表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/13

第2話:ギルド登録と、"少年"の才能

 街の名前は「アークライト」。この地方では比較的大きな商業都市らしい。

 俺がまず向かったのは、兵士に教えてもらった「冒険者ギルド」だった。魔石を換金し、あわよくば冒険者として登録するためだ。この世界で生きていくには、身分と金、そして力が必要になる。

 ギルドの建物は、街の中でも一際大きく、屈強な男女でごった返していた。酒と汗の匂いが混じり合った、むせ返るような熱気。完全に場違いな俺は、おどおどしながらも受付カウンターへと向かった。

 カウンターにいたのは、気の強そうな栗毛色の髪の女性だった。

「あら、新顔だね。何の用だい?」

「あの、これを換金したいのと、ギルドに登録を……」

 俺はカウンターに、ゴブリンから手に入れた魔石と、森で採取した眠り草を置いた。

 女性は手際よくアイテムを鑑定し、銅貨13枚をカウンターに置いた。俺の鑑定通りの金額だ。

「登録かい? うちは実力主義だよ。あんた、戦えるのかい?」

「い、一応、ゴブリンなら……」

「ゴブリンを一人で? へえ、見かけによらないね」

 女性は少し感心したように言うと、登録用の書類を差し出した。名前や特技を記入する簡単なものだ。俺は名前を「ケンジ」とだけ書き、特技の欄には、悩んだ末に『探索』とだけ記した。いきなり「鑑定」なんて書いたら、面倒なことになりそうだったからだ。

 登録を終え、俺は晴れてFランクの冒険者となった。Fランクは、薬草採取やゴブリン討伐といった簡単な依頼しか受けられないが、今の俺には十分だ。

 ギルドの依頼掲示板を眺めていると、背後から声をかけられた。

「あの……すみません」

 振り返ると、そこにいたのは10歳ぐらいの子供だった。痩せた体に、継ぎ接ぎだらけの服。短く切った髪と少年のような口調だが、どこか中性的な顔立ちをしている。

「何か用かな?」

「冒険者の方、ですよね? お願いがあります! 僕を、僕を弟子にしてください!」

 その子はそう言うと、勢いよく頭を下げた。一人称は「僕」。

 あまりに唐突な申し出に、俺は戸惑うばかりだ。

「弟子って……俺は今日登録したばかりのFランクだぞ? 何の力にもなれない」

「そんなことありません! あなたは、あのゴブリンを倒したんですよね? 僕、見てました! 森の入り口で、石ころ一つでゴブリンを……!」

 どうやら、俺の初戦闘は目撃されていたらしい。恥ずかしいやら、気まずいやら。

 その子は、病気の母親を治すための薬代を稼ぐために、強くなりたいのだと語った。だが、ギルドに登録するには金がかかるし、誰もこんな子供を相手にしてくれないのだという。

 真っ直ぐな瞳を見ていると、無下に断ることができなかった。それに、この子のことが少し気になっていた。俺は、目の前の"少年"に向かって、スキルを発動した。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

名前:リオ

種族:ヒューマン

性別:女

職業:なし

レベル:1

HP:80/80

MP:150/150

スキル:

・魔力操作 [A]

・生活魔法 [F]

才能:

・【魔導の寵児】:あらゆる魔法に対して極めて高い適性を持つ。習得速度、威力、効率の全てに強力な補正がかかる。ただし、現時点では開花していない。

状態:栄養不足、性別を偽っている、強い決意

詳細:類稀なる魔法の才能を秘めた少女。危険から身を守るため、男の子として振る舞っている。適切な指導者がいれば、歴史に名を残す大魔術師になる可能性を秘めている。母親の病を心から憂いている。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

「なっ……!?」

 鑑定結果を見て、俺は絶句した。

 女の子!? しかも、スキルランクA? 才能【魔導の寵児】? なんだこれ、主人公スペックじゃないか。こんなとんでもない才能が、街の片隅で埋もれていたというのか。

 危険から身を守るため、か。確かに、この世界で幼い少女が一人で生きていくのは過酷だろう。男の子のふりをするのも無理はない。

 この子の才能を開花させることができれば、とんでもない戦力になる。いや、そういう損得勘定だけじゃない。この子の未来を、俺の鑑定スキルが見つけてしまった。なら、俺がすべきことは一つだ。

「……分かった。弟子がどうとかはまだ早いけど、お前の面倒は見てやる。ただし、俺の言うことは絶対だ。いいな?」

「は、はいっ! ありがとうございます、師匠!」

 満面の笑みで叫ぶリオ。こうして俺は、異世界に来て早々に、とんでもない才能を秘めた「僕っ子少女」の師匠という、柄にもない役割を背負うことになった。

 まずは、この才能あふれる弟子と、俺自身の当面の生活をどうにかしなくてはならない。

 俺は換金したばかりの銅貨を握りしめ、リオを連れて宿屋を探し始めた。手元には、まだ換金していない「お宝」がいくつも残っている。千円札、スマホ、モバイルバッテリー……。

 これらを鑑定し、正しく価値を理解してくれる相手に売ることができれば、大金が手に入るはずだ。

 鑑定スキルが示した、新たな可能性。それは、埋もれた才能を見つけ出し、未来を切り開く力。

 俺の異世界での物語は、一人の少女との出会いによって、思わぬ方向へと転がり始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ