21 三度目の人生が
そして次に目を覚ましたら、三度目の人生が始まっていた。
――なんて事はなかったわ。
なんと、生きていたの。しかも、魔物に襲われた怪我が治っていたわ。びっくりね。
「びっくりね、じゃないよ。心臓が止まるかと思ったよ!」
「ごめんなさいねルイス」
私は、オスワルド先生の救護室で目を覚ました。
目を覚ました瞬間、知らない天井だ……って言葉が脳裏を過ったから、多分これは前世の知識。元ネタが全然思い出せなくて、なんだか悔しかったわ。
救護室には、私以外にも怪我人がたくさんいた。
私は足を捻って、手を擦りむいて、背中を魔物の爪で抉られて重傷だったみたい……だけど、ルイスの応急処置と、オスワルド先生の治療でなんとか無事生き延びる事ができたわ。
本気で死んでしまうと思っていたから、なんだかちょっと恥ずかしい。最期の言葉をエメリナに伝えていたし、これが黒歴史ってやつね。
「あのね、わかっていないみたいだけど、本当に危なかったんだよ。少しでも僕の応急処置が間に合わなかったら、先生にだって助けられなかったんだから」
手の平から緑の光を出しながら、ルイスが目をつり上げる。
温かな血の巡りを感じて、私は思わずほっと息を吐いた。
「わかっているわ。ルイスが治癒魔法を学んでいてくれたおかげで助かったって。ありがとうね、ルイス」
「そっ……そうだけど、そうじゃない」
頬を染めたルイスが私から目を逸らす。
ルイスは風属性の魔力を保有していて、風魔法には癒しの属性が付随している、らしいの。一番相性が良いのは水属性らしいけれど、応急処置程度なら……つまり、下級の治癒魔法なら、風属性があれば使えるらしいわ。
ルイスは以前から、怪我の多いエメリナやセリオの為に、何度も治癒魔法を使ってきた。下級とは言え、応急処置はルイスの十八番よ。だからあの日、魔物に町が襲われた日も、医者のオスワルト先生のお手伝いで駆け回っていた。
私がエメリナを庇って、魔物に襲われた時。本部も近かったから、ルイスも近くにいた。
私の怪我をみて、すぐ駆け寄ろうとして……私達を狙った魔物が、まだ近くにいるのに気付いて、動けなくなってしまったみたい。
ルイスは魔法を使えるけれど、自警団員ではなかったから。
戦闘できない彼は、私達に駆け寄れなかったの。
でも私の傷は一刻を争うほど深くて……。
「……エメリナが、光魔法を覚醒させなかったら、あの場の全員危なかったんだ」
あの日、閉じた瞼を貫くほどの光は、エメリナが発した魔力の奔流。
無属性だったはずのエメリナが、光魔法に覚醒した瞬間だった。
「光魔法、ねぇ……?」
私は首を傾げながら、ルイスが灯す緑の光を見下ろした。
魔法の属性は、全部で六つ。
基本属性の火・水・土・風に、希少……世界で数人しか存在しない、光と闇の、全部で六つ。
その希少価値の高い光属性が、エメリナ。
――納得しかないわ。
私は深々と頷いた。ルイスに不思議そうな顔をされたけれど、納得しかない。
だってエメリナは、とても眩しい女の子だもの。
そんな彼女が光属性と言われて、納得しかないわ。
ただ、希少過ぎて、光属性にはわからない事が多いの。
先程言った、属性によって得意な部分。それすら曖昧なのよ。
そう、だからこそ……。
「エメリナの光属性で、町中の魔物達が消えてしまったのでしょう?」
「目の前で魔物が消えるのをみたよ……町中に影響したとは、思わなかったけど」
そんなことができるなんて、思ってもみなかったの。
私が助かったのは、ルイスの応急処置が間に合ったのは、エメリナの光魔法が魔物を消したから。
それがなければ、少なくとも私は、二度目の生を終えていたと思うの。
――お父さんとお母さんは無事だった。怪我をした私のお見舞いに来て、無事でよかったと泣いてくれた。
町の人たちも無事だった。私と同じように怪我をした人はたくさんいたけれど、死傷者は出なかった。
それもこれも、自警団と騎士団が一丸となって魔物と戦ってくれたから。
そして――次の巡回騎士が、実力者揃いだったから。
新しく町に来た騎士達は、私が思った以上に強い人達だったみたい。
私はまだ怪我が治っていないから、あったことはないけれど……実際に助けられたらしいお父さんが、深い感謝とその強さを絶賛していたわ。
お父さんが助けられたなら、私もしっかりお礼を言わないといけないわね。
でもその前に。
「アニシアー!」
「怪我人の前でその大声やめてくれる!?」
「ルイスも声が大きいわ」
荒ぶる親友を、宥めなくちゃいけなさそうだわ。
のんびり再び




