四話 脳髄に刺さり、記憶を読まれる。
残酷な描写があります。
流血などの描写も含まれています。
上の黒い触手目玉は俺に加護をやると言ってきた。
明らかにヤバそう。だって神のロスティールがちょっと震えてるし。
しかも聞こえてくる声の違和感がすごい。
女であることはわかるが色んな年や音の違う声をゴチャゴチャに混ぜてそれらがランダムに聞こえてくる。
何より…
「ビジュアルがめちゃくちゃタコ邪神に出てきそう…」
ついそんなことを呟く。
だってそうだろ?
黒くて、触手があって目玉。
精神がハチャメチャになるぅ〜。
『たこじゃしん?』
まあ…聞こえてるよな。
「えーと。俺の世界にあった架空の邪神。普段は海の中で寝てて起きたら世界がなんやかんやあって滅ほろぶ。」
『うーん。その説明じゃなんとなく分かんないしもっと詳しく知りたいなぁ〜。ねぇ?ロスティールちゃ〜ん。私を部屋に入れてよ〜♡』
「なッ!?何を馬鹿なことを!貴女をここに入れるわけないでしょう!?しかも貴女の加護は絶対に渡させません!」
物静かそうだと思ってたけどなんかめちゃくちゃ慌ててね?
てか天使たちもずっと脅えてるし、もしかしてコイツ相当やばいな?
『年長者は敬うものじゃーん。私だって人の子達に加護あげたいなぁ♪生意気なロスティールちゃんは可愛いけどぉ。素直なロスティールちゃんも私は可愛いと思うなぁ〜♡』
触手でハート作ってアピールしているが正直目玉と触手の見た目で可愛いアピールは俺でも無理だと思う。
というか年長者とか言ってるしこの黒ダコ、ロスティールより年上ってことか。
まあ気になることはまだあるが…
このやベェヤツが授ける加護ってめちゃくちゃ強いんじゃね?
思い立ったら吉。
俺は黒ダコに話しかける
「なぁ。加護くれるって言ったよな?」
『言ったねぇ♪私の加護は誰でも使えるよ♡今ある加護に適性がない君でも私のなら…♡』
「なりません!リエンさん彼女に耳を傾けようとは思わないでください!彼女をここから出したら私が貴方に適性のある加護を探してきます!ですから!」
『うーん。でもさぁ?これ以上は完全に時間の無駄だしぃ♪この子も乗り気じゃなぁい?』
ロスティールがここまで拒絶するのは加護にデメリットでもあるのか?
だがデメリット以上のプラスもあることもある。
あとは勘。
やっぱこういうときの勘は大体良いもんだ。
しかもわざわざ適性を探しても時間を食うだけだし、誰でも使える加護なら貰って損はねぇ。
「ああ。アンタの加護を貰うことにしたぜ。そっちのほうが面白そうだし。貰えるもんは貰っとく!」
『思い切りの良い子は可愛くて好きだよ♡よぉ〜し♪お互いの同意は得られたしぃ♡今から本格的にそっちに向かって加護を授けてあげよう♪』
黒ダコがそう言った瞬間ロスティールは部屋全体を光らせ、両手で何重にも重なった魔法陣を展開している。
一方、黒ダコの目玉から女の手が突き破り黒い液体を床に滴らせる。
手は右手だけ出ており、床には黒いドロリとした液体が落ち続けてるのに右手だけは異様にキレイだった。
「ッ!間に合わなかったッ…」
『ひどいなぁ〜?私はそこの子にお願いされて加護を授けようとしてるのにぃ。まあ右手だけでも授けられるしその子の世界の記憶も気になるから。こうしちゃおっ♡』
ロスティールにたらたら言ったあと黒ダコは俺に自分の触手を伸ばして…
俺の頭めがけて触手を突き刺した。
とてもまずいことになった。
手元にあった加護はリエンさんとは適性がない為に他の神から加護を譲っていただこう考えていた矢先に…
彼女…
神々の中で最も旧く、混乱を司る恐ろしい存在。
ここに入られた時点で無理やり追い出すことはできなかった。
これ以上入られないように防御結界も張ったはずだった。
私の全力で形成した結界もただ飛び越えるように無理やり押し入り、あろうことか私のこの領域を穢している。
そして、今彼女は自身の体から飛び出させた一部を彼の頭に刺している。
その場にいた私と配下の者達が唖然としている中、彼女は彼の脳から直接記憶を読み出した。
『ふむふむ。へぇ~♪君の名前は赫影リエンって言うのね!よろしく♡これがゲームね。娯楽部分がとてつもなく発展しているし楽しそうな世界♡これが君が言ってた邪神かな?これが君のお友達かな?面白そうな友達達だね!私も会ってみたいなぁ♪』
クチュクチュと音をたてながら彼の記憶を触手で読み取っていく。
脳を読まれているリエンさんは目がおかしな方向へ何度も向かい、口からは泡が出ている。
その光景に唖然としていたがすぐに持ち直し彼女に向かって魔法でやめさせようと力技で引き離そうとしたが…
力の差が大きすぎて彼女を止めることすらできない。
なんともないように記憶を楽しげに読み取り続け…
『君、とても面白い子だねぇ♡加護は君が一番楽しめるヤツにしよう!なんなら加護も少し改変してこのビデオゲームみたいにさぁ?ね?楽しそう♡』
全ての記憶を読み終わったのか頭から引き抜きグチャグチャになった脳がへばりついている。
一方引き抜かれた彼はその引き抜かれた反動でよろめきながら何歩も足を滑らせ続け、倒れそうになったところを部下の悪魔が支えた。
彼女は残骸がへばりついた触手を目に入れ
『う〜ん♡美味しい♡』
おそらく向こう側でその残骸を舐めたのか食べたのかそんなことを呟くと今度は右手の指先だけで離れたリエンさんを再生させた。
ぽっかりと正確な丸が空いた穴はすぐに塞がり、リエンさんは顔を上げる。
「うぇぇ…気持ちわりぃ。うっ…ヴォェェ」
いくら再生しても経験したものからか顔色を真っ青にさせその場で吐き始めた。
だが違和感が残る。
彼は一歩手前とはいえ死を経験したのだ。
泣くでも怒るでも発狂するでも恐怖するでもない。
ただ気持ち悪い。
その言葉だけが出ることに少しだけ頭に残ってしまった。
黒ダコに脳クチュされてからめちゃくちゃ気持ち悪い。
ゲームとか映画の中に時々ある展開をまさか受けるとは思わなかった。
「昔あいつらと見たAIに支配から抜け出す映画思い出すんだけど…」
『君の記憶で見たよ♡映画って楽しそうだよね♪今度仕入れてもらお♪』
正直、まだ気持ち悪いし動きたくねぇ。
刺された所を触るもそこには穴などなく、元々なかったような感じがする。
そういえば黒ダコに脳を弄られた時、アイツが見た俺の記憶を俺も見た。
走馬灯みたいな光景は俺に死を感じさせる。
「リエン様。大丈夫でしょうか?」
「少しだけ楽になってきた。もう、立てる。」
悪魔が俺の体調を気にしながら、常に背中を擦ってくれたからか少しずつ楽になってきた。
気持ち悪さが少しずつ少なくなって、立てるようになるまでは回復したのですぐに俺は立とうとしたがいきなり立つとクラっとするやつが来て少しフラついた。
少しフラついたが今はしっかりと地面を踏みしめている。
にしてもあのタコ、いきなり人の頭刺して覗き見とか頭おかしいんじゃないのか?
加護をくれるっていうがなんかコイツ思ったよりヤバイやつな気がしてきた。
文句言ったほうがいいなこれ。
「おい!黒ダコ!人の頭刺して挙句、記憶見るとかどういう神経してんだ!」
『私は神だから神経はないよ♡けど君凄いね!私は年長者な分、数多くの人間に顕現願われたり私から現れたりするから数え切れないほど人間と交流してるんだけど…さっきリエン君にやったこともよくやるんだよね♪大体は精神が壊れるから直したりするんだけど。その後って怯えられてお話にならないから悲しいんだよねぇ…私は人の子達とお話するの大好きなんだけどなぁ♡』
うーん…コイツやばいな。
文句言いたかっただけだったけど、人に会うたびこれやるとか普通に邪神だろ。
ビジュ的には合ってるから誰でも邪神って分かるのが救いか。
『さて、じゃあそろそろ加護をあげちゃう♡』
そうだ、忘れてた。
どの加護にも適正ないから目の前の邪神タコから貰うことにしてたんだ。
「あー。そうだった。よっしゃさっさとくれ。」
『ふふふ♪じゃあ私のところまで来てほしいな♡』
近くまで来い…と。
まあそれくらいならいいか。
流石にもうあんな頭のおかしいことしねぇだろ。
てかこんなんが神だったら俺でもなれそうつまんなそうだけど。
「分かった。」
邪神のところまで歩こうとした瞬間さっきまで俺を介抱してくれていた悪魔の女が俺の手を掴み、必死に首を振っていた。
その表情には恐怖が滲み出ていた。
悪魔が引き止めるほどの神の加護と解釈したら凄そうだけど頭弄るくらい頭おかしい邪神だから引き止めるのも納得する。
「お待ちください!リエンさん!あなたが受け取ろうとしているものは!」
ロスティールがなにかを言いかけたあと周りから音が消えた。
ロスティールもすぐにそれに気づきすぐに黒ダコに向かってなにかを言っている。
『さぁ♪邪魔な声も聞こえなくなったことだしさっさと始めようか♡』
悪魔が必死に掴む手を振りほどき、アイツに向かって歩き始める。
後ろの悪魔が必死に追いかける気配を感じるもすぐにそれも消えた。
黒ダコに近づくと気づくことがあった。
目から飛び出た手は思ったよりデカイ。
俺の手の倍…いやそれ以上はある。
「ほら、近くまで来たぜ。」
『ふむ。やっぱり近くで見ると君は可愛いね♡小さいし顔も整ってる。可愛がりたくなるね♡』
「ありがとう。さっさとくれ」
目の前のタコから笑い声が響いたあと、こいつの手のひらから黒い渦が回っている。
渦の回転は早くなりやがて形になっていく。
その形は犬…というよりも。
狼
渦は黒い狼になってこいつの手のひらで座り込んでいる。
『さぁ!加護受け取り勇者となる者よ♡これが其方に授ける
加護:狂気だ』
最後までご愛読、誠にありがとうございます!
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