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転生おばあちゃんの幼馴染みは勇者ちゃん  作者: こう


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20/38

20 眩しい子


 テオさんに言われて走りながら、私は必死にエメリナを探した。


 エメリナは見習いとはいえ、自警団員。

 戦闘員としてではなく、避難誘導員として、この混乱の中頑張っている。


 見渡す限り近くにはいない。

 きっと本部の近くにいる。近付けば、きっと会えるわ。

 今にも抜けそうになる腰を叱咤して、必死に逃げた。


 魔物達は、ちょこちょこ逃げる人間より、自分達と対抗する人間の排除を優先したらしく、幸いなことに私を狙って飛びかかって来なかった。

 そういえば、最初に襲いかかってきた魔物は、何処に行ったのかしら。お母さんは、ちゃんと地下に逃げられたはずだけど。まさかずっといる? お父さんは。


 ああ、ダメね。混乱して、不安がどこまでも付き纏う。

 私は無力で、逃げることしかできないのに。不安と恐怖で泣きそうだわ。

 無力な私は、出来ることを全力で頑張るしかないのに。


「大丈夫!」


 そんな私に、エメリナの元気な声が届いた。

 いつの間にか俯いていた顔を上げると、膝を擦りむいた子供を抱えたエメリナが見えた。


 気付いたが、本部の近くまで来ていたみたい。

 不安で前が見えていなくても、慣れた道は自然とたどれていたのね。


「大丈夫だよ! 皆すごいから、絶対勝つもん。絶対大丈夫!」


 泣いている子供を鼓舞しているエメリナも、転んだのかボロボロだったわ。

 空色の瞳を潤ませて、でも絶対挫けないと顔を上げている。


 ――ああ、眩しい子。

 逆境でも挫けない、俯かない、立ち向かえる強い子。

 諦めてなんかいられないと、人に勇気をくれる、素敵な子。

 あなたは昔から、そういう子。


 親がいなくても。

 拾ってくれた優しい老夫婦が亡くなっても。

 一部の大人に遠巻きにされても。

 へこたれず、顔を上げて、前を見て。

 負けるものかと奮闘していける、可愛い子。


 ええ、そうね。

 エメリナが頑張っているのに、走っていただけの私が挫けていられない。

 気合いを入れて、拳を握り直して、顔を上げて――。


「エメリナ!」

「え?」













 あら?

 熱いわ。

 背中がとても――――……。


「アニシア! アニシアッ!!」


 エメリナの悲鳴が聞こえる。

 あら、あらら? 私これ、知っているかもしれない。


 近いのに、大きな声なのに、不思議と音が遠いの。

 触れている感触があるのに、握り返す力がないの。

 大好きな家族が泣いているのに、慰めることができないの。


 私、知っているわ。

 この世界に生れる直前に、経験したもの。十八年経ったけれど、忘れていないわ。


 覚えているのは眩しい子。強くて逞しい、小さな可愛いエメリナ。

 そんな彼女に迫る一匹の魔物。

 背後から迫るそれに、私は必死に走って……あら、間に合ったのね? これが火事場の馬鹿力、かしら。多分命の危機より早く動けたかもしれないわ。


 ……だから、全身が重いのかしら。

 ああ、そうか。だから、この感覚。


 私、ここで、死ぬのね……?


 あらやだ、神様ってばせっかちさん。

 あっという間に生き返らせて、あっという間に終わらせてしまうの? 十八年って、長いようで短いのよ?


「うそ、やだ、ダメだよアニシアしっかりして!」


 ……ああ、でもこれでよかったかも。

 私は重い瞼を持ち上げて、ボロボロ泣いているエメリナを見上げた。

 あら、あら。あんなに泣かないよう気を付けていたのに。


「エメリナ、逃げて……」

「……! アニシアを置いていけない!」

「私は、いいから、その子を、助けてあげて」


 地面に座り込んでびゃあびゃあ泣いている子供。さっきまでエメリナが抱えていた子。


「あなたたちだけでも、生きて……」


 私はおばあちゃんだから。

 人生二回目だから。

 だから、人生一回目の、若い子供達に長生きして欲しい。


 ああ、私でよかった。

 この子達を守れてよかった。


 全身の力が抜けて、私は懐かしい感覚に身を委ね――。


「や、やだやだアニシア! やだ! いやだ! 死んじゃやだ――――ッ!!」


 エメリナの絶叫と、白い光が、閉じた瞼を貫いた。



アニシアは、一回目で満足しているので、そこまで二回目に執着していない。

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