第105話 あ、ごめんなキャパ超えたわ。激おこですわ
「……これでよし」
「本当にそれで大丈夫なのか?」
「私がやってんだぞ? 完璧に決まってんだろ」
木々の影や様々な場所に無数の爆弾を設置し、罠を準備する乱華がドヤ顔を見せる。
「相手は本職なんだ。過剰ってくらい仕掛けといていいんだよ」
「な、なるほど?」
「そして少し離れた場所に本命を仕掛ける。油断した時に掛かるようにな」
裏の裏とかいうやつか……、
「それすらもフェイクで更に本命を仕掛ける」
「まさかの裏の裏の裏!!」
「更に更にその裏も読むのが罠を仕掛けるコツだ」
「ら、乱華さん? 貴女もしかして今回が初じゃないだろ……? さては経験者だな……?」
「……」
「おいなんか言えよ」
乱華さんマジか?? まさか本当にその爆弾で誰かを……!?
「か、勘違いすんな! 全部未遂だぞ!?」
「未遂ってお前な……」
「三十回以上罠仕掛けて狙ってたんだけど、相手が運良く躱してたんだ」
誓って言うが殺してないしもう襲ってないぞ、と乱華が一言添えたので俺は呆れて応える。
「三十回って……乱華にそんなに狙われた可哀想な奴って何処の誰なんだよ可哀想過ぎるぞおい」
「……お、怒らないか?」
「あ、なんだ? 俺が怒る? 冗談だろ? 散々殺されそうになってる俺が怒るわけないだろ? 姫以外の奴なら何されても怒らない自信があるね! 俺のキャパ舐めんなよ!」
「そ、そうか? なら言うけど」
そして乱華は申し訳なそうに言い放った。
「私が狙ってたのお前なんだよ」
「あ、ごめんなキャパ超えたわ。激おこですわ」
ふふふ……初めてですよ。この俺をここまで怒らせたお馬鹿さんは……
「いつからだよ」
「去年の夏くらいから少し前まで……」
「時期的に乱華と知り合ったくらいか? え、なんでまた俺なんだよ?」
「お姉様に近づいて来てたからな……」
「あの頃は主に心太郎の周りに天達が集まってたんですけど!? おかしくない!? なんで俺が狙われんだ!?」
今までに経験したことない程の理不尽じゃないか!? 流石にこれは怒って良いだろ俺!?
決意を固めあまりの理不尽に文句を言ってやろうと思ったが、乱華の態度が何やらおかしい。
どうしたんだ、と問うてみると、
「……言い訳にしかならないけど、薄らだけど子供の頃に会った子を透だと内心思ってたんだと思うんだよ……」
「だ、だから?」
「だから他の女共と仲良く話してたお前を見て殺したくなったんだよ。なんか文句あっか?」
「え、まさかの開き直って来たんですけど!?」
というかあの頃はまだ皆の事をあまり知らなかったし、女子達には嫌われてると思ってたんですがそれは!?
「うるせえ死ね」
「まさかのストレート罵倒!!」
乱華さんいくらお口が悪くてもそれは今の世の中じゃ許されませんよ!?
「良いだろ別に、もう透のこと襲ってねぇんだから」
「まあそうだけどな……あれいや待て? 少し前までって言ってたけどいつやめたんだよ」
「……」
俺の質問に乱華は目を逸らす。おい目を見ろ目を、
「そんなことより私から透に聞いて良いか?」
「ん? どうしたんだ?」
「あーいや、なんと言うかその……な?」
「どうしたんだよ乱華いつもならズバッとなんでも聞くじゃんか、ほらなんでも聞いてみろって」
歯切れの悪い乱華を俺は急かす。こんな話をしているが一応これでも絶賛臨戦態勢だし、色々準備をして杏理を狙う奴をなんとかしたい。
じゃあ聞くけどよ、と乱華は続けて言い放った。
「私と他の奴らどのくらい好きなんだよ」
「……え」
「順位を知りたいんだよ。教えろよ透」
「あ〜その〜……」
なんだよ、と反応の悪い俺を鋭い眼光で睨む乱華、なんとかしないと……とりあえず上手く嘘をついて……
「皆同じくらいですよ?」
あ、駄目だ。嘘つけないやつだこれ。
「私はどのくらいだよ」
「ど、どのくらいって……」
「透正直に言え」
「紫ちゃんの方が皆より好き」
「……」
あーやばい……
「いなり寿司も皆より好き」
「……」
おいおいおい死んだわ。
黙り込む乱華が怖過ぎて声が掛けれない。どうすれば良いのか。
なにか怒らせてしまったかと思ったが乱華は俺の手を握り、
「これはもっとアプローチをしない私が悪いよな」
「ら、乱華?」
「なぁ透、この件が終わったら私とデートしろよ」
で、デート?
「おう、嫌とは言わせねぇぞ?」
「あーいや嫌じゃないけどな」
こんな状況、しかも杏理が大変な状況なのにそんな約束をして良いものなのだろうか……。
とりあえず景ちゃんに相談して____
「何しているんですか二人とも?」
「!!?」
突如聞こえた横からの声、ゆっくりその方向へと目を向けると、
「先輩なにやってるんですかこの非常時に」
「ひ、景ちゃん……」
景ちゃんが物凄い至近距離にいた。いやというかもう少し近づけばキスでもできるだろうと言うくらいの距離だ。
そんなすぐ近くに女子がいるからか動悸が止まらない。因みにトキメキではなく恐怖の方だが……
「私、スーパー景ちゃんなので耳も良いんですよね。もう一回しか聞きませんけど……」
何していたんですか??
全身を悪寒が駆け抜ける。もう駄目だ終わった。
死を覚悟した時、景ちゃんは耳元で静かに囁く。
「私ともデートしましょうね♡」
あ、はい分かりました。寧ろコッチからお願いします。
「それともちろん私のことが一番好きですよね先輩??」
「はぁ? 何言ってんだよテメェ失せろ」
「うわあまりの品の無さで害獣かと思ったらいたんですね妹さん」
「ぶっ殺すぞ……」
「やってみてくださいよ。やれるもんなら」
この二人も仲悪いのかよ。勘弁してくれよな。
「やめて!? 俺の為に争わないで!!?」
「「うるさいです」」
「ご、ごめんなさいっピ……」




