表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/19

第17話 デートの約束しましょうか




 俺は現在扉の前に来ていた。場所はもちろん自宅。

 正確には学校所有のアパート”星空荘”の二階、一番右端の部屋が俺の住む場所のわけだが俺は家の扉を開ける事なく立ちすくんでいた。

 

 まずはこのメッセージアプリの通知を見てみてくれ。


【三百五十二件】


 内訳は親が二件、飲食店からのクーポンメッセージが六件、そしてそれ以外全てのメッセージが心から送られてきた物だった。

 

 さすがもう下手なホラー映画よりホラーしてるな我が親友は……


 今の今まで未読スルーしてた訳だが、俺は意を決して心のメッセージを開き二分前最後に送られた文章を確認する。そこに書かれていたのは、


【ハヤクカエッテコイ】


 その文章と共に一枚の”包丁”が写された写真が送られていた。


「ッ!?」


 ____瞬間、俺は扉に手をかけた。


「……た、ただいまー?」


 ゆっくりとノブを回して覗き込むように部屋を見る。すると包丁を持ち調理をしている心と目が合った。

 平然と家の中にいるが心に家の鍵を渡した覚えはない。だがコイツは鼻歌を歌い楽しそうに料理をしている。恐ろしい限りだ。

 

「あ、おかえりなさい透」

「え? あぁただいま……」

「透遅かったね。今ご飯作ってるから待っててね? 今夜はカレーだよ~」

「それは楽しみだな」


 先程のメッセージ内容に怯えていたが、案外普通の心の姿に安堵した。

 そうだよな。いくら心が病んでるからって常にメンヘラモードとは限らない。そんなの杞憂だったようだ。


「ところで透?」


 ニコニコとした素敵な笑顔を見せゆっくりコチラを向く心、その姿はまるでブリキの人形の様にぎこちない動きだった。


「透? もうちょっとで手が空くから部屋で待っててくれる?」


 おう分かった、そう言おうとすると俺の言葉を遮るようにそして笑顔を崩さずに____


「正座でね?」


 そう言った心は包丁を俺に向けている。

 なるほど、どうやら我が親友の怒りはなかなかのものらしい。こういう時は素直に従うのが一番正しいのだ。

 これがここ数日で俺が学習したことだった。



 俺が正座してしばらく、心が一言たりとも口を開かず黙々と晩御飯の用意をしている。もちろん現在も正座は継続中である。

 ちなみに気まずい沈黙に耐えられなくなり先程テレビに電源を付けたが、付けた途端心がゆっくりやって来てテレビを消していった。

 これはあれだ。”大人しく待ってろ”と言う心からの無言の圧力だろう。

 

「よ~し! 完成!」


 正座をしてから三十分、唐突に心の声が響く。

 そして鍋の火を止めた心は俺の待つリビングへ笑顔のままやって来た。手に包丁を握りしめて……


「ちゃんと待ってたんだ~? 偉いね透」

「お、おう親友との約束だしな」


 そう言うと心は手を広げ、


「うんそっか、じゃあ次はスマホ出して」

「え、何故に?」

「スマホ」

「いやでも俺にもプライベートというものがあってな?」

「スマホ」

「いくら親友とはいえさすがにそれは____」


 彼女は変わらない声のトーンで告げる。


「スマホ」

「……はいどうぞ」


 僅かな抵抗虚しく俺は心にスマホを手渡した。

 すると心は素早くそれを操作してなにやら俺のスマホをじっくり見始めた。と、その姿に俺はある疑問を覚え、スマホを弄っている心に問いかけてみる。


「あ、あの心ちょっといいか?」

「……なに」

「パスワードはどうしたんだ?」

「僕が透のことで知らないことなんてある訳ないでしょ」


 俺のプライバシーは何処へやら……もはや一生帰って来ない説。

 ちっあの女、と俺のスマホを見ながら心は舌打ちしているが、しばらく操作をするとようやくスマホを返してくれた。

 その画面には心とのメッセージ内容が表示されている。


「ねえ透? 僕のメッセージなんで無視したの?」


 ここからがようやく本題という訳か、さてこれミスったら包丁コースか……つくづく刃物に縁があるな俺は……


「あーそれはな……俺は一応勉強教えるってことで泊まった訳なんだよ。それなのにスマホばっかり見てたら悪いだろ? 親御さんとかにもさ?」

「む、確かに……でも少しくらい返しても良くないかな? ____って思い出した。あのスタンプなんだよ馬鹿にしてんのか?」

「ちょ、ちょっと待って落ち着け心……口調が戻ってるぞ」


 うるせぇなどうなんだよ、と心の目つきが鋭くなる。


「で? どうなんだよ」

「えーとあれはな? 心のことを想ってなんでもいいから反応しようとしてスタンプを送ろうとしたら間違えて送っちまったんだよ。悪気はなかったんだ」

「……僕のことを想ってなら頻繁に返事をして欲しかった」

「ご、ごめん」


 悲しそうにする心を見て素直に謝罪してしまう。

 そして詰まることなく流れる様に口から溢れ出る嘘に我ながらなかなかの才能を感じてしまった。もちろん”詐欺師の才を”である。

 と、それは今置いておくとして、


「もう帰って来ただろ? 機嫌直してくれよ心なんでも言うこと聞くからさ」

「なんでも? 本当に??」


 あ、ヤバい。なんか心の目が怖いわ。肉食獣の目だわこれ……


「……ひ、一つだけな?」


 む、一つだけか~……、と俺の言葉を聞き悩みだす心。

 危なかった。嫌な予感がしたおかげで制限を追加したがその判断は正しかったようだ。

 いったい”一回”と言わなかったらどんな無理難題を言われまくっていたことか……

 

「よし決めた!」


 俺が安堵していると心は意外と早くお願いを決めたらしく、そのまま言葉を続けた。


「来週デートしよ透!」


 マジか……意外とまともなお願いだったわ。






        ~おまけ~


 デートの約束を済ませ、心はルンルンと嬉しそうに鼻歌を歌いながら夕飯の準備を始める。そんな姿を見ながらスマホに目を移すとメッセージアプリに通知来ていた。

 

「景ちゃんから? いったい何だ」


 メッセージを見ると俺は送られてきた文章に目を見開いた。


【私の先輩の彼女面をするとか殺す】


 え、なんで景ちゃんからこんなメッセージが? 恐る恐る前の文章を見てみる。

 そこには、


【僕の親友にちょっかいかけるな。迷惑なんだよ】


「うっわ……」


 送ったのは間違いなく心だろう。どうやらさっきスマホを奪った時に送ったようだ。全く、

 

「”人のスマホ使って喧嘩しないでくれ”っと送信」


 とりあえずこういう事は辞めるように心に言わないとな。

 

 悩みの種は増え続ける。 




「ところで透から女の臭いがするんだけど____どうしたの?」

「……え!? あ、と、とと、友達のお姉さんがいたから……それだと思うよ??」

「……ふーんそっか」


 お願いだから包丁は置いてくれない??



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ