第74話 衝撃の告白
倉庫は轟音の余韻に包まれていた。
身体を揺らす微かな振動は残り、舞い上がった粉塵が霧のように漂う。
その静寂の中──
ゼルドアは、壁に叩きつけられたハンスへ、憐れむような視線を向けた。
「無様だな。
……戦神が聞いて呆れる。」
重く、冷ややかな声。
義腕が唸り、魔蒸気を纏いながら再び岩槍が装填される。
「まずい……!」
レイナードが烈風を纏い、低く身構えた。
「させるか!」
リリアは聖銀剣を幾重にも重ね、ゼルドアへ向けて放とうとする。
「貴様あああッ!」
剣に、渦巻く炎を収束させるルシアナ。
三人が、今まさに飛びかかろうと足を踏み込んだ時だった。
ダンッ──
遠く、乾いた炸裂音が響く。
次の瞬間、ゼルドアの頬を弾丸が掠めた。
「……他にも隠れていたか……」
ゼルドアは弾道の先を睨みつけると、装填された岩槍を投げ放った。
岩槍は、轟音とともに離れた建物を貫き、上層が崩れ落ちる。
「あっぶなー!
狙撃は私の専売特許なんですから、勘弁してくださいよーッ!!」
崩れた建物の下層から、カンナの声が響いた。
「カンナ!無事か!?」
リリアが叫ぶ。
「大丈夫です!
このまま移動しながら援護します!」
そう言って、カンナは再び潜伏した。
その間に、リリア、レイナード、ルシアナは急いでハンスの元へと駆け寄る。
「いつまで寝ている!さっさと起きろ!」
リリアが怒鳴りつけると、ハンスは瓦礫を押し払い、すぐさま立ち上がった。
「すまん!助かった!」
「頭は冷えたか、バカ者め。」
「……ああ。
まずは……奴を倒さんとな。」
ハンスは拳を握りしめ、ゼルドアを睨む。
ゼルドアはその様子を眺め、薄く、不敵な笑みを浮かべた。
「“倒す”、か……
この期に及んで“殺す”と言えぬか。」
冷静になり、怒りを胸の奥に抑え込むハンス。
深く息を整えると、静かにゼルドアへ問いかけた。
「貴様も、イデアリンドの幹部ではないのか?
なぜ仲間であるアローナを手にかけ、このような蛮行を続ける?」
ゼルドアは不快さを露わにし、眉間に皺を寄せた。
「あんな、苦痛から逃れたいだけの……
浅ましい狂信者共と、同じにされては困るな。
奴らは、“星の御心”と言えば、何も疑わず動く消耗品に過ぎん。」
「何と卑劣な……!」
ルシアナは嫌悪感を露わにする。
彼女をなだめるように、リリアが肩に手を添え、ゼルドアに問いかけた。
「どういうことだ……?」
ゼルドアは、義腕を軋ませながら続ける。
「俺は、必ず調停者と救済者を殺す。
今すぐ世界を終わらせ、楽になるなど許さん。
そして、醜い世界の不要な再生も、決して認めはせん。
希望を砕かれた人類全てが、星の終わりに絶望しながら生きるべきだ。」
「……理解に苦しむねぇ。」
レイナードは呆れたように両手を広げた。
「お前たちが理解する必要はない。
大切なものを奪われ──
人生を狂わされた俺が、世界に課す“懺悔”の時間だ。」
「懺悔だと……?
世界が、貴様に何をしたというのだ?」
リリアが眉をひそめ、問いを重ねる。
ゼルドアは、重く、しかしどこか悲しげな声で言った。
「……いいだろう。
最初で最後のお前の願い──
父として、聞いてやらんとな……我が息子よ。」
「何を言っている……?
俺が、貴様の息子だと……?」
ハンスの顔から血の気が引いた。
「どういうことだ……?
お前の父は、アドルフではないのか?」
リリアはハンスに視線を向け、唖然と目を見開く。
ゼルドアは静かに、しかし確かな憎しみを込めた声を響かせた。
「教えてやろう。
お前に──俺たちに何があったのかを。」
彼から語られる過去の因縁。
それは無惨で、悲痛な、ゼルドアの心の叫びのようだった。




