当は無茶苦茶美味しかった。




