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転生おばあちゃんの幼馴染みは勇者ちゃん  作者: こう


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29 地続きの今


 さっきも言ったけど光属性は珍しい。全くいないわけではないけど、珍しい。

 珍しい上に、対魔物では圧倒的な効果を発揮する――と言われている。


 なので騎士団としてはそのまま帝都のほうに持って帰って高度な教育と研究をして、騎士団所属にして国に取り込んでしまいたい。


 一方そんな目論見なんてお見通しな自警団。

 同じ田舎町で育った若い娘を売り払うような真似はしないと真っ向から対立姿勢。

 うん、光属性を騎士団に売り渡すことだってあるらしい。トリスのみんなはそんなことをしないのでとても嬉しい。

 あと単純に、騎士団としてではなく自警団としてこのトリスを守って欲しいという考えがあることもわかっている。


 騎士団と自警団の対立。

 早々にヒロインを取り合う流れに持って行く。

 殺伐とした意味でな!


 ナニコレ怖い。


 最初は立場としての対立。その後ヒロインと交流することによって、恋愛的な対立となる……というのがトラキスの流れだ。障害があってこそ燃えるという奴だ。


 ちなみに攻略する属性は、この話合いの後に選ぶ武器と台詞で決定する。

 帝都に連れていく連れて行かないで言い争っているけどこれ少なくとも一年後の話なんだよね!! 今すぐの話じゃないんだよね!! だって巡回騎士来たばっかだし!! 騎士の駐屯期間は一年と決まっている。


「私たちの任期中に、決意を固めて欲しい。エメリナ嬢、君の英断に期待をしている」

「は、はい……!」


 って話聞いてなかったスキップしちまった!! スキップって知ってる? イベント飛ばす行為の事な!!

 レオカディオが穏やかに笑いながら「他に選択肢あると思ってんの?」なんて聞こえてきそうなセリフを置いて立ち上がる。いや、こっちが勝手にそう感じ取っただけだけど。

 彼が立ち上がるのを合図に、騎士団側が席を立つ。


「それでは見回りの時間ですので。またお会いしましょう」

「お姉さんまったね~」


 ダニエルの愛らしい声が余韻を引いて、木製の古い扉が閉まった。

 私は思わず、盛大に息を吐き出しながらテーブルに突っ伏した。


 う、うわああああ!! 自分は最後の一言しか喋ってないのに勝手にイベントが進んでいくうううう!! どうしたらいいのぉおおおお!?


「あー、災難だったなぁエメリナ」

「団長ぉおおお!」


 ガシガシと頭を掻きながら、テオがにっかりと笑う。テーブルに突っ伏した私の頭をポンポン宥めるように撫でてくれた。


 く、頼れる大人のオーラに屈しそう。屈するわ。慰めて!

 察してくれた団長は大振りに撫でてくれる。扱いは犬猫。


「お前が光属性だったことには驚きだが、覚醒したからお前もアニシアも、町の連中も助かったんだ。これから沢山悩むことになるとは思うが、それを忘れるなよ」

「団長ぉおおお!」

「知性が死んでやがる」


 感動に打ち震えていたらセリオに呆れられた。拗ねんな! 団長は頼れる皆のお父さんなんだ!! 頼って何が悪い!!


「で、早速で悪いが決めることは決めていくぞ。光属性が珍しいってことは、分かっていると思うが改めて説明してやろうか?」

「大丈夫、ちゃんとわかっているよ」

「ちゃんと覚えているようだな」


 あ、スキップしよ。

 そう思って咄嗟に選択肢「わかっている」を選んだ。


 選択肢が出てきたわけじゃないけど、序章での説明イベントは流石に一回だけでいい。

 ちなみにここで選択肢の「教えて欲しい」を選択すると光属性がいかに魔物に効くかって説明をしてくれる。魔物に効くから騎士団並びに国は光属性を欲しがるんだよーって話だ。初心者向け。二周目の奴は知ったかぶる。


 説明イベント回避。


「そんなわけで、俺たちもお前を放置することはできない。お前がどんな選択をするかまだわからないが、まずは属性の使い方を学べ」

「団長! いきなりそれは危険すぎる!」

「何言ってんだセリオ。放置しとく方が怖いっての。流石にすぐ魔物の戦闘で使わせたりしねーから」

「君たちと一緒に訓練をしていたこともあるし、彼女は割とすぐ使い物になると思うけどね俺は」

「ぐぬ……」


 自警団の言い争いに、オスワルドが笑いながら茶々を入れる。

 実際、ゲーム知識を得る前のエメリナはセリオと一緒に訓練に参加していたので、実戦経験はなくてもそれなりの実力を持っている。

 これもゲームらしい所で、エメリナは見習いから、自警団と認められ、さらに勇者として世界に羽ばたくのだ。


「で、武器だが」


 ……そう、ここで、団長から専用の武器を貰うのだ。

 ゲームでは、ここも選択肢だった……というか攻略相手を決めるための大事な分岐点だった。


 このゲームは戦い方で攻略できる属性が決まる。

 重要な選択肢、だけど。


「エメリナは【剣】だったな。【前衛】になる。あまり無理はすんなよ?」


 選択する余地なかった!! それはそう!!


 ここから始まるゲームと違って、私はずっとここで生活していた。

 だからここで今更、攻略対象を選択したいからって武器を変えることはできない。


 【剣】を選ぶことによって、攻略できる属性が二つに絞られる。

 このゲーム、アクションも含んでいて魔物と戦って攻略対象と絆を深めるシステムもある。そのため、ヒロインの武器と考え方によって攻略属性が決まるようになっている。

 【剣】を選んだ場合、攻略できる属性は【火】と【地】だ。


 ……【王道】と【兄弟】か……。


 いや、これゲームの話で実際どうなるかわかんないけどね……? 知識ある身としては寒気が……怖気が……。


 正直、まだ頭は混乱の極地。

 十七年間を生きたエメリナと、十四年間を生きた俺の記憶であちこちこんがらがってよくわからない。どちらも「私」であることに違いはないけれど「俺」の記憶がどうしても引っかかる。


 このもやもや、受け入れるのに大分時間がかかりそう。

 一番のモヤモヤは、時々「私」が「俺」の思考に乗っ取られそうになること。

 こうして考え事をしていても、いつもの自分じゃ考えないようなことまで思考が及ぶ。これはとても怖いことだ。


 でも、落ち着くまで待つなんて、残念ながら出来ない。

 だって放っておいてもずんずんストーリー進んでいくんだもん!! 時間は待ってはくれないのだ!!


「俺と同じ武器だな。だけど、俺より前に出るんじゃねーぞ?」

「やっぱりお転婆だなぁ君。怪我をしたらすぐ俺のところに来るんだよ?」


 やめろ攻略属性組、会話を勧めるんじゃない!! 現実だから勝手にポンポン進んでいくのを止められない!!


 ちなみに……ここで、どちらの台詞に対して返事するかによって、攻略属性が決定する。

 セリオに返事すれば火属性ルート。

 オスワルドに返事をすれば地属性ルートだ。


 ……攻略したくねーんですけど!? 十四年間男だった記憶の所為でイケメンだろうと男と恋愛する気分ではないんですけど!? もうちょっと時間を置いたらそのあたり折り合いつけれそうな気がするんでそこは是非待って欲しいんですけど!!

 なによりなによりなにより!!


 お前ら攻略するより私は、アニシアの生存ルートを確立したいんだよぉ!!


 団長に新しい細身の剣を渡されながら、誰に返事を返すでもなく選択肢にない「ガンバリマス」をカクカク告げることしかできなかった。



エメリナは 前世の記憶を 異物と認識している。

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