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転生おばあちゃんの幼馴染みは勇者ちゃん  作者: こう


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31/39

31 食堂再開

アニシア視点


 私、前世の宗派なんだったかしら?


 とてもデリケートなお話よね。親戚なのに住む場所が違うからお世話になっているお寺が違って、やり取りの違いに四苦八苦した記憶が過ったわ。

 近年では海外の人も日本で生活していたから、学校で言うと給食の対応が求められたりして大変だってニュースにもなっていたわね。


 そういうの覚えているのに、自分の宗派覚えていないの。


 さっきも言ったとおり、親戚筋が増えるとどんどん関わるお寺も増えていって、自分がなんの宗派だったかわからなくなっちゃったのよね。これは多分だけれど、呆けた弊害だと思うの。

 突然宗教の話を始めたのは、ちょっと神頼みしたくなったから。

 仏様じゃなくて、神様ね。


「これでいいかしら……」


 食堂の裏手……洗濯物を干す物干しスペースより更に奥で、悩みながら私が作っているのは、とても簡易的な小さな祠。

 私は復興作業中で余った余分の木材と、良い感じに丸い石を組み合わせて、日本昔話に出てきそうな祠を作ったの。


 何故って?

 普通に魔物襲撃が怖かったから。

 心の拠り所が欲しくなっちゃったのよ……。


 すっかり忘れているけれど、前世の私は意外と信心深かったのかしら? 何かあったら手を合わせて、拝んだ方がいいって考えがあるの。神様はどこにでも宿っているから、悪い事はできないわよって。

 ……あ、日本人だからかしら? そうかもしれないわ。

 困った時の神頼みというか、自分にできることが少なすぎて、祈りで心を落ち着かせたいのよね。


「というわけで、よろしくお願いします」


 しゃがみ込んで出来たての祠におにぎりを供える。手を合わせ、深く頭を下げた。両の手の平を合わせて、これからのトリスの平和を願ったわ。


 ここに神様はいないけれど、お祈りはどこでしても良いと思うわ。た

 だ、ここに来たら祈る、と決めておけば心が安まるのよ。


 ちなみにこの世界で、神様は世界を作った創造主のみ。人は神様から土地を託されて、選ばれた一族が国を治めていると言われているわ。

 つまり神の代理人ね。尊い一族だから、神に託された一族だから、土地を統治しているの。だから、他国を侵略するなんて神への冒涜なので、余程のことがない限りあり得ないわ。そう、たとえば、あまりにも酷い治世の王に辟易した民衆が、隣国へ助けを求めるなどない限り。

 そんな話があった、なんて聞いた事がないから、真偽は不明だけれどね。


 あ、もしかしてこれ異教徒扱いされちゃうかしら?

 作ってから気付いたわ。そうね、普通、他国(異世界)の宗教を取り入れたりしないわよね。しまったわ、これぞまさに前世の記憶の弊害ね。日本人、こういうところあるわ。


 ――よし、私だけの秘密にしましょう。


「さあ、頑張りましょう」


 そう決めて、恐れや不安を脱ぎ捨てて、立ち上がる。気持ちを入れ替えて、私は小走りで食堂へ戻った。

 魔物の襲撃から一ヶ月。魔法の助けもあって、重機の存在しない世界でも順調に町の建物は改修されている。


 という事で、我が食堂も炊き出しを卒業し、営業再開よ。


 襲われた町を見た行商人が憐れんで、とても安く諸々仕入れることができたから、今なら何でも作れるわ。


「テリーヌ一つ」

「申し訳ありません。当店では取り扱っておりません」


 なんでも、は過言だったわ。

 というか、帝都にはテリーヌがあるのね。それってフランス料理じゃなかった? 違ったっけ? どこ?


「あ、申し訳ない。つい癖で……ここは日替わりメニュー、だったな。本日のメニューはなんだろうか」


 困ったように、照れたようにちょっと早口になったのは、金髪に赤い目の青年。今期の巡回騎士の一人、レオカディオさん。

 その隣には、青黒い髪で顔が見えない青年。今期の班長、ベニートさんもいたわ。彼も彼で、物珍しそうに食堂を見渡している。

 お二人とも生真面目で、基本的には穏やか。血の気の多い人だと「品揃えが悪い!」ってなったりするから普通の人達だわ。


 ……もしかして、田舎の食堂が新鮮に見えているのかしら。ほら、流行に慣れると、ちょっと一昔なレトロな物が新鮮に見えたりするでしょう? それかもしれないわ。


 今期の方々ももれなく、前期の方達から我が食堂については伝え聞いていたみたい。今の今までは炊き出し重視だったから食堂も閉じていたけれど、食堂を再開したのでこちらを利用してくれているわ。

 食堂の利用は初めてでも、炊き出しでは顔を合わせていたので、名前も顔も一致しているわ。あちらもそうね。


 だって彼ら、エメリナを見かけたらすぐ話しかけるのだもの。

 でもってエメリナは、彼らから逃げて私の胸に駆け込んでくるのだもの。


 自然と顔を合わせるから、しっかり自己紹介は済ませたわ。

 私とも普通に話すようになって、エメリナが「アニシアに近付くな攻略対象共!!」って威嚇していたけれど、攻略対象ってどういう意味かしらね?

 エメリナは警戒しているけれど、彼らは紳士的で程よい距離感で接してくれるので、私はまったく困っていないわ。

 彼らが気にするのは光属性のエメリナだけなので、私は冷静に様子を観察できるし。


 だから、本当は警戒しながら接している子とか、なんだか思い悩んでいる人も、なんとなくわかるの。


 それをエメリナに伝えると「流石サポートキャラ……」って感心していたけれど、これもどういう意味かしらね? 若者言葉?

 そろそろエメリナの様子も落ち着いて良さそうだけれど相変わらず不安定なので、そろそろオスワルドさんに相談するべきかしら。


 そんな風に考えながら、私はまだ不慣れな今期の騎士様達に、注文して頂いた唐揚げ定食を運んだ。


 田舎も都会も関係なく、唐揚げって人気ね!



日本人、なんでもごっちゃ煮。

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