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独立行政法人人物価値選定所  作者: レイジー
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「あなたの人物価値は○○点です」

「…じゅっ、10年働いたんですよ?こんなのあんまりじゃないですか!」


 とあるオフィスの個室。スーツ姿の社員が上司と思われる男に食って掛かっていた。


「これは人事の決定だ。君の働きが給料に見合わないとね」


 上司と思われる男は冷たい表情でその男に解雇通告の紙切れを差し出しす。


「…息子が来年進学するんです。ウチには蓄えもありません。今はどうしてもお金が必要なんですよ…」

「意見や不明点があるなら直接人事に掛け合え。私に出来るのはここまでだ」


 その社員は失意の表情で用紙を手に取るとゆっくりと部屋を出て行った。

オフィスビルを出てからも肩を落とし彷徨う様にして歩く”元”社員となった男。

するとそこに1人の男が現れ声を掛けて来た。


「マコリ=ニソンさんですね?」

「…はい?」


 先程会社からリストラを受けた社員の男は突然自身の名前を呼ばれ振り返った。

するとそこにはカバンを持ったスーツ姿の男が立っていた。


「どうも。選定所の者です。本日はこちらを渡しに」

「え!?」


 元社員の男は”選定所から来た”という男から封筒を受け取るとすぐさま中に入っていた用紙を確認した。

すると先程まで絶望に伏していた表情には見る見る光が宿り、ついには歓喜の声を上げ男に礼を告げ始めた。


「ややや、やったぁぁ、やったぁぁ!!!ほ、本当ですか?これ。本当に価値が上がったんですか?私」

「えぇ、おめでとうございます。真面目な業務態度と姿勢、家庭内での良好な振る舞いを評価させていただき、5点の点数アップを認定させていただきました」

「やったぁ、やったぁ!!これでついに50点を超えた!!これで、これで次の就職先も見付かります!ありがとうございます、本当にありがとうございます!!」

「とんでもありません。きちんと見ている人はいるということです。これからも是非頑張って下さい」


 その男は何度も何度も選定所から来た男に頭を下げると、”貴方の社会的価値指数は52点です”と書かれた用紙をカバンにしまい意気揚々とその場を去って行ったのだった。


 場所は変わりとある不動産業者店舗内。

カップルと思われる男女が差し出された資料を閲覧しながら相談を交わしている。


「ねぇねぇ、ここよくない?」

「そうだね。ちょっと高いけど駅から近いし。すみません、ここ案内してもらえますか?」


 カップルの男が向かいに座る担当者の男に声を掛けると、担当者の男は少し苦い表情を浮かべカップルに告げた。


「…申し訳ございません。こちらの物件は”人物価値65”未満の方は入居お断りでして…」


 とある小学校の一室。

入学面接が行われている様子。

学校関係者と思われる3人の中高年男女の向かいには5歳児程と思われる男の子とその横に母親らしき人物が笑顔で座っていた。


「勝太君は”人物価値75”かぁ。偉いねぇ、たっくさんお勉強してきたんだねぇ~」


 白髪の面接官がにこやかに子供に語り掛ける横で母親らしき人物は誇らしげに微笑んでいた。


 とある高級料亭の個室内。

政治家と思われる身なりのいい中年男性3人が会食をしている。

すると突然、その内の一人が声を荒げた。


「何だと!?私は財務次官だぞ!!この私が罷免!?一体どういうつもりだ!?」

「貴方の地位指数が70を切った。もはや我が党にいてもらっては困るんだよ」

「ば、馬鹿な!一時的に切っただけだ、すぐに盛り返す!今この私を追い出すことがどんな事態を招くのか分かって言っているのか?」

「分かっているさ。貴方が抜ければ痛手だ。だかそれ以上に党の評判が落ちることだけは避けなければいけないんだ」

「そ、そんな…」

「この国では”人物価値”こそ全てだ。もはや国を動かすのは国民でも政治でもない。全てはあの”選定所”を中心に回っているんだ…」


 世の中には”人物価値”という言葉があちらこちらに溢れ返っていた。

就職活動における企業の合同説明会の立てかけ看板にも”人物価値85以上歓迎”や”人物価値65から”等。

スポーツクラブの勧誘チラシには”人物価値70以上の方は会費20%OFF”と書いてあったりもしている上、街中の世間話でもその言葉は飛び交っていた。


「いやぁ~。この前の申請でやっと”人物価値”が65を超えたよ。これでやっと転職先の足切りライン超えれたんだ」

「ったくやってらんねぇよ!!!あれだけ会社で営業成績上げたってのに何で55も超えねぇんだよ!やっぱりこんなクソ会社でいくら頑張ったって社会貢献度は低いってことなんだろうよ。あ~あ、もう俺の人生詰みだよ畜生!」

「慶介って”人物価値”47らしいよ。もう仲間に入れるのやめようぜ」

「山田さん家の奥さん、不倫がバレて一気に45まで下がったらしいわよ、”人物価値”。これから一体どうするのかしらねぇ~?」


 そう、この国ではとある日を境に全ての人間に”人物価値”という数値があてがわれる様になった。

それは人間に付けられた社会的価値指数。

その人間のありとあらゆる要素や側面を審査査定されていく。

その査定項目や基準は明確にされてはいないが、主に人格やモラル、マナー、社会貢献度、生み出した利益等が大きく影響し、ひいては周囲からの評判等も審査対象と噂されている。

この数値は絶対的な影響力を持ち、世の中はこの数値を基準に動く様になっていた。

”世界をより良くしよう”という思想の元で政府が発案し、その業務をとある組織に委託した。

その組織は”独立行政法人人物価値選定所”として発足し職員達は日々多忙な業務に勤しんでいた。

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