「金と権力、それが全てさ」
突然の質問に驚いた様子のザキル。
「何の関係がある?」
「あ、い、いえ。ちょっと気になっただけです。あ!言いたくないなら大丈夫です。すみませんでした!」
ザキルは一瞬不服そうな表情を見せたが、やがて徐に口を開いた。
「…ヤクの売人だ」
「えぇ?えぇ!?ヤ、”ヤク”って、ま、麻薬ですか?」
「あぁそうだ。何か文句あんのか?」
「い、いえいえいえいえ。と、とんでもないです!」
カレンはザキルからの回答に驚きを見せたが、特段怯える様子も無くその目を興味に輝かせ始めた。
「ザキルさんてココにはスカウトで入られたんですか?麻薬の人でも入れたってことは、やっぱりその、何かこう凄いことをやってのけたとか?」
「あぁ?」
「やっぱり命の危険とか、危ない目に遭ったこととかもあるんですか?売る相手ってマフィアさんとかなんですよね?」
先程までオドオドした態度だったカレンから突然の質問攻めを受けあっけに取られた様子のザキル。
やがて眉間にシワを寄せ一喝する。
「うるせぇ!何でお前にそんなことまで言わねぇといけねぇんだよ!」
「すっ、すみません。その、つい気になっちゃって…」
肩をすくめ怯えるカレン。
「他に仕事で質問無ぇならさっさと自席に行ってパソコンのセットアップでもしてろ。すぐに仕事は始まんぞ!」
「は、はぃぃ!!」
こうしてカレンは立ち上がり慌てて2ブロック離れた場所に用意された自席へと駆けて行った。
ザキルはそんなカレンの後姿を見て不思議を感じていた。
(あの女、初対面の分際で俺が怖く無ぇのか…?)
今までに出会ったことの無いタイプの人間に若干の戸惑いを見せるザキル。
それから暫くしてザキルは席を立ち最寄の喫煙所へと向かった。
1人タバコを吹かしているとそこにミラージュが現れた。
「よぉ。お疲れさん」
「おう」
「どんな調子だ?カレンちゃんは」
「どうもこうも無ぇ。さっき仕事の説明が終わっただけだ」
「そうか。優しくしてやれよ」
「うるせぇ」
ミラージュもまた静かにタバコを吹かし始めると、突然カレンの素性を語り始めた。
「あの子、お前と同じスカウト枠での入所だよ」
「あぁ?」
「上の推薦らしい」
「っは、あんな間の抜けた女がぁ?」
「あの子ああ見ても凄い子なんだぞ。アダルト業界で色んな記録を打ち立ててて、業界初国営放送でその仕事ぶりが追っかけられた程だ。まさに歴史を変えた子だよ」
「ほぉー」
「何だ?お前、男のクセに知らないのか?」
「うるせぇ!で、それがどうした?カリスマ淫乱女がどうして選定所の目に留まるんだよ。何の関係がある?」
「さぁな。それは”上のみぞ知る”だ。その業界や職種に囚われず本当に有益な人物を評価するっていつもの風刺政策じゃないか?」
「っけ」
「お前だってその恩恵に与った身だろう。仲良くやんな」
ザキルは短くなったタバコを灰皿に押し付けた。そして喫煙室を出て行く去り際捨て台詞を吐く。
「言ってるはずだ。俺の目的は金と権力。あの小娘が俺の仕事邪魔しやがったらタダじゃおかねぇからな」
そう言い捨てザキルはミラージュが残る喫煙室のドアを乱暴に閉め仕事に戻って行った。
ミラージュはそんなザキルの姿をどこか余裕を持った表情で見守るのだった。




