28 争う人々
今回紹介文中心で長めです
正直頭を抱えてテーブルに突っ伏したかった。流石に出来ない。
昔ながらの付き合いの自警団団員だけならできるけど、騎士団の人もいるし!! そもそもその騎士団の人からこんなこと言われているし!!
……こんなこと言っている人は、実は、ただの騎士じゃなくて王族だったりするし!!
つまり攻略対象の一人だうわぁあああ!!
レオカディオ・イラエタ・ララインサル。
短いサラサラの金髪に、垂れ目がちな深紅の瞳。精悍な顔立ちをしているけれど柔和な瞳で優し気な空気を持つ、白銀の鎧を着た騎士。
この国の、第二皇子。乙女ゲームとして王道な王子様ポジションだ。
見た目通り優しく穏やかな王子様。王族としての判断に迷いながらも、ヒロインの利用価値と温もりに絆されてでろでろに愛を囁く難易度の低い攻略しやすいちょろさを持つ。大丈夫かなこの国。
「エメリナはトリスの人間だ。自警団でもない。ただの一般人だ。属性持ちってだけで帝都に連れていくつもりか。それでも騎士か」
対する、王族と今は知らないけど、騎士団に対して真っ向から突っかかるのは幼馴染。
セリオ。
こちらも攻略対象で、ポジションは幼馴染の兄貴分。
ふわふわと短い真っ赤な髪に、焦げ茶色の釣り目。私の一つ年上でまだ成長期ということもあり、少年らしさが残る剣士。
面倒見がよくて、幼いころから一緒に過ごしていたヒロイン……つまり私に対して恋心を抱いている。最初から好感度が高いのでこちらも攻略がしやすい。
二人とも火属性。彼らのテーマは【王道】だ。
王子様な騎士様と、幼馴染との三角関係。まさしく王道。ゲームのメインヒーローたちだ。
「属性持ちは物心つく頃に覚醒し、力の使い方を学びます。しかしエメリナ殿が覚醒したのは生命の危機を感じたつい先日。力の使い方も付き合い方も、自然と身に着けた我々とは違うでしょう。更に稀有なる光属性。帝都には光属性の魔導士の記録があります。エメリナ殿の安全のためにも、帝都へ赴き学ぶのは良いことのはずです」
「確かにこのトリスにゃエメリナ以外の光属性はいねぇが、属性覚醒を起こしたものにまず求められるのは精神の安定だ。環境の変化で何が起こるかわからねぇ。住処を変えさせずこっちで教育したほうがいいだろ」
セリオの言葉に返答したのは王子ではなく、別の騎士。というかこっちが今回の巡回騎士の班長様。
それに意見してくれたのが自警団団長様。
ベニート・レブロン。
しっとりと艶のある青黒い髪は前髪が長く目元が隠れ気味だが、その下から覗く真っ青な目は思いの外、円い。
騎士団長という肩書なだけありがっしりと長身だが、顔立ちは十代前半と言われても納得してしまいそうなほど幼い。
騎士なだけあり忠誠心に厚く、一度決めたことは覆さない。最初は言い分通り能力しか見ていなかったが、すぐにヒロインの魅力に傍で守っていきたいと誓いを立ててしまう。こちらも王道な「騎士」様だ。
テオ・グリハルバ。
刈り上げた青い髪に切れ長の水色の瞳。強面で、色合いと大柄な体躯から一見すると恐ろしい外見だが、この田舎町トリスでは誰からも頼りにされる父性溢れる自警団団長。
学園物で例えるならば「教師」枠の「大人」枠だ。ヒロインを幼いころから知っているし、ずっと見守って来た大人の一人。
無茶をするヒロインをいつも叱り、導いて来た。今回稀有な力に目覚めて戸惑うヒロインをしっかり支え、ヒロインが選んだ道を力強く応援して守ってくれるとてつもなく包容力あるキャラだ。ぶっちゃけ攻略相手として選ばなくても、とてもお世話になる、ヒロインの導き手。
この二人は水属性。テーマは【主従】だ。
実はかつて帝都で騎士団に所属していたテオ。ベニートはその後輩で、テオが騎士団をやめた事件の確執も二人の攻略の鍵だ。残念ながら何があったのか、「俺」は覚えていない。
騎士であるこの二人はいつしかヒロインを守ると忠誠を誓い、なんか面倒くさい流れでもだもだしながら恋愛を進めていくルートになっている。
「光属性がどれだけ稀有だと思っているの? こんな田舎町に放置するなんて宝の持ち腐れ。魔物相手に有効な力と研究されているし、その能力が最大限に引き出せる場所へ連れて行くのは当然のことでしょう」
「光属性は確かに稀有な存在だが、まったくいないわけでもないよ。制御する方法はこれから身に着けるとして、こちらが主張しているのは彼女の能力じゃなくて彼女の意思だ」
小馬鹿にするみたいに線の細い青年が嗤えば、席につかず部屋の壁に背を預けていた白衣の男が肩を竦める。それに対して、嗤った男は不機嫌そうに目を細めた。
アティリオ・イエニスタ。
肩に触れない程度に長い茶色の濃い金髪は、ふわふわに見えてしっとりしている。黄緑色の垂れ目なのに、吊り上がった眉から気が強そうに見えた。
騎士団の紋章が刺繍されたローブを着ており、騎士団に所属する魔導士であることを示している。座っているからわかりにくいが、ひょろりと細身の割に実はかなり長身だ。
ツンツンとした性格をしており、もうそれだけでわかるだろうけれど「ツンデレ」枠。突然覚醒した珍しい属性持ちのヒロインに興味津々だがツンツンとした対応しかできず、それでもめげないヒロインに心を開いていく……という分かりやすい攻略対象だ。
オスワルド・イエニスタ。
茶色の濃い金髪は波打ち、腰まで長い。婀娜っぽく垂れた黄緑色の目は、何故かとてつもない色気を孕んでいる。
トリスで唯一の医者の為白衣を着ているのだが、その下に着ている服がいつも着崩れているためただの医者に見えない。お分かりいただけただろうか、つまり「女たらし」枠だ。
数年前にトリスにやって来たオスワルドはトリス中の女性に声をかけたと言っても過言ではない。しかし本当は女好きではなく……といった事情を抱える彼を、ヒロインが真っ直ぐ癒していく。
この二人は地属性。テーマは【兄弟】……そう、兄弟なのだ。
貴族の跡取りだったオスワルドと、現跡取りのアティリオ。かつて文句なしの跡取りだったオスワルドが問題を起こして出奔。兄に憧れ、ずっとその補佐として役立ちたいと願っていたアティリオは兄の行動に裏切られたような気持ちになり、彼を憎むようになる。だが本当は……。
貴族として、家族としての関係に悩みながら、ヒロインを巡ってお互いを理解し直すルートになっている。
「意志とか言っているけど、属性持ちが何らかの組織に所属するのは決まっていることだよね。でもって彼女は珍しい光属性なんだから、むしろトリスは大手を振って送り出すくらいしたほうがいいんじゃないの?」
「教育の点についていえば確かにトリスは劣るけれど、まったく当てがないわけでもないです。まずは話し合いがしたいので、彼女に選択肢がないみたいな言い方はやめてください」
つまらなさそうに王子の背後で伸びをしている少女……に、団長の隣に座り大きな本を抱えながら懸命に相手を睨む少女。
ごめんどっちも少年。
通称ダニエラ。本名をダニエル。
緑のかかった真っ直ぐな黒髪は緩く編み込まれ、零れたサイドの髪が白くまろやかな頬を縁取っている。新緑の丸い目がキラキラと輝いているようで、とても可愛らしい。
騎士団の斥候部隊小隊長。人懐こい容姿と笑顔でぐいぐい情報を聞き出していくプロだ。身に着けているのは騎士の鎧ではなく胸当てと篭手のみの軽装備。しかも膝丈のふわふわスカートを着用しており、ロングブーツとスカートの魅せる絶対領域が眩しい。一見見事な美少女だが、女の子ではない。「男の娘」枠だ。
人懐こい少女の仮面の裏側にある、本当の彼……鬱屈とした本性に気付いたヒロインが、彼の裏側まで包み込む……のだが、包み込んだ瞬間放すことは許さないとばかりに絡みついてくるヤンデレ枠でもある。
ルイス。
エメリナの年下の幼馴染。
濃緑の真っ直ぐな髪は肩にかかる位でサラサラ揺れている。若葉色の目元は子供ながらに涼し気で、シャープな眼鏡が彼を殊更知的に見せている。
実際、トリスにある本はすべて読破済みの知識力を持っており、歩く辞典として大人にも頼られている。手のかかる年上ばかりでしっかりしようと背筋を伸ばす「ショタ」枠だ。
こちらも初恋がヒロインで、しかし年下の自分はどうせ弟枠……と自信が持てず消極的。だがヒロインが騎士団に連れていかれてしまうかもしれない、と奮起して拙いながらも必死にヒロインにアピールを繰り返す。思春期の照れもあり、ちょっとツンデレ気味になったりもする可愛い男の子だ。
この二人は風属性。テーマは【年下】だ。
十七歳のエメリナと、十三歳の二人。どうしても年上の多い環境で、年上の女性に男としてもらうにはどうすべきか。しかも長年の弟枠と外見女の子。お互いの幼さを毛嫌いながら、大人に見てもらおうと足掻く彼らとの純愛気味なストーリーだ。
ダニエルは……純愛(?)だけど……。
以上八名がトラキスの攻略対象だ。
隠しキャラ? それは追々。あと自動的に好感度が上がる厄介なのもいるけどそれも追々。
しかし、攻略対象者たちの会話から、現状はお解りいただけただろうか。
そう、恋愛関係なしですでに、自警団と騎士団でヒロインを取り合っている状態なのだ。
エメリナは 相変わらず 混乱している!




