三十六色 色彩の園へ
「紅蓮くん、ちょっと表情固いよ~」
「すみません」
彩呀とミネルバが消えてから一週間が過ぎた頃、紅蓮と藍麻は写真撮影をしていた。
「紅蓮、今はアイドルに集中だよ」
「悪い藍麻」
「ま、無理もないか」
「じゃあ衣装チェンジね!」
同じ頃、レコーディング中の黄理と紫劉は苦戦していた。
「重なる~唇~」
「うーん、黄理くんは唇の所で少しキーが下がってるかな。
紫劉くんは最後ブレスなしで歌ってみようか」
「分かりました!」
「やってみます」
「重なる~唇~」
「どうしても最後でズレちゃうな…よし、10分休憩にしよう!」
「すみません!」
「すみません」
その頃、スーツを着て女性と向かい合う蒼司。
「本当にいいんだな?」
「子供の頃に約束したでしょ? 何があってもあなたに付いていくって」
「そうだったな。
一緒に奴を追って…」
「カット! 蒼司くん、そこに来ると台詞止まっちゃうなぁ」
「すみません!」
「このシーンは後回しの方がいいかな?」
「いえ、やらせてください!」
「じゃあ頼むよ! 二人がマンションを出てくる所から行くぞ」
蒼司は水を飲み気合いを入れ直す。
「みんな遅いなぁ」
翠は一人、事務所のソファーに寝転んでいた。
「ただいま」
「あ、蒼司おかえり!」
「翠一人か?」
「金崎さんは打ち合わせだって」
「あの人がいてくれて助かった。
俺達だけじゃ何も出来ないからな」
「ねぇ、やっぱり社長を追いかけようよ!」
「言っただろ、行き方も分からない。
行けたとしても俺達には何も出来ないかもしれない」
「でも皆も追いかけたいって思ってるの分かるよ!」
「だから、単純な話じゃないんだよ!」
声を荒立てる蒼司。
「何の騒ぎだ?」
事務所に入ってきた紅蓮を見て抱き付く翠。
「悪い…翠もすまなかった」
「今の状況は仕方ないよ。
翠も蒼司を許してあげないとね」
蒼司の肩に手を置き、翠の頭を撫でる藍麻。
「どうしたの?」
「黄理と紫劉も帰ってきたのか」
「ちょっと調子が出なくてな」
「俺もだ。
…ダメだな俺達! 社長やミネルバさん…白に叱られる」
「紅蓮、どうしたらいいのかな?」
翠の言葉に紅蓮は黙る。
「誰かの葬式でもしてるのか?」
その声に全員が振り返ると橙児の姿があった。
「橙児!? お前どこに行ってたんだ!」
「俺が何処へ行こうと俺の自由だ。
それに今にも泣き出しそうなガキみたいな面を見るのもうざいからな」
「お前!」
「やめろ蒼司!」
橙児の胸ぐらを掴む蒼司を止める紅蓮。
「ちっ!」
「一番冷静なお前でもこんなだとはな」
「橙児、俺達を笑いに来たのか?」
「俺はそんな暇人じゃないんだよ。
後でごちゃごちゃ言われるのも面倒だから、わざわざ知らせに来ただけだ」
「知らせに?」
「俺はこれから彩呀とミネルバを追う」
「!?」
紅蓮達は橙児の言葉に驚く。
「どうやって追うつもりだ!」
「簡単な事だ。
前にゼーレ達の居場所を突き止めたやり方をした…ただそれだけ」
「社長達に光りの糸をつけていたのか!?」
「あっちの方が面白そうだしな。
それだけを言いに来た。
それじゃあ頑張ってな、アイドルさん」
「待て! 俺達も行く!」
「紅蓮!」
「分かってる。
でも蒼司だってこのまま待つだけなんて出来ないだろ?」
「それは…仕事はどうする?」
「金崎さんには悪いけど少しだけお休みだな」
「全く…俺もドラマの撮影は終わったし問題はないか」
「俺達もレコーディングは少し待ってもらうかな!」
「うん」
「みんな悪い子達だね」
「じゃあ藍麻は行かないの?」
「もちろん行くよ。向こうには可愛い子が沢山いるかも知れないからね」
「みんなミネルバさんみたいだったりしてな!」
黄理の言葉に全員が恐ろしい想像をしてしまう。
「ま、まさか! ないない…絶対ないよね?」
「それはともかく、全員賛成でいいな」
「誰も連れていくなんて言ってないんだがな。
…付いてくるなら好きにしろ」
「ありがとう橙児!」
「…ふん」
こうして紅蓮達は彩呀達を追って色彩の園へ向かう。




