二話 響く足音
こんにちは!
半生焼け肉です!
この作品を楽しんでいただければとても嬉しいです!
フェルムリザード
中型モンスター 金属質の鱗を全身に纏い肉弾戦を得意とするトカゲの魔物。
金属の種類によって性質が違う亜種が多く、金を食べたゴールデンリザードやミスリルを食べたミスリルズリザードなどもいる。
「俺は下で迎撃の指示をする。お前達は俺達が撃ち始めたらあとから続けて援護してくれ。」
冷静な指示を出しつつも彼の額には汗が滴り、握りしめていた銃身を更に強く握っていた。
(あれにかかれば門も長く持たん。大事なのは街の人間たちの避難、駐屯地にこの事を伝え討伐隊の結成とギルドへの協力要請。この3つを成し遂げるために必要なのは時間稼ぎ。)
階段を勢いよく駆け下り途中の窓から飛び降り
「邪魔だッ!そこからどけェ!」
上からの声を聞いた警備兵達はすぐにジーズに気づき着地点を離れ巻き込まれないようにしている。
ドスンという衝撃音とともにジーズの巨体が地面を鳴らす、すぐに片膝も上げ真っ直ぐと体を上げる。
「よしッ!全員いるな!これから作戦を伝える!」
その言葉を聞くと同時に兵士たちは整列をはじめ、そのまま言葉を待ちはじめた。
「作戦はこうだ。まずあれが門に興味を持たんよう俺達は周囲に散開、ヤツに向かって順番に発泡し俺達に注意を向ける。昔酒場で冒険者と呑んだ時にメタルリザードの弱点は腹と聞いたことがある。もしヤツが腹を見せたら狙って撃て。だが極力近づくな。ヤツとは最低6メル離れろ」
全員が黙って聞いているところを古株が手を上げた。
「意見具申よろしいでしょうか?」
「なんだ?言ってみろ」
「この作戦では到底討伐を前提としているようには思えません。目的は時間稼ぎですか?」
「その通りだ。この作戦は時間を稼ぐことと3つだ。住人の避難と駐屯地に討伐隊要請、ギルドへの救援要請をするためこれらそれぞれに三人向かわせる中央区と駐屯地、ギルドに。」
部下達のほとんどが俺の言葉を真っ直ぐと聞き続けているのをゆっくりと目で見回している中、最近入った三人の若造たちが目に入った。
気をつけの姿勢のまま俺の声をしっかりと聞いているが、表情に恐れが見える。
ここに来るまでに訓練を積んでいたとはいえ、たかが警備兵の新入りだ。
こんなことが無ければそろそろ魔物との実戦を経験させる頃だ。
こいつらじゃすぐに死んじまうだろう。
まだ先が長いこいつらに時間稼ぎをさせるつもりはない故
「そして、お前達」
俺に呼ばれる震える3人にこう伝えた。
「お前は中央区の役所に向かい避難発令を出せ。お前は駐屯地に行き兵士達を連れてこい。そこのお前はギルドに救援要請だ。分かったな?ほら行け!急げ!お前たちに掛かっている!」
若造達は何度も頷きすぐに街に入る為の扉を開け最後尾の一緒にいた若者がこちらを少し見つめたあと街に入っていった。
「よぉし!準備しろお前達!長く稼ぐんだ!正念場だぞ!俺達が長く長く足止めすればするだけ住人の避難が進む!帰ったら俺が酒を奢ってやる!好きなだけ呑もう!」
その声に部下達はすぐに行動を始めた、木箱や机、椅子を門の前に積んでいき簡易的なバリケードを作っていく、俺達が隠れながら撃てるように土嚢も積んでいく。
そんな時に上にいた部下が叫んできた。
「ジーズ隊長!目標までの距離200メルまで近づきました!ライフルの射程距離です!」
「おう!わかった!お前ら!来たぞ!構えろ!」
全員が銃口の先の魔物を標準に捉え、俺の命令を待つ。
やがて振動を感じた。
とてつもない力を地面に響かせ、地を揺らしながらヤツは近づいていた、
距離で形しか見えなかったヤツははっきりと姿を見せた。
本来、金属質で銀色に輝いているはずの鱗は、赤黒く錆びついているようにも血が固まって歪になったようにも見え、それが体中を覆い地面を一歩進むたびに俺達に振動を感じさせる。
その上、本来のフェルムリザードは5〜7メル辺りの大きさなのに、ヤツは9メルを超えるほどの巨体と鱗を持ち上げ俺達を見下ろしている。
俺はすぐにわかった。
勝てない。
これはだめだと。
こいつには俺達がどれほど束になっても勝てないそんな予感を感じた。
だが後ろには守るべき街と人々がいる。
ここは通せん、通るなら俺達を皆殺しにしてでも進んでみろ。
俺達はデングの警備兵、街の門番達だ。
息を少し吸い俺は命令を叫ぶ。
「総員!左から発砲ォォ!」
左から次々と空気の破裂する音が響き始め、すぐ隣から音が聞こえた瞬間、俺は指を掛けていた引き金を直ぐに引いた。
空気が破裂する音が聞こえた。
※メル 数百年以上前に伝わったとメートル単位の名前が長い時と異世界の方言などで変わった呼び方。
あの二柱が去ったあと、どこに召喚するか悩んでいると一つの国が目についた。
アプティミ王国、ラジア大陸にある国でとても好戦的な国、異世界人の召喚も頻繁に行っている国である為、ここの儀式に介入をすることにした。
アプティミ王国が異世界人を召喚する魔法の儀式を始めて既に1ヶ月経っている、おそらく期間と魔力の量から数十人規模の召喚を目的にしたものでしょう。
「これに介入します。」
私は背後に向かってそれを言い放った。
「分かりました。では私達は部屋の準備してまいります」
私の後ろにいた配下たちは直ぐに異世界人と話をするための部屋の準備に入ってくれた。
関係ない世界に呼び出され、命を懸けて異世界を守れという無茶で理不尽なお願いを説得し、今までいた世界を捨ててもらう為の話し合い…
なんと非道で下劣で最低なこと頼みに行くのだろうか。
そう思いながらその儀式に介入し、数十人分の召喚魔法の全てのリソースをたった一人に纏め一時的にこちらに召喚した。
「ッこのモーションは覚え…ッグェ!?」
何かに座っていたのか、支えが無くなり地面に落ちる人間。
「ん?ここどこ?」
目の前に召喚された男性は先程まで何かしてたのか両手で何かを持ったような姿勢をしていたが直ぐに無いことに気づいたか両手を地面につけ私を見つめてきた。
「こんにちは。異世界人。私はロスティール。神です。貴方に世界を救って頂きたく召喚しました。」
まずはこちらの目的と正体を告げる、急にこちらに呼び出されてもすぐに承諾は難しい。
ここからとても長い説得をしなければいけない。
なのでまずはこういう時の為に作った応接室に連れていきなんとか納得してもらえるよう説明しなければならない。
部屋に案内しようと彼に声をかけようとした時先に彼から声をかけてきた。
「いいよ」
その予想外の返答に私は少し放心状態になり聞き返してしまった。
「今なんと?」
「だから、いいよって」
やはり聞き間違いではない。
これまでは泣いて縋ったり、怒り怒鳴り散らし元の世界に戻せと言われることのほうが多かった。
了承してるとはいえ何も説明せず送るのは性格が悪いので。
「ひとまず付いて来てください。応接室で異世界についてお話しをさせて貰いましょう。」
目の前の彼の手を掴み立ち上がらせ顔を見る。
その顔は歴とした大人のようであり成人してるように見える。
しかし、その背後には幼さのようなものを感じる、この不思議な感覚は始めての経験だった。
彼を連れ目の前の扉を応接室に直接繋げドアノブを捻り彼に魔法を見せる。
これから彼に救ってもらう世界と元の世界にはない概念を教える為。
ゲームやってたら目の前に神とか名乗る女に異世界守れって言われた。
よくある転生系か転移系か知らんがその女が美人だからおっけーって言ったけどあのゲームの続きどうするか。
レベル1裸棍棒縛りで残りボス3体ってとこまでいってたしなぁ。
くだらないことを考えながら俺は辺りを見渡す。
どう見てもここは何もなく床に魔法陣のようなものと壁に1つだけついた扉のみ。
ロスティール…とか言った女は応接室に案内すると言って一つしかない扉を開けた。
確かにそこにはめちゃめちゃふかふかしてそうな革のソファーとなんか高そうなテーブル。
その上にはイギリス映画に出てくる高そうなお菓子とかが乗った金属製の名前がわからん物が乗っていた。
そして、応接室には天使と悪魔みたいな女二人と蚊の羽がついた女三人がいた。
「天使と悪魔と蚊の擬人化?」
思わず口に出した言葉を聞いた蚊の擬人化は一瞬ビクッと跳ねたあと明らかにキレていて顔が真っ赤になっている。
血を吸いすぎたのか?
天使と悪魔は少しウケたみたいだ。
ちょっと吹き掛けてた。
「彼女は蚊なんかではありませんよ。精霊という者です。どうぞ。お座りください。お茶などはいかがでしょう?」
「お茶でお願い。あっ、あと一応自己紹介しようかな。俺の名前は赫影リエンよろしく」
「よろしく。リエンさん。では、お茶を飲みながらお話させてもらいましょう。」
ロスティールの言葉を聞いて蚊…精霊は何もないところから湯気のたったティーポットと2つのティーカップを出し、カップをまずロスティールの目の前に起いて上品にお茶を注いだ。
精霊はくるりと俺の方を向きすごい勢いでカップを俺の目の前にドズンと言う音出しながら叩きつけた。
しかも、常時俺の目を睨みつけながら。
俺のカップに上からドバドバお茶を注ぎ周囲にめちゃくちゃ溢れてるし、なんなら取っ手にもかけてる。
注ぎ終わったあと飲もうと取っ手を掴もうとしたらピンポイトで熱々のお茶を手にかけようとしたので咄嗟に引っ込めた。
避けられて不機嫌に舌打ちをしてティーポットをその場から消した。
さっきから出したり消したりをしてるのを見てこれが魔法なんだと気づいた。
俺の世界にはないはずのものが目の前で起きている。
そんな俺を見ていたのかロスティールが口を開いた。
「ご覧いただけ通り今のが魔法。魔力をあらやる姿に変え使うことができる力。生活に戦い色んなものに活用できる便利で危険な力の一つです。しかしこれは魔力に依存していて魔力が足りてなかったり枯渇してれば使えない。その代わり魔法の式さえ暗記していればすぐに使えます。」
ロスティールがそう言いながらお茶を一口飲みテーブルに置き再び話を続けた。
「そしてもう一つ、スキルというもの。こちらは魔力を使わないため魔力切れという概念がありません。しかしこちらは戦闘による経験や修行で身につく力の一つです。こちらも戦闘や生活に活用できるものがあります。」
ロスティールは俺に魔法とスキルの説明をしているようで不思議と耳に殆どの言葉が入ってきた。
いつもなら入ってきた方向とは逆に流れて消えるはずなのになぁ。
「異世界あるあるの魔法とスキル…それって送られる俺も使えるの?」
「お気になさらず。ちゃんと使えます」
それさえ聞ければ原理とか別にどうでもいいか。
やっぱ魔法とか使うんだから中世っぽい感じなのか?
「なぁ。俺が送られる世界って魔法とスキルがあるのは分かったんだけどさ。俺の世界と比べるとどんくらいの時代なの?やっぱ中世みたいな感じ?」
「中世よりはかなり進んでいます。銃や汽車などがありますから」
ロスティールは次に異世界にいる基本的な種族と魔物についての説明を始めたが正直興味はない。
そういうのは自分で確かめたい。
それより魔法にスキルそして銃。
これほどワクワクする三単語はないな。
だが
「そういえば聞いてなかったけど。何から世界を救えばいいだ?魔王?」
「…似たような存在です。いずれ相対する時が来るでしょう。」
そう言いロスティールは立ち上がり最後の力について話し始めた。
「最後に加護と呼ばれるものについて…加護は我々、神が授ける力です。授かった者に有益な効果を与え、その道を後押しする神からの贈り物。」
ロスティールは手から様々な色の3つの光を無から出すとこう言った。
「そして、今世界を救う事に特化した残っている加護をここに持ってきました。これらはとても強力ですが…授けるにはそれぞれにあった心情や内面…つまり適正が必要です。」
3つの光は優しい赤、澄んだ青と薄い黄色がロスティールの手の上で揺らめきながら浮遊していた。
「この赤は忍耐。青は慈悲。黄色は救恤と呼ばれるもので神が授けられる加護としてはある程度ラインが低い…はずなんですが」
しばらく3つの光を眺めたあとロスティールはそれらを再び消してしまった。
てっきり全部くれるかと思ってたのに全部仕舞われて悲しい…
「リエンさんはどの加護にも適正がありません…おかしいですね。」
うそ…もしかして…適正ゼロってやつ…!?
まじかよ。落ち込むわ。ゲームだと我慢強いから忍耐くらいは貰えるかなって思ってたんだけど。
貰えるもんは全部欲しいからできれば全部欲しいんだけど。
そんなことを考えていたら突然部屋全体の雰囲気が暗くなった。
明かりが消えて…のではなく部屋の雰囲気が暗くなった。
まるで深海の底に沈んだような感じ…
この異質な状況気にならねぇはずがない。
目の前のロスティールに話しかけようとしたら、あいつは目を大きく見開きあり得ないものを見るかのように天井を見つめていた。
天使たちはビクビクと震え、お互いで抱きしめ合い天井を見つめていた。
そんな天井を見つめているので気になって上を見てみた。
そしたら
「可哀想な人の子よ…♡加護が欲しいなら…私が授けてあげましょう♪」
天井は黒いタコの触手みたいなので埋まりその中心に巨大なハイライトのない黒い目がこちらを見ていた。
TRPGだったらSANチェックだなぁ…
本作をご愛読していただき、ありがとうございます。




