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19自重を捨てて騎士団を調教しよう!①

「なっ!? なんで上に乗るんだ! ユノ」

「このほうが力を入れやすくて、魔力が安定するんで」


 浴場にある香油用の台座。そこに半裸で仰向けに横たわっているレン王子が恥ずかしそうに身をよじる。王子の上に馬乗りになったわたしは、見下ろしながらそう答えた。


「体重かけないようにしたんだけど、重かったですか?」

「いや…」


 最初は台座の横に立って、両手を心臓に当て、魔力血栓を溶かす治療を行っていた。だがそれだと力を入れにくいのだ。


 全身にある魔力血栓を均一に溶かさなければならない治療は、反発し荒ぶる魔力で乱れそうになるので難しい。魔力がごっそり持っていかれ、わたしの頬を、玉のような汗が落ちていく。


「ふぅ、暑い…」


 王子に馬乗りになるなんて不敬かなと思いつつも、着ていた上着を一枚脱ぐ。魔力血栓を溶かすときに発生する熱で、レン王子も汗だくだった。


 魔力血栓はこれまでの治療でようやく半分ほど溶けたところだ。レン王子はすくすく背が伸び、魔力量も増えている。


 今でも魔力量が多いのに、全部溶けたら一体どれだけの魔力量になるんだろう。4人の王子の中で、レン王子がきっと一番の魔力量になるね、今からすごく楽しみだよ


「んっ…」


 マッサージされ、思わず声が出てしまい、慌てて口元を押さえて赤面するレン王子。


 まぁ、なんてことでしょう!? レン王子は漏れる声まで愛らしいわ!


 わたしは思わず顔が緩んで、ニヤニヤしてしまった。


「ふっふっふ、声抑えなくていいですよ。反応があるほうが、わたしも治療しやすいですから」

「ユノ、私で遊んでるだろ?」


 ニマニマしてるわたしを、じと目で睨むレン王子。


「とんでもありません、わたしがそんな不敬なことするわけないじゃないですか~(棒読み)」

「まぁいい、きっと成長したら逆転できるから…」

 

 両手の指をワキワキしながら、ニヤニヤして答えるわたし。ぷうっと膨れた顔になるレン王子。


「できることなら早く年相応の姿に成長して…、ユノに気持ちを伝えたい」


 呟きよりも小さな声で、レン王子が何かを呟いた。


「今、何かいいかけましたか? 集中してたらよく聞こえなくて」


 でも集中していたわたしは、聞き逃してしまった。


「いや、たいしたことじゃない」


 だがレン王子は口を閉ざしてしまったので、なんと言ったかはわからずじまいだった。


 日課のマッサージと健康診断。領地の整地でわたしが魔力がすっからかんになっていたり、レン王子がお疲れだったりで、時間をかけてマッサージできるのは久しぶりだった。


 後はアレを片付けなくちゃね…



◇◇◇



「…酷い練度だな」

「…想像してたより酷いですね…」


 現状の兵力を確認しておこうと、騎士団の練習を見に来たレン王子とわたしは、言葉を失った。


 騎士団の練習場では、団員たちが駄弁って休んでいた。そして一番ダラダラしているのが騎士団長だ。長椅子に寝転んで酒を飲んでいる。


 騎士団には、騎士団長のように国から派遣されている者と、兵役の領民の両方がいる。だが、その両方に覇気がない。


 しかもトップの騎士団長が最もやる気がない。そのくせ騎士団長を中心に一致団結して、妙にまとまっているから厄介なのだ。


 レン王子に心から忠誠を誓う者を増やしていきたい、今は老兵たちしかいないからね。さて、どうやって忠誠を誓わせようか…?


 考えを巡らすが、すぐに良案は思い浮かばなかった。


 ようやくわたしたちに気づいた騎士団長が、「お疲れ様です」とばつが悪そうに頭を下げた。


 そんな中、隅のほうで一人黙々と訓練している兵士の姿が目についた。レン王子もその兵士をじっと見ている。


 騎士団の中で実力は群を抜いている。レン王子の騎士にするのに、申し分のない実力だ。レン王子も同じ兵士に目を付けたのかもしれない


「練習を見せてもらってもいいかしら?」


 わたしはその兵士に声をかけた。だが返事がない。


 あれ? 集中していて聞こえないのかしら?


 その兵士は細身で筋肉質、鍛えた身体つきをしている20代ぐらいの青年だった。どことなく気品ある顔立ちをしている。


 すると、突然振り返ったその兵士に睨まれた。まるで親の仇でも射殺すような瞳で睨まれ、戸惑うわたし。わたしのすぐ横をその兵士が歩き去って行く。


「目障りだ、俺は聖女って奴が大嫌いなんだ」  


 そう小声で呟くのが聞こえ、すれ違い様に肩が強くぶつかり、よろけて転ぶわたし。


「何やってるんだアスラン! 聖女様に謝れ」


 失礼な態度を騎士団長が諫めようとする。だが無視して歩き去ってしまう兵士。


「大丈夫かユノ?」


 呆然として中々立ち上がらないわたしに、手を差し出し起こしてくれるレン王子。


「ええ。すごく新鮮だったわ!」


 デブのときは、相手をはじき飛ばしてたけど。痩せると自分が転ぶのね、なんだか新鮮だ


「はっ!? 新鮮だと!」


 『アスランというのね、あの騎士、レン王子の護衛にぜひ欲しいわ!』わたしそんな思いで呟いた。

 だが、なぜかわたしの呟きに、悲壮な顔になり、レン王子が驚いている。


「すみません聖女様!、最近砦に左遷されて来た者で、私の命令もきかないのです」

「ああいうのが好みなのか…確かに背も高く顔も整っていたが…」


 ブツブツ小声で呟くレン王子。だが、被るように話かけてきた騎士団長の大声にかき消されてしまう。


「大丈夫ですので、気にしないでください」


 騎士団長の右手に視線を落とし、わたしはにっこりと微笑んだ。


 右手に酒瓶を持った騎士団長の命令は…、うん、わたしも聞きたくないかな…



◇◇◇


                  

 少し離れた場所でやり取りを見ていたアメリが、厳しい表情でアスランという兵士が歩き去るのを睨んでいる。


「ユノ様、あの者にあまりお心をお開きになりませんように。風貌はだいぶ変わってますが、第一王子の護衛だった者ですわ」


 小声でわたしに耳打ちするアメリ。


「それってスパイだってこと!?」


 わたしはアメリの不穏な言葉を聞いてドキリとした。

面白かったという方は、評価の「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」していただきますと嬉しいです(*´▽`*)。

※「自重を捨てて騎士団を調教しよう!」回は、文字数多くなってしまったので①②③で分割して更新します。「20自重を捨てて騎士団を調教しよう!②」は土曜夜に更新します。

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