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転生おばあちゃんの幼馴染みは勇者ちゃん  作者: こう


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32 店員さんが天使様


 今期の巡回騎士は四人。

 生真面目な騎士様が二人と、魔道士が一人。諜報担当だという、見るからに若い少女が一人よ。


 生真面目な騎士様は食堂を利用して下さっているのでなんとなく為人はわかるようになったけれど、魔道士と諜報担当の二人が滅多に食堂を利用しない為、まだどんな人達なのかわかっていないの。


 騎士様達の為に食堂を開放してはいるけれど、支払いは発生するので、必ず利用するとは限らないの。

 お会計貰わないと、私達も生活できないから。そこはきっちりしないとダメよね。

 給食みたいに食料費を貰う制度も考えたけれど、これは私達が勝手にしていることだから。あなたたちの為に食堂をやるから月にこれだけ支払え、なんて、押しつけがましいから言っていないわ。


 人によっては、自分で調理して、自分で賄う人もいる。

 今回の二人は、どうやらそのタイプみたい。


 ――と思っていたのだけれど。


「あと少しで計算式が完成しそうだったのに……!」

「はいはい、あと少しで手子摺ってるなら頭に栄養が足りていない証拠でしょ~。ほら、ちゃんとご飯食べてよ」

「携帯食で十分栄養素は取れている!」

「この人、外回り向いてないな~なんで来たの?」

「余計なお世話だ!」


 どうやら、研究職にありがちな、飲食を忘れるタイプだったみたい。


 ダニエラちゃんに引きずられるようにしてやってきたのは、魔道士のアティリオさん。なにげに四人の中で一番背が高いけれど、誰よりも横幅が細いからそんな風にはまったく見えない人よ。

 多分、猫背なのもそう見えない原因ね。実際に、長身だけど細身だから、彼の半分くらいしかないダニエラちゃんに引きずられちゃっているわ。ううん、これはダニエラちゃんが力持ちなのかしら?


「お姉さん、この人に胃に優しいメニューお願いできる? 日替わりが基本なのはわかってるんだけど……この人、三日はまともな食事してなくてさ。ちゃんとその分のお金は払うから」


 困ったように眉を下げて、ダニエラちゃんが私を覗き込む。可愛らしい子のお願いに、私は笑顔で頷いた。


「大丈夫よ、基本は日替わりだけれど、ちゃんと定番メニューもあるから」


 いつでも手に入る食材の、いつでも出せるメニューだ。そこにおかゆは入っている。

 なんでおかゆがメニューにあるのかって? 二日酔いを引きずる人とか、単純に胃を痛めている人がいるからよ。


「そっか、よかった。じゃあおかゆ一つ下さい!」

「僕は別に、わざわざ頼まなくても自分でなんとか……」

「できていないからボクが引きずって来たんでしょ? 変な意地張るのやめてよね」


 ダニエラちゃんは安心したように笑って、ブツブツ文句を言っているアティリオさんの背中を叩いた。とってもいい音がしたから、やっぱりダニエラちゃんは力持ちなのかもしれないわ。


「一年間外食だと、お金はかかるわよね……帝都と比べたらとっても低価格って評判だけれど、支払いが難しそうですか?」

「別に金の心配はしてないよ。これくらいの端金……待って、本当に端金なんだけど。ちょっと、これで経営大丈夫なの? 一年間利用してもたいした打撃にならないよ?」

「自給自足の食材も多いし、大丈夫ですよ。何より利益より、皆さんがお腹いっぱいになること重視ですから」

「ちょ、ちょっと、何これ。この人って天の遣いか何か? 同じ人間? 無害オーラが強すぎて怖い!」

「そこまで言います?」

「お姉さんだけじゃなくて、食堂を運営しているご両親もこんな感じだから、疑うだけ無駄だよ」

「なにそれ怖い!」

「あらまあ」


 今までも心配されることはあったけれど、怖がられることはなかったから不思議な気持ち。どうしてドン引きされたのかしら?


「……調べてみたけど、マジでガチの善人家族だったよ。よくある、誰か一人が売り上げを掌握しているとか、人によって金額を変えるとか一切なし。変えたとしても上げるじゃなくて下げる方。助け合う心をモットーに、祖父の代から騎士の為に何の利益にもならない食堂を始めた、心の底から人の為を思って生きている一般市民だよ」

「絶滅危惧種だろそんなの!」

「ホントにね、だからエメリナお姉さんがこの場所をとても大事にしているんだよ。わかった? 変に機嫌を損ねて悪印象を与えると、そのまま印象を伝えられかねないから気を付けてね」


 何やらこそこそ話し合っている様子だけれど、私は店員。お客様のプライバシーに関わるお話にまで耳を欹てちゃダメよ。聞こえちゃったら不可抗力だけれど、聞こえないなら深追いは禁止。

 というわけで、お仕事お仕事。さりげなく告げられたダニエラちゃんの注文も含め、厨房にいるお父さん達に素早く伝達よ。


 ちなみにその後、サービスで出されたお茶を前にして、アティリオさんは椅子から転げ落ちそうな程仰け反っていたわ。


 あれはどういう反応なのかしら?


 なんとなくわかったのは、生真面目な騎士様達とは違って、この二人が疑り深い、という事くらいね。



食事時には顔を合わせるので、エメリナよりなにげに遭遇回数と時間が多く、為人を理解して行くアニシア。サポートキャラらしく細部を観察中。(無自覚)

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