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親友ポジションに憧れる俺は彼女達に狙われている  作者: 瑞柿けろ
第一章 ここから始まる親友ポジション

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第24話 昔の思い出




 昔の俺はよくそこら辺にいる様なただの何も知らない子供だった。


「おーい心太郎! 真白! 早くしないと置いてくぞー!」

「ま、待ってよ透!」

「とー君、しー君先行っちゃヤダよぉ……」


 心太郎と真白とは幼稚園からの幼馴染で常にいつも仲良く遊んでいた。幼稚園のいつから? と言われても分からない。他の二人はどうか知らないが俺の意識がハッキリしている一番古い記憶の時点では既に二人と一緒にいたのだ。

 毎日を二人と過ごしあっと言う間に小学生になった三年の夏休み。俺はとある出逢いをした。


 あの日のことは今でも忘れられない。あれは夏休みに入ってすぐのこと、


「え、心太郎風邪引いたのか? こんな季節に?」

「……ごめん透せっかく遊ぶ約束したのに……」

「いいよ気にすんなってゼリーとか買ってこようか?」

「大丈夫だよ薬も飲んだし、寝てればすぐ良くなるよ」

「そうか?」


 まぁでも無理すんなよ、そんな言葉を残して心太郎の家を離れ、遊ぶ予定が無くなったことで暇になってしまいブラブラと街を歩いていた。こう考えてみるといくら男子とはいえ一人で外を当ても無く彷徨うというのはなかなか無防備な小学生だったと少し反省してしまう。だが仕方なかったのだ。

 俺の両親は基本仕事が忙しく家にいない。だから遊ぶ予定が無くなったからとはいえ、どうせ夜には帰って一人になってしまう、そんな誰もいない家に昼間から帰るのが嫌で俺は街の探検を始めた。


 あれは楽しかった。見たことのない場所も、そして行き慣れた場所も”遊ぶ”ではなく”探検”になれば色々な物に目が留まる。普段二人と一緒だった俺は思いのほか”一人”を満喫していた。


 そんな時だ。


「ん? なんだあれ」


 子供の頃のなんでも新鮮に見える瞳にとある物が映った。


「バスだよなあれ? ここにあんなのあったんだ……知らなかった」


 探検を続けた俺は気が付けば空き地に付き、そこに廃車になった大きいバスがあった。


「んーーーーッ!!」


 その良い感じに薄汚れ蔦や苔が生えた姿が何故か俺の心に突き刺さり、


「決めた!! ここを俺の秘密基地にしよ!!」


 爆上がりしたテンションを抑えることなく俺は僅かに開いていた扉を無理矢理こじ開けバスの中に侵入して更に驚くことになる。


「____え?」

「……」


 そこには栗色の髪をして眼光のとても鋭い俺よりも小さな少女が体育座りでコチラを睨んでいた。

 だがそんな状況下だというのに俺の思考は混乱することなく、シンプルに一つの事を考えていた。


『先客いる……これじゃ俺だけの秘密基地にできないや……』


 そこじゃねぇだろ! 

 我ながらこのクソガキの思考回路はなかなか壊れていた。



「えっとお前どうしたんだこんな所で?」

「……」

「名前は? 住んでる場所は?」

「……」

「……無視は悲しいぞ」

「……」


 あまりのスルーに精神的ダメージを負った俺は大人しく黙ることにして廃車になったバスの座席に腰を下ろす。相も変わらず睨みつけてくる少女を視界に入れずに廃バスの内装を眺めていると、突如何処からともなく響き渡る地鳴りのような音に一瞬ビクついたがすぐにその正体を知った。時間にして五秒くらいだった気がする。

 ぐぅぅ~、と鳴り響いた最初こそ地鳴りっぽい感じの音だったが、終わり頃にはそれは情けない音に変わる。


 俺はやんわりと少女に聞いた。


「お前お腹空いたのか?」

「っ!!?」

「え____あ、ちょ、痛い痛い物投げんなって!」


 図星だったのか少女は睨みつけるのは変えず恥ずかしそうに頬を紅色に染めて俺に向かって物を投げ始めた。意外と痛かったのもあって俺はすぐに少女に、


「あ、良かったらだけどこれいるか?」

「!?」


 バッグから取り出した不格好なそれはただの”おにぎり”だった。が、少女の物を投げていた手が確かに止まる。それを確認した俺は即座に席を立った。


「二つあるけど二つ共あげるからな。今から近付くけど物投げるなよ?」

「……」


 返事はないが先程より少し警戒を解いてくれた少女にゆっくり近付き手を伸ばしおにぎりを渡す。すると少女は受け取ると同時におにぎりを食べ始めたわけだが、


「ッ!? んー! んーー!!」


 勢い良く食べ始めた少女はかなりハイペースで食べていたこともあってガッツリ喉に詰まらせた。俺は冷静に荷物からお茶のペットボトルを取り出し渡すと一気に飲み干す。それはもうあれはかなり良い飲みっぷりであった。

 そんな少女の姿を見て何を思ったのか俺はとある提案をしたのだ。


「なあ良かったらなんだけど……」

「……?」




「俺の家来るか?」


 こうして俺は不思議な少女と出逢い夏を過ごした。今にして思えばこれが俺の初恋だったのかもしれない。







「透起きてー____ってぇ!? どうしたのその絆創膏!」


 突如聞こえる喧しい声に目を覚ます。そこには見知った顔ではないが良く知る親友の心がおり、心配そうにコチラを見ていた。


「ん? あーこれはあれだよ。昨日の夜トイレに起きた時に転んで切っちゃってな」

「転んで切るって……そんなピンポイントに頬だけ切る? 普通さ」

「あれだよ。こうケースの角でスパッとな」

「そんなもんなの?」

「……そんなもんだよ」

「……」

「……」


 お互いにしばしの無言になり俺の部屋が静寂に包まれる。そんな気まずい空気に耐えられなくなった俺は適当にふと思ったことを口にした。


「てか心はなんで俺の部屋にいるんだ? 俺は開けた覚えはないし、前々から思ってたけど鍵はどうした?」

「鍵? それってこれでしょ?」


 何を言ってるの? そう言いたげというか、もはや当たり前だという感じの態度で鍵を見せびらかす。何故持っているか聞くと俺の親が軽く了承したらしい。あの両親は本当に……

 呆れてため息が零れ諦めて身体を動かそうとしたがいきなり響く身体の痛み、俺の身体は昨日の決闘のせいで悲鳴を上げていた。主に筋肉痛的な意味で。


「痛えなぁ……物理的にも精神的にも……」

「大丈夫? 僕が看病してあげようか?」

「それはそれで休まらないわ。マジ勘弁してくれ」

「なんで? 透は僕と一緒にいるの嫌? え、嫌だ。そんなこと言われたら生きていけないよ僕……」

「……」


 そういうとこだぞ我が親友よ……。


 めんどくさっ……




 

 でもなんだろうか。懐かしい夢を見ていた気がする。



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