三話 助けを求め走る
残酷な描写があります。
流血の表現も含まれてます。
駐屯地に向かって全力で走り続ける。
既に俺が入ってきた門はとても遠く、一緒に入ってきた同期達とは分かれそれぞれのやるべき事に向かっていた。
俺がやることは駐屯地にあのバケモノを倒す為に助けを求めること。
隊長達が今この時もバケモノと戦っている。
俺が早く駐屯地に着けばあの人たちが生き残る可能性が少し上がる。
ここに来てから馴染みの酒場を通り過ぎ角を曲がってようやくデング駐屯地が見えてきた。
駐屯地の前には見張りの兵士たちが数人いるだけで、いつもなら奥の訓練場に数十人が毎日のように鍛錬をしているはずだがこの日は駐屯地の人の気配が薄かった。
どれだけ走ったか分からないが既に喉は乾燥して、呼吸する度に乾燥した喉を空気が通り抜ける分痛む。
見張り達は切羽詰まった様子で走ってくる俺に気づき、こちらに向かってきた。
「どうした?ここに何か用か?」
「おい!落ち着け!ゆっくり息を吸って吐け。誰か水を持ってきてやれ。」
「何か喋ってるぞ」
「門が…フェ…」
うまく言葉が出ない、喉が乾ききって空気が通り抜ける音が何度も続く。
必死に、何度も伝えようと喋りかけるたびに喉に痛みが走り更に言葉が詰まる、そうしていると見張りの一人が水筒を持ってこちらに走ってきた。
「ほら。水だゆっくり飲め。」
渡された水筒を受け取り、勢い良く中の水を喉に流し込む。
何度も飲み込み喉が潤った所で水筒を口から離す。
そして、俺のやるべきことをする。
「警備隊のジーズ隊長から伝令です!門にフェルムリザードが襲来!警備隊が現在戦闘中ですが隊長よりこちらでは対処不能とのことで駐屯地に討伐隊の派遣をお願いしたいとのことです!」
伝えた!これで俺の役目は努めた。
これで駐屯地から討伐隊が向かえば隊長たちは助かる!
ついそう思ったこの時の俺は本当に甘かった。
神様は常に俺達に試練を与えるのかもしれない。
俺の言葉を聞いた見張りの人達はお互いの目を見合った後、彼らが発した言葉は俺を絶望させるのは容易かった。
「今…この駐屯地の殆どの兵が出ている。討伐隊の派遣は…無理だ。」
「…は?」
彼らの一人は座り込んだ俺の目を見ながら俺に言った。
とてもまずい、これじゃ隊長達はどうなる?それどころか隊長達がやられたら次は街の人たちが犠牲になってしまう。
「そんな。どうにかならないんですか!?このままじゃ隊長達は。それどころか街の人たちだって!」
俺の言葉を聞いた彼らは押し黙った。
少しの間、下を見ていた彼らはやがて口を開いた。
「俺達が援護に向かおう。」
その言葉を聞いてすぐに俺は彼らを見た。
「駐屯地の兵達は駅に向かった。今日、王都から来る『白鳥』ことルジット中尉殿達の部隊の出迎えの為に。」
そう話す見張りの一人は俺の肩に手を置いて一つのお願いをしてきた。
「駅まで行って、兵士達を呼び戻して来い。それまで残っていた俺達でジーズ達の援護に向かう。」
「だけど、もうすぐ仲間が役所の避難警報を流すんです。それで気づけませんか?」
「あの駅はもしもの時があるときに備えて、馬鹿みたいに頑丈な作りをしている。そして駅のダイヤルが漏れたり、内偵などによる情報交換ができんように駅全体に音響遮断魔法が発動している。内側から外の音はまず聞こえない。」
駅…確かこの街に来るときに一度だけ乗ったことがある。
駅内の騒々しい音のせいで外からの音が聞こえないなんてしらなかった。。
この街の中央に位置しているあそこはここから遠くはない。
俺はまだ走らなきゃいけない。
「分かりました。自分が行ってきます。ジーズ隊長達のことよろしくお願いします!」
そう言い終わるとけたたましく警報が鳴り響く。
それについで役所からの役人達が筒状に丸めた物で大きな声で避難誘導を始めている。
『街に魔物が近づいています!ここから避難してください!この地区から最寄りの避難所はマルトス教会、メダソロ学校の2ヶ所です!直ちに避難してください!繰り返します!』
建物の窓から今まで警報を聞いたことがなかった住人たちが何事かと様子を伺っている中に役人達の避難指示で急いで引っ込んでいく。
すぐに必要最低限の荷物を持った家族達が役人の誘導に従い移動していく。
それは歩くたびに数を増し、長い蛇を作り出しているようであった。
「急がなきゃ…」
その光景を見て俺はすぐに駆け出した。
俺がうだうだしている間にも隊長達が助かる確率が下がっていく。
後ろを振り向かずただ前を再び走り出す。
街を救うため、警備隊の仲間達を救うために。
爆発音が連続して鳴りあとに続くように銃声達が後を追いかける。
しかし、本来起こるはずの肉に入り込みながら静かになることはなく、金属同士を激しくぶつけた高音が何度も続く。
「クソッ!どうなってんだ!」
上からそんな言葉が聞こえてくる。
体が重い。
そして全身が異常に熱い。
何があったんだ、俺は確かいつもと同じ警備の仕事を…
そこまで思い出した辺りで上から俺を呼ぶ部下の声が聞こえた。
「ジー……長ォ!無…すかァ!?」
昼間に酒なんて新人の頃1回やって以来やらねぇと決めたはずなんだが。
酒を飲んだあとのように頭に声が響く。
「ジーズ隊長ッ!」
「うぐッ」
さっきまでなかった痛みが俺の体中を這いまわるようにやってきた。
ゆっくりと体を起こして周りを見渡す。
周りの惨状を見てようやく呆けた思考が正常に戻るのを感じる。
「ッ!お前達!無事か!?」
「ようやく起きましたか!隊長!」
物陰に隠れていた部下達の声
体中に刺さった靴ほどの大きさの鱗を見やる。
再び周りを見渡すと気絶するまで一緒に牽制射撃をしていた部下達が倒れている、しかも俺と同じように体中鱗が突き刺さって。
そうだ。たしかアイツに向かって牽制射撃をしていたらアイツは自分の尾を勢い良く振って…
鱗が飛んできた…
「すまん。寝てた。クソッ、デタラメな」
どうやら俺が気絶したあとも部下達は作戦を続けていた。
面目ならねぇな隊長が先に倒れちまったら。
フェルムリザードの棘鱗は成長で抜けることはあっても武器にはできねぇと聞いていたんだが…
「他に生きてる者は?」
「分からねぇ。」
地面に落ちていた自分の銃を手に取り醜く太った腹に1発撃ってみた。
「うおッ!?」
柔らかいはずの腹は普通の棘鱗と同じように高い音を出して別の方向をすっ飛んでいった。
「アイツどこ撃っても跳弾して下手したらこっちが危ないですよ」
「銃は完全に無力か…砲による攻撃はどうなんだ?」
「それも殆ど効果なし。アイツが飛ばした棘鱗もアホみたいな速さで再生、しかも硬度は変わらないときました。ただ衝撃は防げないみたいで足止めとして間隔をもって撃たせてます。」
まだ100メル以上の距離があるアイツに再び防壁から1発ぶち込まれる。
当たった瞬間だけアイツは動きを止めすぐに歩みだした。
1、2、3、4、5、6また砲撃がアイツに命中する。
なるほど。6秒間隔での砲撃か。
防壁に置いてあってアイツに使える砲は全部で6門か。
このまま6秒間隔で動きを止めてもいいが…
「俺が気絶してから上は何発アイツにぶち込んだ?」
「さぁ?数えてる状況じゃないですから。こっちも目を狙って撃ってみましたがあんなん当たらなんで、弾の火薬抜いて支給された革袋に入れてアイツに投げつけて爆破してます」
それを聞いて俺は防壁の連中にハンドサインを送る。
すぐに向こうからもハンドサインが返ってきた。
12発…残りは12発しかない。 どうする?どうやって止める?
クソッ!どうすれば…
上からざわめきが起きてたのを聞き、防壁を見やる。
「よぉッ!助けに来たぜッ!」
防壁の上にいつも酒場で俺との賭けで負けてる駐屯地のバカがいた。
「賭けのツケはこれで撒けてくれよな?お前んとこの新人が必死こいて助け求めてきたんだからよ!」
最後まで読んでいただきありがとうございます!
至らなぬ所もありますが是非読んでいってください!




