四十色 洞窟に潜む者
掌に作った火の玉を明かりに二人が進んでいると、遠くから金属がぶつかり合うような音が聞こえてきた。
「誰かいるのか?」
「滅多に人は来ないはずだが…念のため明かりを小さくして進もう」
徐々に音が大きくなり、火を消して慎重に進む二人。
「ここは少し明るいな」
「あの天井の隙間から陽の光りが漏れているようだ。
それにしてもでかい空洞だ」
「バステン」
「どうした?」
「音が止んでる」
いつの間にあの金属音は消え、不気味な程の静寂が洞窟に満ちていた。
「紅蓮、気を付けろ…何かいる!」
二人は背を合わせ周囲を警戒し、上から小石が落ちてきたのに気付き見上げる。
「バステン…あれは何だ」
「こんなのが居るとはな。
俺も初めて見るが、あれはガザチュラって言う色獣さえも逃げ出す怪物だ」
蜘蛛の体に蟹のハサミを持ったガザチュラは、ハサミを何度も閉じる度に火花を出す。
「完全に狙ってるな」
「ああ、あの音はこいつのハサミだったか。
…来るぞ!」
ガザチュラは天井を強く蹴り猛スピードで落下してきた。
「うわっ!」
「くっ! 聞いた話だとこいつは動きが速い上に飛び回るらしい」
「なら先手必勝だ!」
駆け出し炎の塊を投げる紅蓮。
「丸焦げに…!?」
ガザチュラはハサミで受け止め弾き飛ばす。
「奴のハサミは鉄よりも硬いみたいだな。
体を狙うんだ!」
「わかった!」
紅蓮は炎でガザチュラを囲み、巨大な火柱を作る。
「私の知っている色の戦士よりも遥かに強い。
陛下はこんな才能の戦士を見つけられていたのか」
「(やっぱり少しの力で今まで以上の威力が出せる。
この世界ならみんなや白を救う事も出来るかもしれない)」
徐々に火柱が小さくなり、炎に包まれたガザチュラが姿を現す。
「流石だな」
「先を急ごう」
二人が離れようとした時、ハサミを大きく開き上に持ち上げるガザチュラ。
「まだ動けるのか?」
「悪あがきって」
次の瞬間、ガザチュラがハサミを素早く閉じると洞窟が揺れる程の衝撃波が生まれ、紅蓮とバステンを吹き飛ばし自身を包む炎をも消し飛ばす。
「ぐぐっ、何て威力だ」
「見ろ、奴の体がハサミと同じ甲羅に覆われている。
体毛で隠してたようだな」
「どうすれば…」
「中から炎で焼くしかないな」
「まさか奴に喰われろって言うんじゃないよな?
そういうのは一度でごめんだ」
「それも面白そうだが、私が奴の背中を切り開く」
「あんな硬い甲羅をどうやって?」
「こいつなら出来る」
刃が二股に別れた音叉のような形のナイフを取り出すバステン。
「変わったナイフだな」
「世界に数本しかないナイフだ。
どんな物でも斬る事が出来る。
ただ欠点が一つ」
「欠点?」
ナイフをバステンが近くの岩にぶつけると、甲高い音が周囲に広がる。
「あ、頭がクラクラする!」
「我慢しろ。
行くぞ!」
身を低くしながら走り出しガザチュラへ突っ込むバステン。
「本当にあんなので大丈夫なのか?」
「接近戦は鈍いな」
ガザチュラの攻撃をかわし、バステンは脚を一本切り落とす。
「今度は背中だ!」
ナイフを突き立て一気に切り開くと、体を回転させたガザチュラのハサミで吹き飛ばされるバステン。
「バステン!?
くっ、我が心に燃えし赤き炎よ!敵を滅ぼす業火になれ!」
駆け出す紅蓮の右手が溶岩の様になり、ガザチュラはハサミの衝撃波を前方に飛ばす。
「ぐっ…この程度で俺は止まらない!」
背中から炎を噴射し右手でガザチュラの頭を地面に叩き付け、更に背中の傷口に右手を突き刺す紅蓮。
「燃えろー!」
体が赤く輝きだし、ガザチュラは飛び上がり天井に紅蓮をぶつける。
「がはっ! まだ…まだだ!」
傷口から炎が溢れ出るほど火力を上げ、苦しむガザチュラはのたうち回りながら、全身の関節から炎が吹き出す。
「しぶとい奴だ。
そうだバステン!」
右手を引き抜きバステンへと駆け寄る紅蓮。
「やったな」
「バステンのおかげだ。
大丈夫か?」
「左手でガードしたから折れたみたいだ」
「少し待ってろ」
バステンが切り落としたガザチュラの脚を使い、紅蓮は応急処置をする。
「医療には精通しているのか」
「この程度は出来て当然だ。
ヒーローを目指していたからな」
「ヒーロー?」
「まあ、正義の味方みたいなもんだよ」
「フフフ、面白い奴だなお前は」
「変わってるとかはよく言われるよ。
さ、あまりゆっくりしていられない」
「ああ、なんとしても色結晶を守らなければ」
お互いを支え合いながら二人は先へと進む。




