第20話 ラブレター=果し状
「あはははは! まさかとー君が私以外の人にも狙われているとは思いもしなかったよ」
いや笑い事じゃないけどな? 果たし状を見せ笑い出した真白に言い返す。
ここ最近の出来事を思い返してみるが、なんとなく分かる。まぁ間違いなく心絡みのことだろう。
自分で言うのは何だが、俺の素行はそこまで悪くはない。けれど恨まれることをした記憶がないのだ。
つまり心に関係する事だと俺は反射的に推理した。
「で? 果たし状の内容は見ないのとー君?」
「ん? 一応見るけどな。……ところで真白は帰らないのか? 俺のことは気にしなくていいからさ」
「いやー気になるから見てから帰るよ。ほら早く開けて」
「あ、いや……今人呼んだから待ってるんだ……来るのを」
待ってる? 不思議そうに首を傾げる真白、どうしよう出来れば真白とは会って欲しくはないのだけれど……
そんな心配をしていたのだが、悲しいことにそこまで待つことなく背後から聞き覚えのある声が響いた。
「先輩! プリティでチャーミングな景ちゃんの登場ですよ! 先輩から呼ぶなんて珍しいですねどうしました?」
振り向くと頬に指を添えて可愛いアピールをしている景ちゃん。そう俺が呼んだのはこの頼もしいストーカー後輩こと景ちゃんなのだ。
悔しいことにそのあざとい仕草の景ちゃんも可愛いのだが、俺の横にいる真白に気付いた瞬間____景ちゃんの目付きが変わった。
それはとてもいつもの景ちゃんとは想像も出来ないくらい鋭く濁った瞳で、
「……なんで貴女がいるんですか琴凪先輩」
「それはこっちの台詞だよ」
真白も戦闘態勢をとっている。
……うわーやばい状況になったな。ちびりそうだ。
「「どういうことですか先輩!」」
あ、少しちびったわ……。
●
「私さ、君のこと嫌いなんだよね。心ちゃんへの態度も悪いし、というか心ちゃんが嫌いな時点で君は私の敵」
「あの男女が私のことどう思ってるとか興味ありません。あ、てか貴女のことももちろん興味ありませんけどね?」
すると、真白の眉がピクリと動く。
「……男女って心ちゃんのことかな?」
「“あれ”以外います?」
「……殺す」
「やってみてくださいよ。顔の原型なくなる覚悟くらいありますよね?」
スカートから慣れた動作で二本のナイフを取り出し両手で構える真白、景ちゃんは自身の丈夫な身体を信じているからかただ拳を握り殴る動作を取ろうとしている。
ヤバいこれは学校が事件現場になるかも知れないぞ。
なんとか辞めさせないと……ッ!
「やめて! 俺の為に争わないで!!」
「殺しますよ?」
……君らこういう時だけ息ピッタリじゃんよ……って今それは良いんだよ。
「あのさ景ちゃんマジで辞めろって、景ちゃんに話があって呼んだんだぞ? とりあえず“これ”の話をさせてくれないか?」
俺がそう言って用事を説明しようすると、
「はい! 先輩の言うことはなんでも聞きますよ! 景ちゃん素直なので!」
「お、おうそうか……」
なんて変わり様だ。まあでもここで争いが起こらなくて良かったのだが、安心していると景ちゃんは俺の耳に顔を寄せて言った。
「言うこと聞いたので何かご褒美下さいね先輩♡」
「分かったよ」
「……殺す」
え、真白さん? 今俺に向かって言わなかった?
勘弁して欲しい。矛先が俺に向いたわ……。
仕方ない、今は真白の事はいいだろう。それよりも……
「なんですかこれ、果たし状? 先輩こんなの貰ったんですか?」
「そうなんだよ。下駄箱に入っていてな? ラブレターかと思って期待しちゃったわ」
「? 期待? なにを期待したんですか?」
「……」
あ、ヤバい墓穴を掘った気がする。
何を言おうか、と言い訳を考えていると先に真白が口を開いた。
「とー君のことだからどうせ可愛い子から告白されるかもって期待していたんだよね? 可愛い子からさ」
「なんで二回言うのかな真白さん?」
「……本当ですか先輩?」
「え、うーん……えーとどうだろうか?」
「どうなんですか?」
「……ど、どうでしょう……」
ちょっと真白さん安易に変なこと言うのは勘弁してくれないかな?
見て? この景ちゃんの瞳孔の開いた恐ろしい目をさ?
瞬きもせずコチラをジーっと見つめる景ちゃんには後で説明するとして、今はいい加減話を進めないといけない。
「とりあえず二人とも果たし状開けるからさ」
見てみようぜ、と二人に問い掛け果たし状を広げた。
そしてそこには____
【今宵、武道場にて待つ。剣道で決着をつけよう】
「……なんだろう。多分手紙の相手分かったわ」
「奇遇ですね私もです」
「というかこれ隠す気ないんじゃないかな?」
「「「これ……東鐘先輩じゃね?」」」
◆
学校から帰り家まで着くと、俺は先程の出来事を思い出した。
恐らくではあるが東鐘先輩から贈られたであろう果たし状には”今宵”と書いていた。ということで今日の夜学校に集合する約束をして一旦家へと帰ることにした訳なのだが、
「なんだこれ?」
現在俺は困惑していた。
理由は簡単、それは俺が手に持つこの”手紙”だ。
「また手紙?」
先程入っていた縦長の果たし状の手紙とは違い、これはシンプルな白い手紙。
また東鐘先輩からかと思っていると、裏を見て言葉を失った。
「____う、嘘だろ?」
そこにはハートマークのシールが貼られていた。
純白の手紙に可愛いハートのピンク色したシール、それを見ているだけで心臓の鼓動が早くなる。
え、待って? 嘘これ? え、待って? マジこれ?
俺が人生で初めて果たし状を貰った日、それは人生で初めてラブレターを貰った日になった。
「と、とりあえず見てみるか……」
もしかしたら嘘かもしれないからな、と俺は疑いながらラブレターを開けた。
そうだなんだったら男友達からのいたずらかもしれない。もしそうなら一生許せないけど……あ、俺男友達いないじゃん。
そして俺はラブレターの内容を見た。
【貴方のことが好きです。明日の放課後屋上で待っています】
「あー? あー!? あぁぁぁーーーーーー!!!??」
「本物だぁぁぁぁーーーーー!!!!!!」
「透煩い!!」
「ご、ご、ご、ご、ごめん!!!」




