18自重を捨ててお金を稼ごう!②
マギサーチでマッピングした画面を見ると、青い点がいくつも点滅していた。そこからピコンピコンと電子音が鳴っている。
「あっ、さっき鉱物資源と塩化ナトリウムで、再サーチかけておいたんだった」
塩湖や塩でサーチしたら見つからなかったが、どうやら塩化ナトリウムでヒットしたようだ
老人が話してくれた昔話に出てきた「しょっぱい湖」はやっぱり塩湖だったんだわ! 塩湖跡を見つければ岩塩が取れるはずだ!
「レン王子! 塩が見つかりました!」
「はっ!? 塩!」
わたしがそう報告すると、いきなり塩と言われレン王子は驚いた顔になった。
「内陸で塩とは、まさか塩湖か?」
「正確には塩湖跡ですけど、詳しくは視てみないとわかりません」
驚きつつも、レン王子は直ぐに、塩湖の可能性を示唆してきた。
「すぐに取りに行きましょう!」
わたしは流行る気持ちを抑えもせずに叫んだ。そしてレン王子を振り回す勢いで、わたしと老兵団は、領地にある塩湖跡に向かった。
◇◇◇
「ここが塩湖跡なのか?」
「そのはずなんですが…」
着いた場所は、岩と石ばかりの赤土の渓谷だった。わたしは表面の岩と石と赤土を削り取るように、空間収納に収納する。だが何度か繰り返しても、塩湖跡は見えてこない。
「マギサーチ!」
わたしは片手を地面に当て呪文を唱えた。地面の直下を詳細にサーチするためだ。
「あっ! 違かった、塩湖跡じゃなかったみたい」
わたしは驚いて、思わず声をあげた。
「そうか、違ったのか…」
レン王子が少しがっかりしたように呟いた。
「えっと、その…」
わたしはサーチでわかった状況を、上手く説明できる自信がなかったので、力技でいくことにした。
渓谷に右手を向けると、雷魔法を放った。岩壁が爆破され、ぼっこり空いた穴を見て、驚くレン王子。一緒に来ていた、老兵グレイル・バルザー率いる老兵団の一行も唖然としている。
「ユノ…!?」
「ユノ様?」
「レン王子、この穴から下に降りられるように、地下に向かって階段を錬金してほしいです」
「うむ、わかった」
わたしの意図を察してくれたレン王子は、手早く階段を錬金してくれた。
長い長いその階段を、暗い穴の中へ、一歩一歩降りていくわたしとレン王子。わたしたちの前には老兵グレイル・バルザーが、後ろには老兵団のお爺ちゃん騎士たちが続いた。
穴の中は鍾乳洞になっていて、時折、天井から水滴が滴り落ち、顔に当たった。わたしたちは、足元を照らす小さな明かりを頼りに、階段をさらに下へ下へと降りて行く。
そして落ちた水滴が、水に落ちて反響する水音が暗闇に響いた。
「ユノ、まさかここは…」
レン王子が「ライト!」と叫んで、明かりの魔法を広域に使った。
パアッと輝く明かりに照らされて、青と緑の塩湖の水面がキラキラと揺れる。
「塩湖跡じゃなくて、地下の鍾乳洞に塩湖が残っていたみたいです」
わたしも地下に降りてみるまでは半信半疑で、どう説明していいか、わからなかったのだ
「まさか塩湖があるとは…」
レン王子の金色の髪に、青色の湖面の光が照り返す。宝石なような青い瞳に、湖面の光が反射して映り込んでいる。暗がりの中、金と青のコントラストが幻想的なぐらいに美しくて、わたしは思わず息をのんだ。
「推測ですけど、湖は干上がって消えたんじゃなくて、水脈が地下に沈んだんでしょう。まるでレン王子が来るのを、待っていたみたいですよね」
わたしがそう言って笑うと、レン王子がはにかんだように照れた。
「おお~確かに、これは塩ですな!」
塩の結晶が溶け出してできた塩のつららを折って、かじっているお爺ちゃん騎士たちが歓声をあげた。
「さぁ、塩をブロックに切り出して売りましょう! お金を稼いで貧乏領地脱却だ~!」
塩湖跡を見つければ、少しは岩塩が取れると思っていた。だが塩湖が見つかり、他にも石灰石や石膏まであったのだ。予想以上の収穫にわたしのテンションは上がった。
あっ、石灰石は肥料にも使えるが、セメントの原料になるよ。これでレン王子に、あんなモノやこんなモノも錬金してもらえるよ、やったね!
◇◇◇
取れた塩は、近くの町で換金してもらうことにした。切実にお金がないからね
担当してくれるのは、王都から一緒にやってきた元商人の男性、ネギルさんだ。
ネギルさんのほうから「もしよろしければ、私が塩を町で換金してきましょうか?」と心配して声をかけてくれた。どうやらわたしが「お金がない!」と叫ぶのを、聞かれていたようだ。
うわぁ恥ずかしい、でも今この領地にお金がないのは本当だものね…
「ユノ様がお持ちの他の商品も見せてください、塩と一緒に売ってまいります。帰りは物資を買ってきますので、必要な物のリストをください」
「ありがとう助かるわネギルさん、お願いするわね」
「う~ん、塩は南の領地でも取れるはず、何か差別化できる物が欲しいよね。そうだ! 塩のシャンデリアとか塩の彫刻とか作っちゃう!」
確か海外にある岩塩抗に、そんなのがあったはずだ
「レン王子、塩で錬金して欲しい物があるんですけど」
わたしは試しに、いくつかレン王子に錬金をお願いしてみた。
「ユノ、こんな感じでどうだろうか?」
すると凄い物ができた。美的センスの差なのかしら? 豪華絢爛なシャンデリアと、めっちゃ美しい女神像を数個作ってくれたよ
「あの、レン王子この像はいったい?」
「ユノをイメージして作った、ユノ女神像だ」
「はぁ!?」
そう言ってニコニコしているレン王子。「ほぉ~いいですね!、これは売れますよ!」と歓喜しているネギルさん。
最初に出会った頃から思ってたけど、レン王子には「わたしを美化しすぎるフィルター」がかかっているようだ…
うん、いろいろツッコミたいことはあるが、金欠なので女神像も売らせてもらうことにしたよ
◇◇◇
数日後、大量の物資を荷馬車に積んだ、ネギルさんが帰ってきた。結果から言うと、思っていたよりも塩が高値で売れた。
南の領地でも塩は取れるはずなのに変ね…? まぁ助かったけど
「レン王子、塩と塩派生の商品を領地の名産品にしましょう! あっ、彫刻はわたしの以外でお願いします」
「ユノにそっくりで美しくて、よい出来だと思ったのに…」
わたしは両方の手でバツを作って見せた。するとレン王子が不満そうな顔になり、唇を尖らせた。
「でもすでに、ネギルに頼まれて1000個ほど渡した後だぞ」
「なんですって!?」
辺りをキョロキョロと見回すが、すでにネギルさんの姿も馬車もない。わなわなと震えるわたしを見て、レン王子は悪戯っ子みたいにニヤリと笑った。
「そもそも、ネギルに領内の商売の自由裁量権を与えたのは、ユノだろう」
…そうだった。レン王子に最初に忠誠を誓ってくれて、商売が得意なネギルさんには、活動しやすいように自由裁量権を与えたのだった
「何はともあれ…、やっと領地改革に希望が見えてきましたね」
塩は国の専売じゃないから、王家に取られることもない。文句も言われないはずだ
「ああ、後は後回しにしていたアレだな、ユノ」
「ええ、アレが残ってますよね、レン王子」
わたしとレン王子は、顔を見合わせて苦笑いした。そして、二人のセリフが重なった。
「やる気のない騎士団…!」
ブクマ、評価等をいつもありがとうございます。とても元気を頂いています(*´ω`*)。誤字脱字報告も助かりました、頂いた分を修正させて頂きました。




