十七色 金の糸
「社長!」
手術室前に立っている彩呀に紅蓮と蒼司が駆け寄る。
「まだ手術中だ」
「一体何が?」
「わからん。
相当深くまで斬られていたそうだ。
出血もかなりのものだったらしい…」
「あのゼーレっていう奴がやったのか」
「間違いないだろう。
黄理は手加減されてあの程度だったようだな。
橙児…」
「社長、白はどうしたんですか?」
「そうだ!白!
事務所にも居なかったし、てっきりこっちに来てるもんだと」
彩呀の表情が一層険しくなった。
「出掛けたきり帰ってこない…。
黄理と紫劉、翠に捜索してもらっているが恐らく…」
「ゼーレに連れ去られた」
「な!?」
紅蓮は振り返り駆け出そうとするも彩呀に腕を捕まれる。
「待て紅蓮!」
「どうして!?早く白を助けないと!」
「どうやって?」
「どうやって…それは…」
「俺達は奴等の根城へ行く術を持っていない。
今は橙児の手術が無事に終わるのを祈れ」
「くっ…」
「社長、俺は橙児が倒れていた場所を見てくる。
その馬鹿を頼む」
「なっ!誰が馬鹿だ!」
「わかった。
だがくれぐれも用心は怠るなよ」
彩呀と紅蓮を残し、蒼司は病院を飛び出す。
「ここか。
特に変わった様子は…ん?」
何かが草花の陰に落ちているのに気付く蒼司。
「これは橙児の銃。
やはりここで戦ったのか…糸?」
蒼司は手にした銃から黄金に輝く糸が延びている事に気付く。
「あいつが残した手掛かり…。
翠ー!」
空へと叫ぶ蒼司の耳元に翠の声が聞こえる。
「その声は蒼司!
どうしたの?」
「手掛かりを見つけた。
黄理と紫劉を俺の場所まで誘導しろ」
「わかった!
二人を誘導しながら僕も向かうよ」
「頼んだぞ」
蒼司は糸が延びている先へと走り出す。
「こんな林の中に何が…」
林の中を通り抜け、開けた場所に出ると蒼司の目の前に古びた鳥居が立ちはだかっていた。
「糸は鳥居の中央で消えている…」
糸が消えている付近を探るも何もなく、蒼司が考え込んでいると翠達が到着する。
「蒼司!」
「来たか」
「こんな所に何があんだ?」
「橙児の銃から金の糸が延びていて、追ってきたんだが…」
「糸…切れてる」
「ほんとだ!
でも何でだろ?」
「理由は橙児から聞くしかない。
銃はこの下に埋めて、一旦病院に戻るぞ」
「白ちゃん大丈夫だよね?」
「…」
銃を埋め、四人は病院へと向かう。
その頃、白は牢の様な場所に囚われていた。
「んん…ここは……そうだ、ゼーレって人に捕まって…。
橙児さん!」
「目が覚めたか」
格子越しにゼーレが姿を現す。
「橙児さんは!」
「あの男ならもう死んでいるだろう」
「そんな!?…私をどうするつもりですか?」
「心配するな。
まだお前の出番はない。
我が父が目覚めた時、贄となってもらう」
「断ります!」
「フフフ…貴様に拒否権はない」
「なら…死にます!」
白が舌を噛もうとした時、壁から縄の様な物が伸びて体に巻き付き、壁に張り付かせ口に縄の様な物が入る。
「んん!」
「命を粗末にするな。
父の贄となれる事を誇りに思え。
おっと、父を紹介しよう。
次元の王にして最強の存在、我が父ギベーリだ!」
ゼーレが手を伸ばすと暗闇に炎が灯り、頭は人間の頭蓋骨に似た形で薄い膜の様な物に覆われ、肉付きのある手足には無数の目があり、胴体には苦痛に顔を歪ませる見た事のない異形の生き物の顔が浮かび上がっていた。
「んんーー!」
「恐ろしいか…その表情が我が父にもうじき刻まれる!
はっはっはっは!あーっはっはっはっはっ!」
白は体を震わせ、瞳から涙が溢れる。




