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転生おばあちゃんの幼馴染みは勇者ちゃん  作者: こう


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30/39

30 一番の友達


 皆さん忘れずにいてくれているだろうか。

 私の大好きな親友のアニシアを。

 覚醒イベントで私を庇って怪我をした、慈悲深く優しいアニシアを。


 トラキスのテーマは三角関係。そのテーマから、どうしてもヒロインは二人の男性の間でゆーらゆら優柔不断に揺れまくる。おいお前さっき別の相手に胸キュンしてただろなのにそっちでもなのどうなの!? と突っ込んでしまうが、男も女も求められるのは嬉しいのだろう。ゲームなんだ仕方がない。

 ヒロインは揺れに揺れる。それこそ自分の気持ちがわからなくなるほど揺れる。

 そんな時、自分の気持ちを整理……情報を整理して現在の好感度とか自分を見つめ直すために、友人に相談する。

 その友人が、サポートキャラのアニシアだ。


 アニシア。

 エメリナの一つ上、つまりセリオと同い年の、エメリナの大親友。


 両親が経営する食堂の看板娘で、自警団のクエスト受付嬢なんかもしている働くお姉さんだ。

 セミロングの亜麻色の髪。黒目がちな、仔犬のように丸いこげ茶の瞳。エメリナより小さな身体を水色のワンピースで包み、白いエプロンを着用している。

 何よりお胸が素晴らしい。ぎゅっと抱きしめるとどこもかしこも柔らかくて特にぷるんぷるんの魅惑がゲフンゲフンやめてよ男子中学生の思考が頭を乗っ取るの!!

 とにかく彼女は、ヒロインのサポートキャラ。その名の通り、ヒロインの親友としてあらゆることをサポートしてくれる。

 恋愛相談はもちろんの事、ゲーム初心者に対する用語やシステムの説明。パラメーターが偏っていたり戦闘続きで疲労がたまっていたりを細かくチェックして警告してくれる。

 性格はふんわり穏やかな年上のお姉さん。バリバリ働いているというのでビシバシキャリアウーマンの印象だが、本人はほんわかお母さん。間違えたお姉さん。


 出生の分からないよそ者の私に、気後れする事なく接してくれた優しいお姉さんだ。


 ヒロインの「エメリナ」は、実は田舎町トリスの出身ではない。

 育ちはトリスだが、どこの誰の子供だか一切わからない。


 というのも、エメリナは巡回騎士がトリスに到着する前に立ち寄った近くの森から拾って来た子供なのだ。

 拾ったのは巡回騎士だが、彼が幼子を引き取るのはいろいろと無理があった。帝都住まいの巡回騎士は貴族で、外聞もありどこの誰ともわからぬ子供を身内にするわけにはいかなかったのだ。

 最終的にトリス住まいの子供のいない老夫婦が引き取ってはくれたが、エメリナの存在は町をめぐっての大騒動となり、エメリナの過去を知らないものはいないほどだった。優しいトリスの人たちは、みんなで助け合ってエメリナを育ててくれた。


 だけどやっぱり、結束の強い田舎町に、どこの馬の骨とも知らぬ幼子は早々馴染めないもので。


 大人たちの態度から、幼い子供たちもエメリナが自分たちと何か違うと察して、どこかぎくしゃくした空気があった。よそよそしい。よその子だけに。くだらない。

 助け合い精神でよくしてもらってはいたけれど、お客様相手に手助けをするような、柔らかな膜があった。

 それは、前世の記憶もないただの幼子だったエメリナには、とても寂しく感じて……小さなエメリナはいつもべそべそ泣いていた。


 そんなエメリナに声をかけてくれたのがアニシアで、一緒に遊んでくれたのがセリオだ。


 小さな白い手が差し伸べられ、恐る恐る手を握った瞬間、暖かな笑顔を向けられたこと、「私」は一生忘れない。


 アニシアは私にとって、かけがえのない存在だ。


 なのにどうしてアニシアルートが無いんですかね?


 これだけヒロインを支えてヒロインに思われて親友だと断言出来て恩もあって大好きな大好きなヒロインよりヒロインしているキャラなのに、何故攻略できなかったのか。何故友情エンドですら存在しないのか。バッドエンドしかないのは何故か。

 設定が凝っているサポートキャラで、攻略させろ! とプレイヤーが荒ぶったくらいヒロインよりヒロインしている人気キャラだった。乙女ゲームなのに人気投票五位以内に絶対いた。

 その人気は、穏やかなお姉さんという聖母のような人柄も理由にあるが……それ以上の理由がある。


 死ぬのである。

 ゲーム終盤で、ヒロインを庇って。


 しかも強制イベント共通イベント。

 どのルートでも必ず通る通過儀礼。


 ふざけてんのかこらぁ。


 覚醒イベントを経て前世の記憶も覚醒した私としては、なんとしても脱却したい流れ。

 ゲーム知識もあることだし、そもそもの強制イベントを起こさないよう行動すればいいのでは?

 きっとみんなそう思うはず。私も思った。

 結論から言えば、無理。

 なぜならその強制イベントで亡くなるのは……アニシアだけではない。


 このトリスそのものが、ゲーム終盤で壊滅する。

 勇者の故郷、序盤でなく終盤に消滅イベント。そんなのいらねぇ。


 そしてさらに困ったことに――「俺」は、このゲームの終盤を知らない。

 見ていない。


 だってアニシアが死ぬから!! それ以上先に進めなくて!!

 推しが死んで作品を読み進めなくなるあの現象。

 まさかその所為で、現実で推しの死を回避できなくなるとは思わなかった。


 いいや! 絶対回避してみせる!


 色々イベントをスキップして情報を得ているのだ。ゲームとは違う展開にしてみせる!


 待っていてアニシア、必ず私が助けるからね!!

 魅惑のお胸は必ず守ってみせ……、


「だから、乗っ取らないで!!」


 私は泣きながら近くの壁に自分の頭を打ち付けた。


 度々中学男子の思考に浸食される私の奇行は、暫くトリスの人達に「疲れているのね……」と生暖かい目で見守られることになった。


今の記憶と今の記憶がごちゃごちゃしているエメリナ。

次回から再び、アニシア視点に戻ります。

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