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転生おばあちゃんの幼馴染みは勇者ちゃん  作者: こう


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5 幼馴染みの少年


 入り口に立っていたのは、ふわふわした赤毛の青年。

 筋肉質で長身だけど、成長途中でひょろりとして見えるわ。焦げ茶色の釣り目が、意志の強さを表しているようね。

 彼はセリオ。トリスにある自警団の団員。

 私と同じ十八歳で、小さいころからよく一緒に遊んだ幼馴染。

 彼は当たり前のように、カウンター席に座る。エメリナの隣よ。


「セリオ、おはよー」

「おはようセリオ。朝ご飯は?」

「おはよう二人とも。飯は食ってきたからいい」

「えー。アニシア父のご飯おいしいのに」


 嬉しいことを言ってくれる。思わずふふっと笑った。セリオとあいさつを交わす両親も、私と同じように笑っていた。

 それにセリオは我が家にご飯を食べにくるのではなく、ご飯を食べているエメリナに会いに来ている。エメリナは全く気付いていないけれど、ほぼ毎朝このやり取りをしているから察してしまったわ。


 私とエメリナ、そしてセリオは昔から、三人で一緒に遊ぶことが多かった。


 幼い頃は性別関係なくじゃれ回っていたのだけれど、いつからかセリオはエメリナを意識しだした。エメリナは全く気付いていないけれど、セリオにはエメリナしか見えていない。

 エメリナが成人を過ぎても、老婦人が亡くなって一人暮らしになっても結婚相手がいないのは、可愛いエメリナの傍にいつもセリオが張り付いているからよ。

 エメリナに近づく異性全部に牽制をするから、エメリナとセリオはいずれ結婚するのだと周囲が完全に認識しているの。


 でもエメリナに全くその気がない。


 セリオは頑張ってエメリナにアプローチしているのだけれど、エメリナが全く気付いてくれないの。

 エメリナは花より団子。色気より食い気。更に自警団見習いに等なってお淑やかさとは無縁に剣を片手に走り回るので、なかなか口説き落とせていない。


 そう、砂糖菓子のようなエメリナは、トリスの自警団見習いになったわ。


 自警団とは、各町に存在する警察のような存在。騎士団から派生した集まりのこと。

 騎士になるには、帝都で騎士試験を受ける必要があるわ。


 騎士は帝都の安全と魔物の討伐が主な役目。

 皇族を守る近衛騎士。

 土地を守る駐屯騎士。

 部族の監視や地方の守護を巡回騎士が担当するの。


 騎士は基本、帝都を中心に活動しているわ。

 目に見えた驚異の魔物を討伐するのは騎士の仕事だけれど、地方ではそれも間に合わない。よって帝都から離れた町には自警団が建設され、自分たちの町の安全を守っているわ。魔物の討伐だったり、犯罪の取り締まりだったり。


 騎士になるには帝都に行かねばならず、騎士に憧れても帝都までの道のりで断念する人も少なくないわ。そういった人たちの多くが、自警団に入るの。だからか、騎士崩れなんて呼ばれることもある。

 その辺りはそもそも、騎士になる定義というか、面接会場が遠すぎる所為だと思うので、酷い戯言だと思うわ。


 エメリナは女の子だけど、お姫様より王子様より、騎士に憧れる子だった。


 見た目が庇護欲を誘われるので、ひたすら可愛がられて守られてきた反動だと思うわ。つまり、守られるだけじゃなくて守りたい。そう強く願うようになったの。

 エメリナを守りたい代表のセリオは気が気ではないけど、エメリナの意思を尊重して、見習いとして扱っている。傍に居るのは、一応世話役としての役割だそうだけど……周囲は生暖かく見守っているわ。


 料理が苦手なエメリナは、うちで朝ご飯を食べてから自警団へ行く。それを知っているセリオは毎朝エメリナを迎えにこの食堂までくる。

 私はそんな様子を甲斐甲斐しいなあと微笑ましく思いながら、いろんな応援を込めて二人分のお弁当を詰めた。お弁当の販売は受け付けていないから、完全なる私のサービスよ。食材は二人が御裾分けしてくれるので、損をするわけでもないし。

 そう、タダで食べさせて貰うわけにはいかないって、エメリナが狩りをして食材を取ってきてくれるの。だからある意味物々交換が成立しているわ。いいのにねぇ。


 エメリナは今日もぺろりと朝ご飯を平らげた。

 とても美味しそうに食べてくれるから、見ているこちらまで嬉しくなるわ。見守るセリオの目も優しいから、是非隣のいい物件に気付いて欲しいのだけれど、その目は感謝を込めて私を見ているから……まだまだ花より団子ね。


「はいお弁当。今日も頑張ってね」

「アニシアありがとう大好き!」

「私も好きよ」


 毎朝飛び上がって喜んでくれるから作り甲斐があるわ。


「ありがとな。ったく、お前もアニシア位とは言わないけど、料理できるようになれよ。嫁の貰い手が無いだろ」

「何よもう。セリオには関係ないでしょ~」

「俺は心配してやってんだよ」

「余計なお世話!」


 セリオは素直に礼を言って受け取るのだけれど、受け取るのだけれど……思春期って難しいわね。


 エメリナの事大好きだってわかるのに、言動が虐めっ子なの。

 昔からそうだから、今更素直になれない子。

 全く素直になれないわけじゃなくて、エメリナにだけ、余計なからかいが混じってしまう子。

 エメリナはお鈍さんだから、素直にならなきゃ伝わらないわよ? あまりやり過ぎると嫌われちゃうから、気を付けなさい?


 まったく、困った子ね。



幼馴染み達の恋路をほのぼのと見守るアニシアさん。


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