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第16話 なんだこのラブコメ展開(真顔)




 真白と別れてタワーマンションに戻ると、景ちゃんが満面の笑みで迎えてくれた。


「お帰りなさい透さん」

「え……お、おうただいま景ちゃん」

「ムフフ、なんかこれ新婚みたいで照れますね先輩♡」

「新婚ってお前……」

「少し気が早かったですかね。あ、でも将来結婚するなら早いうちに同棲するのも良いかもしれませんね!」

「お、おう……そ、そうだな……」


 え、待って? 景ちゃんの中ではもう付き合ってる設定なの? ヤバいな景ちゃん。


「それで先輩どうでした?」

「ん? なにがだ?」


 作戦ですよ作戦、と聞いてくる景ちゃんに俺は答える。


「どうだろう……、多分上手くいったかも?」

「流石先輩です! そういえば誰と会ってたんですか? 作戦をしてたのは分かりましたが、誰までかは聞いてなかったので」

「あー言ってなかったか。真白だよ真白」

「真白? ……あぁ琴凪先輩ですか」


 正直、最初は心配だったけど、実際話してみたら久々に照れた様子の真白を見れて楽しかった。

 まるで子供の頃に戻れたような気がして懐かしい気持ちになれた。


 そんな風に色々考えていると、あることを思い出し、手にぶら下げたコンビニの袋を景ちゃんに向けるようにして差し出した。


「そういえばこれお土産のプリン」

「……ありがとうございます」


 どこか反応の悪い景ちゃんはしばらく黙っていたが、

 

「ねぇ先輩ひとつ聞いていいですか?」


 と、景ちゃんから声が掛かる。少しいつもの景ちゃんと違う気がしたが、とりあえず返事をしてみた。すると____


「”真白”ってなんで名前呼びなんですか?」


 ____え? 

 いきなりのことに言葉が詰まる。そんな一瞬を景ちゃんは見逃さなかった。


 唐突に大きな炸裂音が家に響き渡る。

 なにが起こったか理解出来ないでいると、しばらくして状況を確認してみる。すると、

 いつの間にやら景ちゃんの右腕が廊下の壁を貫いていた。


「えっと景ちゃん? 壁大丈夫か?」

「ん? あ〜ちょっと力入れ過ぎちゃいましたね。結構頑丈にしてもらったのにまだまだ脆いですね」


 本人は脆いと言っているが、俺からしたら真白の投擲や、東鐘先輩の上段斬りはかなりの速度だったがまだ目で追えた。

 けれど景ちゃんの腕が壁に埋まったのは目で追えなかったどころか、景ちゃんの拳は音を置き去りにしていた。


 え、嘘だろ? なんでそんな早いの?

 

「それで先輩何か言葉に詰まってましたけど、言い訳でも考えてたんですか?」

「いや違う違う。ちょっと考え事をな?」

「ふーん。で?」


 なんでですか? と問い詰めてくる景ちゃんは壁から腕を引き抜き笑顔で近づいてくる。

 俺の脳は高速で動き言い訳を考えた。


「考えても見てくれ景ちゃん。俺は作戦をするにあたってある考えをしたんだ」

「はい?」

「やっぱり親しくなるのはかなり重要だと思うんだ。名前呼びとか愛称とかな?」

「……」

「景ちゃんは言っただろ? アイツらを惚れさせるって、だから俺もやるなら本気でやるって決めたんだ。中途半端はしないってな」

「……なるほど」


 いけるか? 苦しいか?

 しばらく目を閉じ腕組みして唸る景ちゃんはやがて目を見開いて、


「さすが私の先輩です! やっぱり何をするにも真面目にやるのは大事ですもんね!!」


 良かった。景ちゃんは思ったよりチョロかったわ。







「ふ〜……の、乗り越えた」


 現在は土曜日の夜、明日帰るために景ちゃん宅の風呂に入りシャワーを浴び疲れた身体を休めていた。

 疲れたと言っても今日は殆ど探し物をしていただけなのだが、


「真白……」


 今日会った幼馴染で俺を最初に襲ってきたナイフ使っていた暗殺者。

 本当にアイツの名前を呼んだは久々だった。

 一体いつからだろう。真白と仲が悪くなったのは、名前で呼ばなくなったのは……確かあれは____


「あの先輩?」


 思い出を呼び起こそうとした時だった。

 突如、風呂場の扉越しから声が響く。声の主はもちろん景ちゃんだ。


「どうした景ちゃん?」

「タオルここ置いておきますね」


 おーありがとう、と言おうとすると景ちゃんは言葉を続けて扉の開く音、


「ついでにお背中流しますね〜」

「ファ!?」




 ゴシゴシ、という俺の背中を洗う音が風呂場に響き渡る。

 その音以外はとても静かで静寂そのもの、気まずい空間の中、先に口を開いたのは景ちゃんだった。


「先輩どうですか〜? 気持ち良いですか〜?」

「え、あ、ああ良い感じだ。ありがとな景ちゃん」

「いえいえ〜、寧ろ私の方こそありがとうございます」

「どゆこと?」


 突然の礼を聞きて困惑していると、


「私が先輩の写真や、ぬいぐるみとか持ってるの引かれると思ってたんですけど普通に接してくれて嬉しかったです」

「そういうことか……あ、使用済みの箸とか保存してるのはドン引きしたけどな?」

「実は正直に言うと私は昔から先輩をスト……観察してたので」


 今さ、ストーカーって認めようとしなかった? 


「……先輩明日で帰っちゃうんですよね」

「ん? ああそうだぞ。明後日学校だからな流石に明日には帰らないと」

「もういっその事一緒に暮らしません? 良いじゃないですか遅いか早いかですよ?」

「……」


 いやそれはちょっと無理があるだろ……。

 現在進行形の問題を解決したら景ちゃんの方も断らないといけない。

 ハッキリ言いたいが景ちゃんの協力を失くすわけにもいかないし、というか誰よりもまだ景ちゃんと敵対したくない。


 身の危険がヤバ過ぎる。


「もしかして嫌だったりしますか? 他に好きな人がいるとか?」


 あ〜景ちゃん落ち着こうか? 徐々に身体を洗うスポンジに力が入ってるぞ!? 待って待って!!?

 

「痛ぁぁぁ!? 景ちゃん落ち着いて背中の皮が剥がれる剥がれるから!!!」

「あ、先輩すいません。つい力が入っちゃって」


 ”つい”で済むレベルじゃなかったのだが??


「さあさあ先輩次は前洗いますよ〜」

「ちょ!? 前はやめてくんない!? 洗った! もう洗ったからぁ!!」


 こうしてなんとか逃れ、景ちゃん宅の最後の夜を終えた。


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― 新着の感想 ―
マンションの壁とか壊してるけど、嫉妬なんて、相手を信じることも出来ないで自分の想いばっか優先して独占欲だけ空回りしちゃうような性格ブスがやることだから、景ちゃんがやるわけないでしょ。ねー?景ちゃん!
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