新人職員の誕生
とある高級ホテルの巨大ホール。
数百人からの拍手喝采を受ける1人の女性がステージ上で照れくさそうにもじもじとした態度を見せていた。
拍手が落ち着くと司会の男性がマイクに向かって軽快に喋り始める。
「えー、それではお集まりの皆様。この度我等の業界からなんとあの”人物価値選定所”に入所が決まりましたサンジョウ=カレンさんの祝賀パーティにお集まりいただき、誠にありがとうございます!それでは早速本日の主役、サンジョウ=カレンさんよりひと言いただきたいと思います~」
司会の男から紹介を受けた女性は”カレン”と呼ばれた。その女性はパーティ用ドレスに身を包み艶やかな黒髪を肩の上までなびかせていた。
その顔は純真無垢を絵に描いたような幼くも清らかなもので、大人びたドレスといい意味でのギャップを奏でている。
司会の男にスタンドマイクの元へ導かれたカレンという女性は緊張した面持ちながらマイク、そして観衆に向かって語り始めた。
「あ、あの、お集まりの皆様。本日はこの様な催し物を開いていただき、誠にありがとうございます。ご多忙な中のご足労、本当に感謝申し上げます。この度、私サンジョウ=カレンは”独立行政法人人物価値選定所”へ入所させていただく運びとなりました。私なんかがあの場所で本当にやっていけるのかととても不安ですが、私は私なりに自分が出来る事を精一杯やって、少しでもこの国が良くなる様、全身全霊を込めて仕事に打ち込みたいと思っております。これまで支えていただいた皆様とこの業界に対する深い感謝を忘れず、毎日少しずつ邁進して参りたいと思っておりますので、どうか応援の程、宜しくお願い致します」
挨拶を告げ終わったカレンが深いお辞儀をすると、再び数百人の観衆から盛大な拍手喝采が巻き起こった。
そしてカレンが顔を上げると同時にステージに1人の中年男性が花束を持って上がって来た。
「社長!」
カレンはその男性を視界に捉えると両手で口を塞ぎ驚いた表情を見せた。
カレンから社長と呼ばれた男性はとても嬉しそうに花束をカレンに手渡す。
「いや~、カレン。おめでとう。君は我が社、そしてこの業界の誇りだよ」
「え~!ありがとうございますぅ~」
花束を受け取ったカレンは目にうっすらと涙を浮かべ、片手で口を押さえながら何度も会釈を繰り返していた。
そしてパーティも本番を迎え、カレンは集まった観衆が立つテーブル席ひとつひとつに挨拶に回りながらとても嬉しそうな笑顔を見せている。
迎える観衆もカレンの門出をとても喜んでいる様子だった。
「いや~、カレンちゃん。本当におめでとう!これまで頑張ってきてよかったねぇ!」
「はい!ありがとうございます!」
「しかし見てくれてる人は見てくれてるんだねぇ。今回はスカウトだっけ?」
「そうなんです。いきなりの話で本当にびっくりしちゃいました」
「大丈夫!カレンちゃんなら絶対にやっていけるよ!でももし辛くなったりしたらいつでもこっちに戻って来ていいんだからね」
「えへへ。ありがとうございます。出来るだけそうならない様に頑張りますけど、その時はヨロシクお願いしますね」
「勿論!カレンちゃんの引退を惜しむ声は本当に多いんだから。引退特需でDVD飛ぶ様に売れてるよ」
そんな幸せそうな空気に終始包まれたまま、パーティは和やかに終わりを迎えたのだった。




