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親友ポジションに憧れる俺は彼女達に狙われている  作者: 瑞柿けろ
第一章 ここから始まる親友ポジション

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第23話 天先輩攻略!? H.M.T.作戦!!




「____ッ!!」


 先輩が刀を横薙ぎに振るう。奇襲をしてきた夜とは違い、もはや斬速は目で追える速度ではない。先輩も本気のようだ。

 いや、実際には斬った姿は見えていない。『横薙ぎに振るう』と言ったが、それは振った刀が気付いた時には先輩が斬り終え一時的に止まったから、“そこでようやく刀を横に振ったと認識できただけだ。”


 だが、俺はその不可視の斬撃を一歩後ろに下がりそれを避けた。

 さすが先輩だ。素人の俺には少したりとも見る事ができなかった。


 ならどうして避ける事ができたのか。それは……


『先輩ナイス回避です! 次は二秒後上段で来ますよ! 私のタイミングで横に回避してください! ……今です!』


 言われた通り景ちゃんの言葉に従い横に飛ぶと、またしても先輩の攻撃を避ける事ができた。


『さすが景ちゃんマジ天使! 大好き!』

『えへへ、そんなの知ってますよ♡』


 あ、いや実はそんなでもないです。とは言えない。


 とはいえ俺がなんで避けられるか。

 それはこの景ちゃんからの通信を聞いて、俺が死ぬ気で回避してるだけのことなのだ。

 景ちゃんの驚異的な動体視力を駆使すれば、相手の僅かな動きで何をしてくるか分かるらしい。後は数秒前に指示して俺が避けるだけのシンプルな作戦。それが____



 ”H.M.T.(景ちゃんマジ助けて)作戦”なのである。

 


『先輩次が来ますよ。次はそのナイフを右に向けて構えてください』

『え、真白から貸して貰っといてなんだけど大丈夫か? ほら金属バット斬ったんだしさ……大丈夫かな?』

『大丈夫ですから早く!』


 景ちゃんに急かされ目を閉じナイフを構える。その結果ナイフを握った腕に強烈な衝撃が走った。

 ゆっくり目を開けるとナイフに止められた刀、更に驚き目を見開く先輩と目が合った。


「驚いたよ。動きは素人なのにまるで当たらないとは……ならこれはどうかなッ!」


 俺としては真白特製ナイフが両断されなかったことに感謝でしかないのだが、残念ながらそれが先輩を刺激したようだ。

 だってこの人笑顔だもん。むっちゃ楽しそうに俺を殺そうとしてるもん。


『先輩次は後ろに二歩下がってください!』

『お、おう』


 どうでもいいけどなんか景ちゃんが某囲碁漫画の背後霊みたいだ。


「ッ! 先輩!!」

「____」


 突如響く景ちゃんの声、その言葉に俺は慌てて動いたが……遅かった。

 後方に避けはしたが、残念なことに東鐘先輩は既に居合の行動を終え納刀しようとしていた。そして刀を収めたその時頬に鋭い痛みが走る。


「痛ッ」


 何かが頬を伝う感触と同時にようやく痛覚が追い付いて来ると俺は服で血を拭った。


「先輩!」

「とー君!」

「大丈夫掠っただけだから」

「ふふふ……にしてはかなり流れているけど大丈夫かな?」


 大丈夫ですよ、と真白や景ちゃんの心配を気にせず先輩を睨みつける。すると先輩は居合の構えをしたままいきなり笑い始めた。

 ただの笑い声を最初は疑問に思っていたが、俺は全身に得体の知れない気持ち悪い感覚を覚えた。傷の痛みをも忘れる程の嫌な感覚に冷や汗が溢れ出る。

 

 そして先輩は、


「あー良いよ雨上君その傷最高だ! 結構深いからね一生残るかもしれないねぇ! それにこんなにも私の攻撃を避けたのは君が初めてだよ! あぁー良いねぇゾクゾクするよ雨上君!」

「うっわ……」


 先輩は頬を赤く染めて普段の凛々しい表情とは違い物凄くだらしない顔を見せていた。そして俺はシンプルに引いた。


「きっも」

「____ッ!! ……いや済まないね私は血を見ると少し興奮してしまうんだよ。悪気はないんだ」

「少し? え、先輩ガッツリキモかったですよ? なんだったら今の表情も生理的に無理です」

「んっ……や、やめないか君……精神的な攻撃とはズルいぞ」

「「うーわ……」」


 にしては顔赤いですけど? というかアンタの後輩達が後ろでドン引きしてるぞおい。って待ってこれ間違ってなければ勝ったかも? そう思った俺は即行動に移した。


「お前変な性癖なうえにドMとか救いようねぇな! このマゾ!」

「や、やめないか……んっ♡」


 俺の言葉を聞き地味に喜んだ先輩の一瞬見せた隙を見逃さず、耳に付けたイヤホンと真白特製ナイフを同時に先輩に投げつける。

 先輩はいきなりの行動に少し動作が遅れたが、すぐにイヤホンを切り落としそれに続けてナイフを弾き返した。だがもう遅い、既に俺は準備が出来ている。


「おら喰らいやがれー!!」

「なっ!?」

 

 俺の行動に先輩は驚いているが勢い良く力を籠め蹴り上げた。



 先輩の尻を____



「あっひぃぃぃぃぃぃん♡!!!!!!」


 もはや人から聞こえてはいけない炸裂音が鳴ると、これもまた人が発して良いのかという妖艶みのある叫び声……てか喘ぎ声が武道場に響き渡った。

 そして目の前には倒れこみ身体を痙攣させる先輩、俺は確実に勝つため再度蹴りを入れ追い打ちをかける。


「おらどうだこのやろ! 参ったかマゾ先輩! 畜生てめえ痛かったじゃねぇかこら! おらおらブヒブヒ鳴いてみろよ豚がよぉ!!」

「ぶっ! ぶひーぶひー!」

「は!! お似合いだぜクソ女! お前みたいなのが心太郎のヒロインって思ってた俺を殴りてぇわ!! おら降参しないと辞めちまうぞ!」

「ぶひーぶひー! 降参します! 降参しますから辞めないでくださいぶひー!」


 よっしゃ、と勝利の嬉しさに思わず拳を天井に向け喜びを表す。

 静かな武道場には興奮して息を荒げる道着姿の女子生徒、そしてその女子生徒の尻を足で踏んづけガッツポーズをする男子生徒と異様な光景が生まれてしまった。


「景ちゃん真白やった! 勝ったぞ!」

 

 俺はこの勝利を立ち合ってくれていた二人と分かち合おうと後ろを振り向くと、


「「……」」


 二人は確かに見守ってくれていた……ゴミを見る様な目で。


「あ、え、えっとー? 真白ありがとなこのナイフ……た、助かったよ」

「ごめんなさい。申し訳ございませんがナイフは畳の上に置いて離れてもらっていいでしょうか?」

「待って! なんで敬語なんだよ!?」

「近寄らないでください。気持ち悪いです」


 待て待てそれは女子が言っちゃいけない! 男子高校生にその言葉は”死”を意味する言葉だからね!?


「景ちゃん! 景ちゃんからもなんか言ってくれよ!」

「……話しかけないでくれませんか」

「景ちゃーん!!」


 さっきのは演技に決まってんだろ!? ちょっと先輩からもなんか言ってくれよ!!


「あっ♡ あっ♡ あっ♡」


 あ、駄目だ。コイツ今全く使えないわ。



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