ここは”独立行政法人人物価値選定所”
車通りの多いオフィス街。
大きな交差点に面し佇むひとつの大きな建物、どこかの役場を思わせるこの建物内にその組織は存在していた。
「なぁなぁ。そういえば聞いたか?今度新人が入って来るらしいぜ」
「へぇ~!マジ?珍しいな。男?女?」
「女の子だって」
「へー。いつ振りの新人だっけ?」
「”ザキル”以来だよ。ちょっと前にグレープ社のCEOが立候補面接に来たけど落とされたみたいだよ」
「マジで?グレープ社って世界企業ランキング14位だろ?それでも?」
「まぁ色々あるんじゃない?上の連中が決める基準だからなんとも言えないけどね」
「どんな子?可愛い子いるといいなぁ~」
「そういえばお前この前振られたばっかりだもんな」
「っるせ!」
「だけどあの天下の悪人面ザキル君もついに後輩が出来るのかぁ。今度入って来る子は多分ザキル君についてOJTするんでしょ?ひやー、可哀想ぉ~」
「全くだよ。本当俺ザキルの後輩じゃなくてよかったぜぇ」
建物の中では職員と思われる面々が新入職員の噂で盛り上がっていた。
この場所こそ全国民に対し人としての社会的価値を点数に起こす独立行政の集権役所、”独立行政法人人物価値選定所”だった。職員達がそんな噂話をしていると、とある大柄の男が現れた。
「お!噂をすれば」
その職員達は一斉にその男に対し視線を向ける。
一同の注目を集めたその男は身長約190cm程の大柄で筋骨隆々、金髪のオールバックと剃られた眉毛を携えるその姿は仁侠映画さながらの悪人クオリティを醸し出している。
悪人面の男は特に職員達の噂話に気付く様子は無く目的地に向かって歩いていた。
すると1人の女に声を掛けられる。
「ザキル」
その大柄な悪人顔の男は”ザキル”と呼ばれた。反応を見せ振り返るとそこにはボーイッシュなパンツスタイルの女性が立っていた。
「何か用か?」
ザキルのドスの利いた声が響く。
「例の新人のことだよ。聞いてるだろ?予定通りお前の下に就かせる事になったから宜しくな」
「っち。面倒くせぇな」
「順番だよ、文句言うな。お前だって新人の頃は先輩達に世話になっただろ?」
「…ふん」
声を掛けた女はザキルの見た目に怯む様子は無く堂々と新人教育を依頼していた。
ザキルという男も渋々承諾した様子を見せる。その様子を見ていた職員達は小声でヒソヒソと話し始める。
「すっげ。流石はミラージュさん。ザキルにあそこまで堂々と接することが出来るのってあの人くらいだよなぁ」
「本当。相変わらずカッコいい」
ザキルという強面の男に声を掛けた女は”ミラージュ”と呼ばれた。姿勢が良く精悍な顔付きのミラージュは職員から羨望の眼差しを受けている。
「ついにお前も先輩かー。いやぁ感慨深いねぇ」
「うるせぇ。なりたくてなるんじゃねぇ」
「お前の成長には必要な事だよ」
「俺ぁ金と権力さえあればいいんだよ。新人教育なんざダリィだけだ」
そう吐き捨てたザキルという男は上役と思われるミラージュに背を向けその場を歩き去って行くのだった。




