18 日常からの、
「え、もう次の騎士様来たの? 食材間に合うかな」
遅くなっちゃったけれどお遣いを済ませた私は、両親に広場であった騒動をかいつまんで伝えた。
見知らぬ騎士様の話を聞いて、二人ともプリシラちゃんと同じ結論に辿り着いたみたい。そうよね、時期的に、そうよね?
「時間的に、今日の夜から来るかしら? 仕込み多めにしておく?」
「アニシア、何人だった?」
「私が見たのは四人だけれど、それで全員だったかどうかはわからないわ」
「そうだね。決めつけはよくないし……いっそのこと、聞いてこようかな」
「それが良いかもしれないわね」
「だったら私、このままお遣いしてくるわ」
食材じゃなくて、駐屯所までのお遣いね。
両親は私が買ってきた食材を仕込む大切なお仕事があるから、いくなら身軽な私が良い。
「いいやダメだ。俺が行く」
「そうよ、去年はいい人達だったけれど、今回もそうとは限らないからね」
「あらまあ」
と思ったのだけれど、両親から待ったをかけられてしまったわ。
「アニシアは若い女の子だから、変に目をつけられないようにしないと」
「あらぁ……」
巡回騎士のために始めた食堂ではあるけれど、小間使いではない。勘違いする騎士様も時々いるから、両親はそれを警戒してくれているの。
うん、私、年頃だものね。
私が十四だった四年前に、ちょっと勘違いした騎士様が実際いたので、気にしてくれている。
そんな両親の警戒に、おばあちゃんちょっとほっこりしちゃったわ。
ダメね、親として子を心配してくれているのに、こんな感想じゃ。
「それなら、お父さんにお願いするわ。その間に、私にできる仕込みはしておくから」
「ああ、もちろん! 頼んだよ!」
「いってらっしゃいあなた」
「いってきます」
娘に素直に頼られて嬉しかったのか、お父さんは軽快にぴょんぴょん跳ねながら駐屯所の方向へ向かった。
可愛い人ね。思わずお母さんと一緒に微笑んで見送っちゃったわ。
「じゃあ、アニシアは野菜をお願いね」
「はぁい」
仕入れたばかりの野菜を籠に載せて、裏口の横にある小さな椅子に座って皮をむく。手の平で包めるくらい小さなナイフを使って、薄く長く手際よく剥いていく。
物心ついた頃から家業を手伝っているので、野菜の皮剥きも慣れたものよ。前世でも子供達にたくさん料理を作っていたし、ピーラーがなくても問題ないわ。
父が人数を確認しにいったけれど、野菜は多めに切っておいても問題ない。遅くても明日には使うから、黙々と数を増やしていく。
――それにしても、彼らが巡回騎士なら、今回の班は若い人ばかりね。
ぱっと見の判断でしかないけれど、恐らく平均年齢は二十代前半だったわ。今までの平均が三十代後半だった事を考えれば、それがどれだけ異例なのか伝わるはずよ。
もしかして、滅多にないケースが起こったのかしら。
たとえば、金持ちのお貴族様……実力を誤解している若いのを教育するため連れてきた、とか。
でもそれは、逃げ帰られる距離でないとどちらにも被害が出るから、トリスではやらないという話だったわね。なら違うかも。
それなら純粋に、巡回騎士として認められた人達という事になるけれど……。
――全員が、若すぎるのよね……。
一人二人若いだけなら納得したけれど、全員が若すぎて、思わず何かあるのではと勘ぐってしまう。
何事もなければ良いのだけれど。
野菜の皮が重なっていく音が、やけに耳についた。
その時。
外から、犬の遠吠えが聞こえた。
「え? なに?」
「――ワンダーウルフ!」
私がきょとんと顔を上げるのと、危機迫る表情で母が飛び上がるのは同時。
「どうして! こんなに近くで……まさか村に入ったの!?」
「お母さん?」
「隠れるわよアニシア!」
叫んだお母さんが、床下の隠し扉を開けた。キッチンの下にある、倉庫と直通の扉よ。何かあった時に避難できるように、キチンのすぐ下に扉とハシゴがあるの。
よくわからないけれど只事ではないと立ち上がった私は、
裏口を突き破ってきた、大きな狼と目が合った。
のんびり
できなくなった




